【2014年版】祝!羊齧協会監修『東京ラムストーリー』発売記念
>羊齧協会が選ぶ、都内近郊のおすすめ羊料理店2014
羊が食べたい…!でも、どこで? そんなあなたのために、都内近郊で東アジア文化圏の羊料理店を精力的に開拓する羊齧協会の菊池主席に、おすすめの羊料理店を聞きました。
味坊(あじぼう)
菊池主席が「まず羊と言えばここ」と真っ先その名を挙げたのが「味坊(あじぼう)」。その理由は、「中国北方料理は、素材を最小限の塩と調味料で味付けするシンプルな調理法だからこそ、腕の良し悪しに差が出ます。その点『味坊』は仕込みや作り方が実に丁寧。だからシンプルにしてめちゃくちゃ旨い羊を味わうことができるんです」と明快。今一番の菊池主席の推し店です。
チチハル出身の老板(ラオバン/店主)が厨房を切り盛りするこの店は、羊肉水餃(6個530円 ※皮も手作り)、羊肉餅(680円 ※羊肉ミンチを挟んだおやき風の点心)など、小麦粉×羊肉を組み合わせた東北料理が人気。また「老板自ら炭火で焼く羊肉串も絶品です」。軒を連ねる「味坊 炭火鍋羊肉店」とは厨房がつながっているため、羊クオリティは同等。冬は隣店で涮羊肉(羊しゃぶしゃぶ)も外せません。
なお、同店は羊齧協会で「羊と紹興酒の会」の会場にもなった場所。スペシャリテとして登場した「手把羊肉(ショウバーヤンロウ/手づかみで食べる羊肉の煮込み)」は、骨皮付きの塊を煮込んで作るため、20人以上揃えば提供可能とのこと(※詳細は店舗と要相談)。ワイルドで滋味深い羊料理体験をしたい方はぜひトライを。
シリンゴル
菊池主席が「とことん羊を齧りたい人におすすめ」という同店は、1995年に日本初のモンゴル料理店としてオープン。ハロントガ(羊肉しゃぶしゃぶ)、チャンサンマハ(骨付き羊肉塩ゆで)、ボーズ(羊肉蒸し饅頭)、シュルテホール(羊肉うどん)など、定番のモンゴル料理がひと通り食べられます。「ここでは前菜から〆までまで羊責め。デザートに馬乳酒を勧められたときはさすがに驚きました(笑)」。
また、この店のもうひとつのおすすめが馬頭琴の演奏です。演奏するチンゲルトさんは、なんとこの店のシェフ!「元々『内蒙古歌舞伎団』の馬頭琴奏者だったそうで、内蒙古芸術大学で学んだ本格派です。20時前後の演奏時間になると、厨房から出てきて見事な音色を披露してくれます」。
平成福順 アメ横店
中国東北地方~延辺(えんぺん)地方の料理が食べられる店。延辺は吉林省の東部の朝鮮族自治区で、南は北朝鮮、東はロシアに隣接する地域。モンゴルなど北方の影響も受けているため、羊食文化が根付いているエリアです。
こちらでおすすめの料理は「羊肉串(ヤンロウチュァン)」ですね。香ばしくカリッと焼き上げているのが特長で、肉の味は決して旨すぎない(笑)。だからこそ、ひと口齧れば私の心を北京の屋台へといざなってくれるのです」と菊池主席。延辺料理店は上野や池袋にもありますが、「北京の屋台の味」という旅情が一番のおいしさとなっていそうです。
クミンなどのスパイスをたっぷり振りかけて焼いた羊肉串(手前2本)はなんと1本100円!
他にも牛、鶏砂肝、豚レバーなどバラエティ豊かな串焼きが揃います。
シルクロードムラト
モンゴル、ロシア、カザフスタンに隣接する新疆ウイグル自治区は、シルクロードの中でも豊かな自然に恵まれ、砂漠の中のオアシスとして発展した東西南北交易の地。食文化も融合され、独自の発展を遂げたウイグル料理が確立されています。この店は「そんなウイグル出身のウイグル族がやっている、本気のウイグル料理店」。代表的な料理はラグメン(うどん風の麺を羊、トマト、玉ねぎなどで炒めた麺)、ゴシナン(羊肉のパイ)、カワプ(焼肉)など。聞き慣れないメニューばかりですね。
「確かに非常にコアで専門性が高いのですが、北浦和という立地のため、わざわざ食べに行く人より、地元の人に普通に愛される店なのがちょっと面白い。隣の席を見れば、仕事帰りのお父さんたちが「ラグメンとビール」といった感じでオーダーしている風景がなんともエキゾチックです」。
もちろん羊齧協会ではその味を求めて遠方より訪れましたが、「自分がいかに羊料理を愛しているか老板に熱く語ったら、腎臓を2ツ割にしたものを『サービスです』といって出していただくなど驚愕のサービスも!」。情熱には情熱をもって応えてくれる懐の深さもあるようです。求めよ、さらば与えられん。
シシカワブ(ラム肉の串焼き)は1本180円。羊肉好きの方には、がっつり齧れる骨付きカワブや、挽き肉、野菜、スパイスを混ぜて焼いたキーマーカワブも人気。
これらの料理が育まれた土地をGoogle mapで眺めていると、羊肉料理には島国日本には計り知れない“大陸感”があり、民族の風土や文化が凝縮されていると感じてきます。
また、遠く離れた内モンゴルや黒竜江省、ウイグルにはそうやすやすと行けませんが、こうしたレストランを訪れ、実際に羊を齧ってみれば、心だけでも旅したような気持ちになれるもの。 ぜひたまには、皆で連れ立って「羊を巡る冒険」を楽しんでみてはいかがでしょう。
Text:佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo:羊齧協会、シルクロードムラト、小杉勉、佐藤貴子