「よる中華」は、80C(ハオチー)のFacebookページで連載中のディナーレポート。2016年上半期は、2016年1月18日~6月27日の半年間に紹介した延べ36軒の中から、Facebookのリーチベスト8をランキングしています。
気になるあの店は、果たしてランクインしているでしょうか?
目黒区三田「ウェスティンホテル東京 広東料理 龍天門」で香港ローカルフードフェア 5359リーチ
●こんな方におすすめです
・ゴージャスな空間が好き
・広東系の賄いを食べてみたい
・オーダーバイキングに燃えるタイプ
ゴージャス空間で賄い系料理を好きなだけ!
8位は庶民的な料理、端材を使って創意工夫した料理を、「龍天門」のゴージャスな空間とサービスで楽しむ「粗菜飯の宴~香港ローカルフードフェア」がランクイン。
この日は9900円(税サ別)で、香港の家庭料理&厨房の賄い的な料理44品が食べ放題、さらに同店オリジナルの紹興酒3種(8年、12年、30年)+ソフトドリンクが飲み放題!
席につくと、個々のテーブルに用意されているのは、44品の料理名が書かれたお品書き。その中から好きな料理を好きなだけチェックしてオーダーできる仕組みに気分が高まります。
昨年着任された焼き物名人・梁さんが焼き上げる骨付き鴨のローストも登場し、お得感たっぷり。「龍天門」の企画力が冴えたディナーでした。
中央区築地「東京チャイニーズ一凛」でおまかせコース
5446リーチ
●こんな方におすすめです
・定番の半歩先の中華が食べたい
・カウンター中華が好き
・ポケットマネーでリピートできる店を探している
日本の旬の味覚を、定番の半歩先の中華で味わう
7位は築地警察署お隣にある「一凛」のおまかせ。同店は80C(ハオチー)でご紹介すると、いつも高リーチを記録。それだけファンが多いのでしょうね。
コース予算5000円~という金額は、ポケットマネーで行きやすい価格帯。しかも定番の“半歩先”の中華を提案してくれるとあって、店はいつ訪れても大繁盛しています。
6月のコースは鮎、生の山椒で作った色鮮やかな椒麻(ジャオマー)の和えもの、フルートトマトとライチのデザートなど、日本の旬の味覚を見事中華に。
カウンターもあり、ワインはグラスでオーダー可能。アラカルトの場合、高坂地鶏を使った「口水鶏(よだれ鶏)」、白い麻婆豆腐こと「豆花牛肉」はぜひオーダーしたいところです。
港区赤坂「トゥーランドット臥龍居」で上海料理の会
5754リーチ
●こんな方におすすめです
・伝統的な料理が好き
・脇屋シェフの上海料理が食べたい
・料理にこだわった宴会をしたい
スターのシェフの原点に触れる上海料理
6位は中国料理界のスーパースター、脇屋友詞シェフが腕をふるう、上海名菜の宴会料理がランクイン。
脇屋シェフといえば、中国料理とそれを楽しむ空間を華麗に洗練させ、新しい中国料理のイメージをもたらし、多くの女性ファンを作り…と、その影響は計り知れず。ヌーヴェルシノワのイメージがあるかもしれませんが、実はその原点は上海料理にあります。
こちらに掲載されている料理は、どれも上海料理の古典ばかり。とりわけ醤油とカラメルを使い、しっかりとした赤茶色ながら、塩分は抑え目に煮込んだ紅焼魚(ホンシャオユイ)は、皆の感動を呼んだ一皿でした。
料理にはトレンドもありますが、受け継がれる名菜を味わうことは、食べる側も基本に立ち戻るような、原点回帰のような気持ちになれていいものですね。
港区麻布十番「老四川 飄香 麻布十番本店」で「わかばシェフ」向けおまかせコース 5787リーチ
●こんな方におすすめです
・正統派四川料理が食べたい
・井桁シェフの四川料理が食べたい
・文思豆腐に興味がある
文思豆腐に「千里の道も一歩から」を実感
5位はNHK「あさイチ」でもおなじみ、井桁良樹オーナーシェフ率いる四川料理の宴会がランクイン。この日は、毎週水曜ランチ限定、35歳以下の料理人が料理長として腕を振るう「わかば食堂」経験者の懇親会兼勉強会。
熟成肉、うなぎ、豚すね肉など、素材の選定と調理法は井桁シェフの提案によるもの。中でも一同の注目を集めたのが、豆腐を超絶に細切りにしたスープ「文思豆腐魚翅」(※掲載写真大サイズ)でした。
こちらは定番の「文思豆腐」に、毛鹿鮫(もうかざめ)のフカヒレとモロヘイヤを加えた豪華版。集まった“わかばシェフ”の前で実技の披露もあり、一同食い入るようにその技を見学。
「毎日コツコツと練習を積んだからできる技です」との井桁シェフの言葉に「継続は力なり」を感じるひと時となったのでした。
渋谷区上原「Matsushima」でおまかせ
5890リーチ
●こんな方におすすめです
・知られざる中国の地方料理に惹かれる
・綺麗な味のエキゾチックな料理が食べたい
・隠れ家的な店が好き
丁寧に作られた中国少数民族インスパイア料理
5位は今年の3月、「黒猫夜六本木店」の料理長が独立して開いた店。地下の入口ドアにナンバー式の鍵がありますが、迷わずそのまま押してください。開きます。
メニューは黒板のみで、プイ族、ミャオ族、チワン族など、中国少数民族の料理にインスパイアされた料理や、日本ではほぼ知られていない中国郷土料理が中心。
ここでぜひ体験してほしいのは、羊肉泡馍(ヤンロウパオムォ)。坨坨馍(トゥォトゥォムォ)という乾燥したパンのようなものをちぎって器に入れ、そこに羊肉や野菜が入ったスープを注いでいただく西安名物ですが、この「ちぎり」が実に楽しい。また、自分でちぎることで、この料理がさらに思い出深く、味わいが深くなります。
料理はいずれも丁寧に作られた綺麗な味で、2~4人くらいで楽しむのにちょうどいい感じ。つまんで飲んでちぎって、楽しく夜が更けること請け合いです。
渋谷区神宮前「楽記」でアラカルト
6593リーチ
●こんな方におすすめです
・古典的な広東料理が食べたい
・自然派ワインと中華を楽しみたい
・焼味(シュウメイ)が好き
“香港ワーホリ料理人”が「楽記」にやってきた!
3位は古き良き広東料理と焼味、自然派ワインの「楽記」。今年1月、80C(ハオチー)でご紹介した「香港ワーホリ料理人」の佐伯悠太郎さんが鍋部門チーフに就任したことをご紹介した回が注目を集めました。
料理は現地さながらで、新鮮な鶏の白子を集めてふわりとペースト状にし、衣をつけて軽やかに揚げた鷄子戈渣(鶏の白子ペースト揚げ)は、本人も驚く売れ筋。窩貼大明蝦(エビトースト)は修行先の「鳳城酒家」と同様、大エビを開いてトーストに貼り付けたスタイル。紅炆斑翅(黄ハタの土鍋煮込み)は、黄ハタを揚げにんにく、豚肉、陳皮、干し椎茸等と煮込んでおり、醤油を使わず味を決めていました。
香港&広東省で学んだことを存分に発揮できる環境で腕を振るっていて、今後もどんな料理が出てくるのか楽しみに。“香港ワーホリ料理人”の第二章はここから始まっています。
渋谷区桜丘町「スーツァンレストラン陳」で菰田総料理長presents『俺のガチ四川』 8536リーチ
●こんな方におすすめです
・四川料理で円卓を囲んで宴会がしたい
・菰田総料理長のトークが聞きたい
皿の数だけ香りがある!直球四川料理の宴会料理
2位は「高級食材は不要!古典的な四川料理を菰田総料理長に作ってもらおう」というテーマ宴会がランクイン。菰田総料理長といえば、テレビ等でもおなじみですが、「古樹軒」の料理教室で講師を担当される際にはいつも満席御礼。出だしのトークも面白く、見た目も味も印象に残る料理を教えてくださる方。
そんなスターシェフが繰り出すのは、見た目で惹きつけ、香りで酔わせる料理。泡辣椒(唐辛子を発酵させた漬物)、芽菜、ナンプラーなど、漬物や発酵食品の鼻に抜ける発酵香。青山椒の爽やかさ。加熱した唐辛子から立ち上る芳香。深みのある十三香。煎った胡麻の香ばしさ、甘く濃厚な醤の香り…と、香りのバリエーションは皿の数ほど!
料理のすばらしさは言わずもがなですが、ホスピタリティも素晴らしく、今回改めて「ここまで作って話せるのは、中華業界では菰田シェフが頂点なのでは…?」という想いも強めた次第です。
渋谷区広尾「中華香彩JASMINE 広尾本店」で江南地方(上海市、江蘇省、浙江省など長江下流域南方)の料理でおまかせ 8541リーチ
●こんな方におすすめです
・上海を中心とした江南地方の料理に興味がある
・かの有名な「豚バラ肉の宝塔仕立て」が食べたい
・魚の白湯スープに興味がある
日本の食材で江南地方の料理を見事再現!
そして、栄えある2016年上半期「よる中華」1位は、「中華香彩JASMINE 広尾本店」の江南料理でした!
この時のリクエストは、皮付き豚バラ肉の宝塔仕立て(宝塔扣肉)」と、川魚料理を入れたおまかせ。前者は、中国の豚と日本の豚は、皮の厚みや脂の質感が異なることを踏まえ、日本の豚でコクを出すための工夫を施した逸品。
また、後者は2匹の鮒を使い、鮒と葱の甘醤油煮(葱烤河鯽鱼)、鮒と雪菜、豆腐のスープ(乡家鱼汤)として登場。同じ魚を使いつつも、全くベクトルの違う鮒料理で、前者は紹興酒のアテに、後者は菜飯や他のおかずとともに、いつまでもすすっていたくなる味でした。
実際に江南地方を訪れて同じような料理を食べようとした場合、ひと皿あたりの量が多く、大人数でないといろいろ食べられませんが、「JASMINE」なら4人でも実現できるのはありがたい限り。名菜から家庭料理まで幅広く楽しめますよ。
さて、2016年上半期の「よる中華」ランキングはいかがでしたか? 振り返ってみますと、今回は巨匠の店で開催した、テーマを決めた宴会料理のリーチが高かったように思います。
そして、「一凛」や「matsushima」など30~40代前半のシェフが切り盛りする店もランクイン。中でも「JASMINE」は「ひる中華」ランキングでも4位になり、注目の高さを感じました。
30代の若手シェフの中には、得意とする地方料理がある人も少なくないもの。そんな彼らが活躍するようになってきた日本の中華シーン、これからもっとおもしろくなりそうですよ。
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「よる中華」は、80Cスタッフがディナーで食べた中華料理を、Facebookでウィークデーに連日レポート。ぜひここで食べたい中華、好みの中華を見つけていただけたら幸いです。
Photo 佐藤貴子、長野秀紀
Text 佐藤貴子