肉まんや餃子をはじめ、中国小麦粉料理天国とも言える中国東北地方。なかでも遼寧(りょうねい)省瀋陽(しんよう)市は、1829年に辺福という人物が開いた「辺家餃子館」にルーツを持つ老舗中の老舗「老辺餃子館」がある街です。
今回ご紹介する「麺香厨(めんこうちゅう)」は、その「老辺餃子舘」の本店で働き、日本一号店の立ち上げに関わったファミリーが開いた、点心と小菜の店。
瀋陽出身の女性麺点師(点心師)が作る、丁寧でやさしい味わいの点心が、地元で評判になっています。
肉まんも餃子も、目の前でお母さんが手作り。
場所はJR京浜東北線の王子駅から徒歩13分。一見普通の住宅地に見えますが、実はこの周辺は、中国人が多く通う日本語学校が3軒あるという立地。
「そこに通う留学生に、故郷の味を食べてもらいたいと思ったんですよ」と話してくれたのは、たまたま居合わせた、店の老板娘(店長)の弟さんです。
聞けば、彼の両親はともに料理人。母上は瀋陽の「老辺餃子館」に40年勤めたベテラン麺点師で、今の店は奥さんが厨房担当。店を切り盛りするのはお姉さんという家族経営だそう。
営業スタイルは中国の早午餐店(朝ごはんと昼ごはんの店)に近く、店は8時~18時の間だけオープン。子育てもされているので、無理はしない方針です。
注文は食券制で、肉まんと餃子のベースは、豚肉と葱の餡、ニラと卵の餡の2種類。
さらにお焼き系の小麦粉料理や、お粥、煮卵、鶏手羽元の醤油煮などちょっとしたおかずもラインナップされており、何も考えないで行くと、食券機の前で目移りが止まらなくなること必至。
ちょっと珍しい「そぼろ餅」とは?
いやあ、これはなかなか選べない…!ということで、この日は包子(餡入り饅頭)二種類、小籠包、焼き餃子に水餃子、そぼろ餅、豆乳と、勢い余って大人買い(笑)。なかでも、その名からどんな点心かイメージできず、気になったのが、そぼろ餅です。
詳しく聞くと、「餡餅(肉などの餡を生地で包み、平たく整えて油で焼いたもの)と似ていますが、生地の中に餡を入れる餡餅とは作り方が異なり、味付けした挽き肉と葱を生地に練り込んで煎り焼きしています。あまり中国でも見ませんね。中国語で言うなら『葱香肉末餅』かな」とのこと。
焼きたてを頬張ると、カリッと焼けた表面はいい感じに油っぽく、生地はむっちりとふわりの中間。生地のはざまに葱と肉とが旨みを加えており、これ、飲む派にとってはかなりそそる味ですね(ビールは中瓶を置いています)。
また、餃子や小籠包は注文が入ってから一つ一つ皮をのばして作るため、少し時間に余裕のある方におすすめ。
焼き餃子は羽根付きで、水餃子は中国海苔の入った薄いスープ入り(スープはいらないと言えば、ゆで上げをいただだけます)。いずれもひと口サイズなので、中の肉汁を逃さず食べられるのがうれしいところ。卓上の黒酢と油辣椒を使って、味にアクセントをつけても楽しめます。
また、豆乳は豆に湯を加えてミキサーで砕いて作る自家製。これが店内で200円で飲めるんですから、ご近所さんがうらやましい。
こうした点心の他にも、朝は「ピータンと肉入りお粥」(300円)「緑豆入りお粥」(260円)や、肉まん(猪肉大包)、お粥、煮卵、漬物などがセットになった「肉まん朝食」(480円)や、肉まんが具なしのマントー(饅頭)になった「マントー朝食」(480円)、昼はそれに小菜と主食がボリュームアップした昼食セット(650円~)などが用意されており、手軽かつお得に食べたい方はセットががおすすめ。
一方、点心をいろいろ味わってみたいという方は、昼のピーク時を外し、少し時間に余裕をもって来られるといいでしょう。
店ではUber Eats(ウーバーイーツ)での配達も受け付けており、この日も食べている間、数回注文が入っていました(※店内より価格は高くなります)。
料理はどれもお持ち帰りできるので、そぼろ餅と水餃子を店で楽しみ、肉まんはお持ち帰りにする…なんて使い方もよさそうですよ。それぞれお財布にやさしい価格なので、ついつい買いすぎてしまいそうです。
麺香厨(めんこうちゅう)住所:東京都北区豊島1-38-10 誉ビル(MAP) |
text & photo サトタカ(佐藤貴子)