中国料理店の掲載は25軒!

2008年からスタートし、2022年で15周年を迎える『ミシュランガイド東京』。

今年は全432軒のうち、最高ランクの三つ星は12軒、二つ星は41軒、一つ星は150軒、ビブグルマンは229軒ののセレクション。現在、YouTubeによる配信とともに、オフィシャルサイトでも掲載レストランが紹介されています。

中国料理店の掲載は、2016年版19軒、2017年版21軒、2018~2020年版26軒、2021年版27軒と数を増やしていましたが、今年2022年版は25軒となりました。さっそく掲載店をご紹介していきましょう。

※()内は所在区/最寄り駅です。
※新たに加わった店はNEWマークをつけています。

[三つ星★★★]中国料理から広がる豊かなイマジネーション

茶禅華(さぜんか)(港区/広尾)

三つ星の定義は「そのために旅行する価値のある卓越した料理」を提供しているレストラン。昨年日本初にして日本唯一の中華の三つ星となった「茶禅華」が、引き続きその栄誉に輝きました。

さらに今年は、サステナブルガストロノミーに積極的に取り組むレストランとして「ミシュラングリーンスター」にも選出。海洋資源を保護するために未利用漁を活用したり、茶殻はコンポストで堆肥化するなど、環境保全への取り組みが評価されています。

「茶禅華」は料理はもちろんのこと、静謐かつ温かな一軒家の空間、吟味されたうつわ、料理に合わせたドリンクペアリングなど、中国料理から広がる豊かなイマジネーションが感じられるレストラン。

油と炎、水の力を活かし、食材の持ち味を引き出した料理をベストなタイミングで召し上がってほしいーー。そんな意思をも感じる厨房とサービスとのチームワークも店の強さであり、大きな魅力となっています。

[二つ星★★]昨年同様、存在せず!

二つ星の定義は「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」を提供しているレストラン。

『ミシュランガイド東京2022』全体では41軒ありましたが、昨年に同様、中華は存在せず。むしろきっと、みなさんの心の中に「遠回りしてでも訪れたい」店があることでしょう。

[一つ星★]スタイルも料理も異なる10店舗

一つ星の定義は「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」を提供しているレストラン。『ミシュランガイド東京2022』では150軒、中華はそのうち10軒です。

赤坂 桃の木(千代田区/永田町)
慈華(itsuka)(港区/外苑前)
銀座 やまの辺 江戸中華(中央区/銀座)
私厨房 勇(ユン)(港区/白金高輪)
ShinoiS(シノワ)(港区/白金高輪)
Series(シリーズ)(港区/六本木)
中国飯店 琥珀宮(千代田区/東京)
中国飯店 富麗華(港区/麻布十番)
ミモザ(中央区/三越前)
WASA(渋谷区/恵比寿)NEW

今年の中華は昨年より2店舗減、1店舗加わり計10店舗。新しく加わったのは『WASA』。目黒区八雲、六本木ヒルズを経て、2020年に渋谷区東へと移転し、初の一つ星となりました。

一つ星の定義は「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」を提供しているレストランですが、実際はかなり前もって予約しなければいけない店がほとんどです。他ジャンルも積極的に食べ歩いている方の目に留まる店も、一つ星の中に多そうですね。

赤坂エリアに移転し、よりラグジュアリーな空間になった『赤坂 桃の木』。小林武志シェフの精緻な料理が堪能できる。(写真は特注の乞食豚)
カウンター中華の醍醐味が堪能できる『銀座 やまの辺 江戸中華』。シェフの明るいキャラクターもゲストを楽しませてくれる。

[ビブグルマン]お値段以上!中華の楽しさにあふれた14店舗

ビブグルマンの選出の定義は「良質な食材で丁寧に仕上げており、6,000円以下で楽しめる」レストラン。『ミシュランガイド東京2022』では229軒、そのうち中華は14軒です。

ENGINE(新宿区/神楽坂)
O2(江東区/清澄白河)
錦福 香港美食(千代田区/九段下)
jeeten(ジーテン)(渋谷区/代々木上原)
仙ノ孫(杉並区/西荻窪)
中華香彩 JASMINE(ジャスミン)(渋谷区/広尾・恵比寿)
中国菜 智林(新宿区/神楽坂)
中国菜 膳楽房(新宿区/神楽坂)
なかの中華!Sai(中野区/中野)
胡同 三㐂(フートンさんき)(世田谷区/祖師ヶ谷大蔵)
豊栄(文京区/茗荷谷)
中国四川料理 梅香(新宿区/神楽坂)
遊猿(新宿区/四谷三丁目)
REI(渋谷区/代々木八幡)NEW

今年ビブグルマンに新しく加わったのは、2020年夏にオープンした『REI』。豪徳寺『火龍園』をはじめ、広東料理を中心に修行されたシェフを中心に、中華の名店で学んでこられた若きチームで切り盛りされ、早くも地元のお客さんの心を掴んでいます。

代々木八幡~代々木上原界隈は、カジュアルに上質な中華が楽しめる店が増えてきているエリア。各店料理の方向性が被らないので、暮らす人にとって楽しい中華の選択肢が増えているように感じます。

『ミシュランガイド東京 2022』まとめ

今年は掲載店が全体で少し減ったこともあり、中華も同様に微減。25店舗のうち、新たに加わった店は2店舗で、ほぼ昨年同様の顔ぶれになりました。

コロナ禍でレストランの選び方、楽しみ方が変わった方も少なくないかと思いますが、今年もミシュランのセレクションは日本人が「中華を食べたい!」という気分のときに、安心して楽しめる店がラインナップされている印象です。

九段下『錦福』のローストダック。これはヤバい。

また、昨年から持続可能な取り組みを実践するレストランに対して「ミシュラングリーンスター」の称号が贈られるようになりました。食材廃棄を減らすための取り組みや、環境保全と資源管理の視点からできることを実践する。その方が素敵でカッコいいという価値観が浸透してきていることを実感します。

さらに今年の『ミシュランガイド東京 2022』では、後進の手本となり、レストラン業界の発展に貢献したシェフに贈られる「メンターシェフアワード」(日本料理『かんだ』神田裕行さん受賞)と、おもてなしに優れた方に贈られる「サービスアワード」(『オマージュ』荒井麻里香さん受賞)が新設されました。

中華業界でも、楽しみながら、ともに学び合う場を作る料理人の輪があります。また、レストランの顔であり、心地よさをつくる人として、サービススタッフの力はなくてはならないもの。コロナ前よりも“場”のありがたみを感じる昨今、中華でもそのような場を作る人々の顔が思い浮かぶ賞でした。


TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)