中華圏では、同じ調理法による料理や食材でも、地域や民族よって呼び名が変わることも多々。特に繁体字を使用する台湾や香港は、大陸の食文化とはまた違った美味の世界が広がっています。2022年から新たに始まるはっしーさんの記事では、そんな繁体字文化圏の食文化を中心にご紹介していきます。

TEXT&PHOTO:はっしー
学生時代に中華圏の近代史を学び、中華POPSを愛聴。上海および香港在住を経て、現在は日本在住。中華料理は食べる専門だったのが、作るほうにも目を向けるようになったのはここ数年。上海界隈から南の沿岸部、香港、マカオ、台湾の味が好み。

中華圏のおやつ「豆花(トウファ)」とは?

数ある中華おやつの中でも、人気がでてほしいと思う中華おやつが豆花(トウファ)です。想像以上に甘さ控えめで、トッピングは豆類や芋圓(さつまいも団子)など健康的なものが多いのが特徴。私自身、豆花が好きで、なにを隠そう豆花の専門店を時々お手伝いしているほどです。

そもそも豆花とはなにか?というと、簡単にいえば豆腐に甘いシロップをかけたもの。しかしこの説明だと「甘い豆腐⁉」と混乱させてしまうことになり、豆花好きとしてはどうすればわかってもらえるか、日々考えています。

ちなみに2021年末、都内の大学に通う女子大生約100人に「豆花」についてのアンケートをとったところ、豆花を知っている方は50%以上、豆花を食べたことがある方は15%という結果に。意外にも豆花を認識している若者は多いようですね。

スイーツ系は台湾と香港が主流。地域で異なる豆花の魅力

豆花は中華圏各地にあり、台湾では豆花(ドウファ|dòuhuā香港では主に豆腐花(ダウフファ|dau6fu6faa1と呼ばれ、甘いシロップにトッピングをのせて食べるのが一般的です。

一方、中国では豆腐脳(ドウフナオ|dòufǔnǎoと呼ばれる地域もあり、辛いたれ、醤油系のあんかけがのっているものもありとバラエティ豊か。昨今は日本でも食べられる店が増えていますが、その多くは台湾式です。

台湾の場合、ゆで落花生とシロップのみをのせたシンプルなものから、芋圓(ユーユェン|さつまいも団子)、豆類、タピオカ、フルーツまで、トッピングの選択肢の多さが魅力

台北「台北豆花荘」の豆花。トッピングはゆで落花生とかき氷。
台南「同記安平豆花」の豆花。きび砂糖のシロップに、ブラックタピオカをトッピング。

一方、香港では、豆腐や豆乳を扱っている店で豆腐花も食べられることが多いです。腸粉などの点心をつまみつつ豆腐花を楽しんだり、離島のハイキング途中に豆腐花の専門店があったり、街中でも郊外でも豆腐花に出合えます。

香港式の特徴は、オレンジ色の紅糖をふりかけたり、芝麻糊(黒ごまと米の甘いスープ)をかけて食べべること。このオレンジ色の紅糖が、日本では簡単に手に入らないんですよね。

香港「公和荳品廠」の豆花。オレンジ色の紅糖に香港を感じますね。
香港「亜玉豆腐花」の豆花。芝麻糊をトッピング。
香港「公和荳品廠」では、大豆加工製品やちょっとした軽食を提供。豆花も食べられます。
香港の山の中にある豆腐花専門店「許林士多」のメニュー。「山水」の文字に惹かれます。

何で豆乳を固めるか?素材で変わる豆花の風味

このように、地域や店によってさまざまな味わいが楽しめる豆花。特に私が風味と食感の差に影響すると感じるのは、豆乳を何で固めるか?という点です。

台湾の伝統的な製法では、主に石膏(硫酸カルシウム)を使いますが、ほかにもにがり(塩化マグネシウム)、寒天、ゼラチン、アガーなどさまざま。

石膏やにがりで固める場合、温かい状態でも食感に大きな変化はありませんが、熱で溶けるゼラチンなどで固めると、冷たい状態でしか提供できないという違いもあります。

普段日本で食べている絹ごし豆腐や木綿豆腐より、滑らかでフワッとした食感だと感じるのは、石膏を使ったもの。とはいえ、にがりを使った滑らかな豆花もあれば、プリンやゼリーのような食感の豆花も。

そこで次のページでは、特色ある味わいが楽しめる、都内&近郊のおすすめの豆花をご紹介します。

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