春になると、ゆる巻きのキャベツが増える。冬の間はきっちりと巻かれていた玉が、ゆるふわになる。この変化を目にすると、「春だなあ」と思う。
スーパーや八百屋で、そんな春キャベツを見たら、ぜひ作ってほしい料理がある。
10分でできる中国家庭料理、油渣蓮白(油渣莲白|ヨウジャーリェンバイ|yóuzhāliánbái)だ。
油渣(ヨウジャー)とは、豚肉でラードをとった後にできるクリスピーな肉カス(油カス)、蓮白(リェンバイ)はキャベツ。すなわち油渣蓮白は、キャベツを肉カスと炒めた料理をいう。
中国の検索サイト「百度」を見ると「1960〜70年代、家計が苦しい家では、ラードをとった後の油カスを捨てず、刻んで炒めものに使っていた」とあるが、その代表的な料理が油渣蓮白(ヨウジャーリェンバイ)。そのせいか、この料理にどこか懐かしさを感じる中国人もいるようだ。
そういえば、かつて貴州省貴陽市の家庭料理の店で、このメニューを見かけて注文したことがある。レストランのメニューという感じではないが、箸が進む。素材を生かしたシンプルな料理だからこそ、もりもり食べられ、飽きもこない。だからだろうか、食べた料理の中でもこの一皿は印象に残っている。
作り方は、もはやレシピもいらないほど簡単。以下の材料で必ず要るのは、キャベツ、豚バラ肉、にんにく、醤油。ポイントは、キャベツを手でちぎることと、豚バラ肉で即席ラードをつくること。これが最高の調味料になる。
即席ラードが最高の調味料!油渣蓮白(ヨウジャーリェンバイ)の作り方
<材料:目安:7寸皿1皿分>
春キャベツ 4枚くらい→ちぎる(基本的には好きな量でOK)
豚バラ肉(ブロック) 4~5cmくらい→細かく刻む(基本的には好きな量でOK)
にんにく 1片→潰して粗みじん切り
唐辛子(乾燥) 1本
醤油 適量
魚醤 あれば少々
酒 あれば大さじ1杯くらい
白胡椒 好みで少々
<作り方>
春キャベツを手でちぎる。大き目がいいが、小さいのがあってもいい。
豚バラ肉を5mm角にカットする。豚バラ肉を塊で買うと、どうしても脂が多めの部分がでてくる。そこが狙い目だ。
刻んだ豚バラ肉をフライパンに入れ、中火で加熱してラードをつくる。
油が泡立ち、少し茶色く色づいてきたら、弱火にしてさらに加熱し、肉から脂を出していく。下の写真のような状態になるまでに、加熱時間は4分(肉は60g)。味の決め手は、このフライパンの中のラードと肉カスだ。
もし、キャベツの量に対してラードが多いと思ったら、少し取り分けておくとよい。小皿に入れて1時間もすれば、冷え固まって見慣れた白いラードとなる。冷蔵庫で保存しておけば、別の料理に使える。
フライパンの中に適量のラードと肉カスを残し、にんにくと唐辛子を炒める。このようにフライパンを傾けると、肉カスからは脂が抜けてカリカリになり、もう片側にはラードが溜まるので炒めやすくなる。
にんにくと唐辛子の香りが立ってきたら、キャベツを入れて全体にラードを回す。さらに、酒大さじ1杯を加えて全体に回す。水分を入れるとキャベツに火が入り、葉が少ししなっとする。酒がなければ水やスープでもよい。
調味料らしい調味料は醤油のみ。適量入れて、全体に味が回るよう炒める。さらに好みで魚醤を少々加えると、風味に奥行きが増すのでおすすめだ。胡椒もこのタイミングで。
まだキャベツの生っぽい感じが少し残っているな…というところで完成!あとは余熱で火が入る。
簡単・シンプル・合理的!春キャベツ秒殺メニュー
この料理の最高の調味料であり、香りづけとなるのが、即席で作ったラードと肉カス。トンカツは揚げた豚が主役、生キャベツが脇役だが、この料理はキャベツが主役、揚げた豚は脇役。しかし、これほど主役を引き立てる名脇役はいない。
ラードの甘くリッチな香りは、サラダ油で炒めたそれとはまったく別物。さらにカリッと揚がった油渣は香ばしく、最高のアクセントになる。
この料理を食べると、作りたてのラードはこれほど偉力があるのかと実感する。フライパンひとつで、油を使わず、食材から出た脂のみで作れるのもいい。簡単・シンプル・合理的。これぞ中国の無限キャベツだ。
RECIPE・TEXT・PHOTO サトタカ(佐藤貴子)