中華女子は世界を目指す!日本のベスト10にエントリーされた服部萌さんの挑戦をレポートします。

中華女子、世界を目指す!
サンペレグリノヤングシェフ2015
日本地区大会レポート<前編>

2013年、若手料理人のための料理コンクール「RED-U35」でブロンズエッグにエントリーされ、女性中国料理人として注目された服部萌さん。80C(ハオチー)の中華女子で、その存在を知った方もいらっしゃるかもしれませんね。

そんな彼女が、この冬チャレンジした戦いは「サンペレグリノヤングシェフ2015」。世界20地域の中から若手料理人世界一を目指すこの大会で、日本代表候補者に選ばれるのは10名のみ。その中に、私たちは見つけてしまいました。唯一の女性候補者であり、唯一の中国料理人でもある、「服部萌」という名前を―――!

世界を舞台にしたコンクール。そこにチャレンジするにあたって、彼女は何を考え、どんな想いで臨んだのでしょうか。当日の審査会・表彰式の様子とともに、80C(ハオチー)が独自に取材したインタビューをお届けします。

服部萌さん

 

◆応募まで正味6日!コンクールの知らせは突然に

「大会のことを知ったのは、締切の10日前だったんです。出場のきっかけは、常連のお客様の『こんな大会があるらしいよ』というひと言。それからすぐに情報を当たり、大会のウェブサイトで応募条件を確認した時には、締切の6日前になっていました」。

そんな衝撃告白から始まったこのインタビュー。それでも応募したのは「今年しかチャレンジできない年齢だったんですよ」と服部さん。条件を見てみると、年齢は30歳以下。料理長、副料理長、部門長の経験が1年以上、初等教育程度の英語を読み、話す能力があること―――。さすがは世界レベルの大会、それなりのハードルが設けられています。

選考会オープニングの様子。


審査順はくじ引き。服部さんの番号はNO.1!

 

◆世界大会の審査基準とは?

本大会の事務局は、国際的なイタリア料理学校ALMA。特に今年は、世界初の食をテーマにした万博・「ミラノ万国博覧会」(2015年5月~)が決勝戦の大舞台となることから、世界的に注目されているイベントでもあります。
その審査項目は大きく5つ。大会公式ルールには、

1. 素材
品質、新鮮さ、ユニークさに関して、市場で手に入る最良の素材を選択しているか、または選び方を理解しているか

2. スキル
素材をうまく取り扱い、素材の本質を尊重した料理にうまく変化させているか、または取り扱い方や料理へと変化させる方法を理解しているか

3. 才能
味と形の完ぺきなバランスを維持しながら、美食文化をパーソナルでコンテンポラリーなスタイルで探究し、斬新でインスピレーションを感じさせるスタイルを創造できているか

4. 美しさ
給仕方法も料理の魅力の重要な一部とみなす

5. メッセージ
作品やビジョンを通じて明確なメッセージを伝えているか、または効果的なコミュニケーション方法を理解しているか

とあるように、自分自身が身につけた技術、感性、アイデアなど、ただ一皿の料理を通じて、あらゆる表現力が問われることになります。

これを見て、服部さんがチャレンジしてみようとと思ったのが、ファッションと料理のコラボレーションです。「そこで、まずは『キモノ』をキーワードにあれこれ考えてみました。でも、なかなかいいアイデアが思い浮かばなくて…。最後に『残された時間で何ができるか?』と考えた時、『基本ができているデザートで膨らませてみよう』と思いました」。

服部萌さん

 

◆店で出していたあの料理を、世界の舞台へ

こうと決まったら、あとはやるのみ。残り時間で試行錯誤を繰り返し、応募書類と論文とを英文で完成させ、年が明けて選考の結果が届いたのは2015年1月中旬のこと。

うれしい知らせをもたらしてくれた料理は「Longjingtea-flavoured blancmange and sakura jelly sauce(龍井茶(ロンジンチャ)のブランマンジェ サクラ葉のソース)」という一品でした。

聞けばこの料理、もともと春先に『老虎菜』で提供しているデザートがべースになっているそう。大会で日本から海外に向けて発信するにあたり、『桜』をキーワードに再構築したというこの一皿。料理として具現化された服部さんのイマジネーションは、どんなものだったのでしょうか。

「私、桜餅が大好きなんですよ。今回はそこにヒントを得て、ソースには桜の葉の塩漬けと、さくらんぼを使ったグリオットピュレを合わせることしたんです。また、桜餅と一緒に飲みたいのはやっぱり緑茶。私は中国料理をやっていますから、中国を代表する緑茶・龍井茶を選びました」

桜の葉

しかし、こっくりとしたフランス式のブラマンジェと、軽やかさが身上の龍井茶という、2つの相反する要素を融合させるのは想像以上に難しいものでした。

「ブランマンジェには通常、生クリームを加えますが、それでは龍井茶が負けてしまう。クリームを加えず、牛乳のみで作っても、それでも負ける。最終的に牛乳と水とを合わせ、龍井茶の風味が生かせるバランスを保ちました」。

また、この大会がイタリアの水のブランド「サンペレグリノ」の名前を関していることから、水の質にも目を向けたという服部さん。「自分でも驚いたのですが、硬水だと龍井茶の風味が出ないんです。使ったのは軟水。ここまで風味が変わるものなのか!と大きな発見でしたね」。

調理風景

さらに桜の花の「儚さ」は、その口溶けで表現することにチャレンジしました。
「目指したのは、舌にのせるとふう~っと溶けるような食感。私はいつもレストランでデザートを出していますが、同じ皿の上でも温感の差を出したり、違う食感を取り合わせたり、その場でアクセントを加えたり―――、レストランだからこそできる食感というものがあります。それは、お持ち帰りできるお菓子と最も違うところ。ここでもそこはこだわって追及しています」。

▼続きは審査会と表彰式のレポートです!

審査員をくぎづけに!
日本女性ならではのプレゼンテーション

 


TEXT & PHOTO 佐藤貴子(ことばデザイン)