もくじ
1 オイスターエキスとは?
2 広島牡蠣の育て方。
3 牡蠣はクレーンで吊り上げる!
4 エキスは一番だしの大釜仕込み
5 官能検査のスペシャリスト
6 オイスターエキスの使い方 ―上海家庭料理 大吉―
7 干し牡蠣=食べる出汁(だし)!
8 干し牡蠣の食べ方 ― 春節のごちそう&家庭でもできる旬菜

この日私たちが訪れたのは、江田島市江田島町にある水産会社。こちらは江田島にある牡蠣養殖業者の中でも大手で、なんとこの界隈に牡蠣筏(かきいかだ)を150近くも所有しているそうです。さっそく私たちも漁師さんと一緒に船に乗り込み、日の出前に出発!

 

漁師のみなさん牡蠣の収獲に同行させていただいた漁師のみなさん。男らしーっ!

 

向かう先は、厳島神社のある宮島の裏側にあたる大砂利(おおじゃり)エリア。まだ暗い中、牡蠣筏の間を縫うようにして目的地へと進みます。

これだけ筏がたくさんあると間違えそうなものですが、「筏の端に明かりを付けたり、筏に色線を引いたりして、目印を付けているから間違えないよ」と同社社長。むしろ時には、盗難されることもあるのだとか!

安芸の宮島の裏手にあるのが、この日の漁場・大砂利(おおじゃり)エリア。

 

本日収獲する筏は2台分で、大きさは縦20メートル×横10メートルほど。下には約10メートルの牡蠣付きワイヤーがぶら下がっており、重量は約500kg!とても人力で引き上げられる長さ&重さではないため、船に装備されたクレーンを使って引き上げていきます。

 

船固定まずは牡蠣筏と船を固定して…、

牡蠣チェック牡蠣の大きさをチェック。大きく育っているかな…?

クレーン1大きさはOK!となれば、各ワイヤーを束ねてクレーンの先にくくりつけ…、

クレーン2ゆっくりと引き上げると…

牡蠣アップ牡蠣がみっしり付いています!

 

引き上げられたワイヤーを見ると、最後尾に止め具がついており、養殖中に牡蠣が海中に落ちないようになっています。また、貝と貝の間にはストローのようなものがはめ込まれており、牡蠣を密集させずに大きく育てられるよう、適度な間隔をあけています。この止め具をカットすると、ストローも牡蠣の塊も、すべてがシュルシュルと船内に落ちていく仕組み。

 

カット風景止め具をカットすると、牡蠣がボタボタと船内に落下。

カット風景ワイヤーからしたたり、飛び散る水も半端ないため、
カット担当の漁師さんは、カッパとメガネ要着用です。

船内の牡蠣収穫された牡蠣。殻だけ見ると、まるでクズ鉄のようですが、殻をむけば舌もとろける逸品に。

 

この日は約2トンの収獲でしたが、最盛期には一度の漁で15トンくらいになるそう。漁を終えたら港へ直行。この船がよくできたもので、収獲した牡蠣が自動で洗い場に流れるオートメーションシステムを装備。そしてさっきまで牡蠣を収獲していたお兄さんたちは、休む間もなく牡蠣の選別に入ります。

 

牡蠣の搬入牡蠣がベルトコンベアーで船から洗い場に直送されてきます。

牡蠣の選別漁師のみなさんが瞬時に選別。

選別済の牡蠣クズ鉄のようだった牡蠣も、水洗いするとすっかりキレイに!

 

こうして殻に付いたヘドロ等を洗い流し、大きさを選別された牡蠣は、滅菌のため一昼夜水槽へ。一般的には次亜塩素酸ナトリウム、すなわち消毒用の塩素を使うそうですが、同社では海水から作った滅菌成分を利用し、より自然に近い環境で滅菌させているそう。この海水の中で牡蠣が海水を吸ったり吐いたりすることにより、だんだん牡蠣の身がきれいになっていきます。

 

水槽アサリの砂抜きと同じような要領で、牡蠣を生かしながら、殻の中に入ったドロや砂を抜いていきます。

 

そして滅菌された牡蠣は、打ち娘(うちこ)さんと呼ばれる、牡蠣の殻むきのプロたちによって“むき身”にされます。使う道具は、木の棒に鉄のハーケンを直角に打ち付けた手鈎(てかぎ)状のもので、これは広島地区ならではのものだそう。私もやってみましたが、柔らかな牡蠣の身を傷つけずに、ちゅるんと取り出すのはなかなか難しいもの。牡蠣殻をこじ開けるポイントがわかると、テンポよく開けられるようになります。

 

打ち娘さん

打ち娘さん手元アップ

むき身これがむき身。

 

 

収獲後、24時間水槽で暮らし、打ち娘さんたちによってむき身にされた牡蠣。そのまま食べれば生牡蠣ですが、オイスターエキスへの道のりはいよいよここから。次はカクサン食品の製造工場に向かいます。

 

NEXT TRAVEL>「エキスは一番だしの大釜仕込み」


Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo 清水武司(joy)