ヨシキリザメ肉の扱い方、そのポイントは? 3月28日(金)の締切に向けたマメ知識をご紹介。

【締切3/28金】サメ肉を使った中国料理を募集

日本中国料理協会と、宮城県気仙沼市に拠点を置く「サメの街気仙沼構想推進協議会」では、ふかひれの原料として最も普及しているヨシキリサメのボディ、つまりサメ肉、サメの身を使った中国料理コンクールを開催しています。

このトピック、シェフの中にはご存じの方も少なくないかと思いますが、「普段サメ肉を使っていないので、扱い方がよくわからない」という声も耳にしました。

そこで80C(ハオチー)では、コンテスト前の参考までに、素材の特徴と活かし方、この企画の背景をご紹介。ふかひれやサメ肉にも詳しい、中華・高橋 商品部部長の尾崎さんに話を聞きました。

サメ肉
これがヨシキリザメの切り身です(気仙沼のすり身工場にて撮影)。

 

ドリップはしっかり切って身に吸わせない!

まず、ヨシキリザメの肉という食材の特徴ですが、長年はんぺんとして加工されてきたことからもわかるように、空気を含みやすい、軟らかでふわふわとした食感が持ち味。また、味は淡白ながら、ほのかに甘さもあります。

株式会社中華・高橋 尾崎さん
中華・高橋 商品部部長
尾崎さん

では、その特徴をどう活かすか?と言いますと、「ドリップをしっかり切ることです」と尾崎さん。「特に冷凍のすり身は解凍時にドリップが多く出ますが、これをしっかり切って、その上で卵白や片栗粉などを加えて、調理のしやすい素材に整えていくことが肝心」とか。ここは、身のしっかりした青鮫や毛鹿鮫とはハッキリと異なるところですね。

また、気になるのがサメ独特のアンモニア臭ですが、「実は新鮮なヨシキリザメの場合、匂いはそれほど感じられないことが多いんです」。

とはいえ天然の素材ですので、調理過程で匂いが出てくるなど、固体差があるのは致し方ない部分も。そこで、「解凍時はザルなどを使い、ドリップをしっかり下に落とし、身に吸わせないようにするのがポイントです」とのことでした。

サメ肉
手前が冷凍フィレ、右が解凍したフィレ、奥は卵白と片栗粉を絡ませた切り身です。

 

鮫食文化を守るために

ところで、中華でサメを調理するといえば、御存知の通りフカヒレが定番です。なぜ、わざわざサメ肉を…と思う方もいらっしゃるのでないでしょうか。

その理由は、長年日本で培われてきた、“ヒレはふかひれに、肉ははんぺんに”という、江戸時代から続く食文化サイクルが崩れかけてきていることにあります。

なぜなら、東日本大震災に伴う大津波により、沿岸の水産加工場は甚大な被害を受け、練り製品に使われてきたサメ肉の需要も激減。販路を失ったことからサメ類の魚価は大きく落ち込み、サメ漁を担う延縄漁は今、維持・存続の危機にさらされています。

また、世界的には船上で鮫のひれだけ切り取り、胴体を海に捨てる“フィニング”という行為が問題視されており、環境保護団体による激しいサメ漁反対運動も…。実際のところ、気仙沼で水揚げされる鮫において、そのような行為はないのですが、このままではふかひれをさまざまな美味として提供してきた、中国料理の文化が廃れてしまい兼ねません。

延縄漁船
気仙沼港に接岸したマグロ延縄漁船の第七勝漁丸。ここに鮫も積まれています。

そこで、長年中国料理でサメのヒレ=ふかひれを使ってきた提供してきた中国料理業界のみなさんに、ぜひ肉の方も中国料理で使っていただきたく、アイデアと、それをカタチにした料理を大募集!というのが今回の企画の背景。
なお、少しずつではありますが、実際にサメ肉を中国料理の食材として検討している店もあり、80C(ハオチー)の連載「食材狩人」のふかひれ編でもご覧いただいた通り、すでにサメ肉を中国料理として提供している店も生まれている…とういうことも、お伝えしておかなければなりません。

今回はプロの中国料理人向けコンテストですが、サメ肉には、昨今の高齢化に伴い、摂食・嚥下(えんげ:食べものを口から胃まで運ぶ、一連の飲み込み運動)障害の方に向けて、老人ホームや病院食などで活用できる可能性も感じられるもの。ここで生まれた料理が、世の中に新しい価値を提案するとともに、より多くの人に食事の楽しみを提供できる布石となれば、なによりではないでしょうか。

応募資格は、日本国内で現在中国料理の調理に従事している40歳以上の方。詳しくは日本中国料理協会のホームページにてご確認ください。

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食材狩人2 ふかひれ&サメ特集

 


TEXT:佐藤貴子(ことばデザイン)
PHOTO:竹中稔彦、菅野勝男(Live ONE)