ふかひれとは、鮫のひれを乾燥させて作られる食材のこと。その形を保ったまま、ふっくらととろけるように煮込んだふかひれ姿煮や、ひれの繊維1本1本ほぐして作る黄金色のふかひれスープは、中国料理を代表するご馳走です。
そんな中国名菜となっているふかひれの原料は、実は日本から中国に輸出されてきた歴史あるもの。
特に東北地方、三陸産のふかひれは、干し鮑、干しナマコと並び、江戸幕府が長崎から中国の清朝(1636-1912年)に輸出していた俵物三品のひとつでした。
これらは日中問わず、中国食材店で「乾貨」と呼ばれていますが、それは金銀銅の代わりに決済ができるものだった名残。今も昔もふかひれはとっておきの食材なのです。
そこで今回の「食材狩人」でご紹介するのは、鮫のひれがふかひれになるまでの一連の過程と、産地における鮫漁業、そして鮫全体を活用する取り組みについて。取材のはじまりは、宮城県気仙沼市です。
気仙沼(けせんぬま)ってどんな場所?
そもそも気仙沼市界隈は、古くからマグロ延縄(はえなわ)漁業がさかんな場所。そこがなぜふかひれの有数の産地に?というと、延縄漁業では、マグロ以上に鮫が多くかかることから。その結果、気仙沼は日本有数の鮫の水揚げ地となっていきました。
また、鮫の力強い泳ぎを支える堅いヒレを、食用に加工する技術が発達したのもここ気仙沼。しっかりとしたひれを、人間が食べられるくらい柔らかな食材にするためには、鮫皮や軟骨を取り除き、乾燥しては水で戻し…と、大変な手間がかかりますが、その技術が継承されたことで、現代に事業として花開いた歴史があります。
つまり、産地に新鮮な食材があり、高い加工技術が現代まで受け継がれているのが気仙沼。そこでまずは、気仙沼のふかひれを支えてきた「鮫と街の関わり」について、気仙沼市長にお話をうかがうことにしました。
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構成・文 佐藤貴子(ことばデザイン)
気仙沼の撮影 菅野勝男(LiVE ONE)