延ばし続ける意味がある!蘭州拉麺食べ比べ【まとめ】

「一清、二白、三紅、四緑、五黄(澄んだスープ、大根、辣油、葉大蒜、黄色い麺)」の条件を満たした蘭州拉麺(蘭州牛肉面)

9種類の麺を食べ終え、それぞれの特徴を改めてまとめてみました。

毛細(マオシー)|出汁でにゅうめんを食べるような感覚。飲んだ後の〆に最適。
細(シー)|軽快にすすりやすく、朝食・昼食に向く。
二細(アーシー)|ちゃんぽん麺に通じる太さ。中太で噛みごたえと啜りやすさを両立
二柱子(アージューズ)|太くて滑らか。小麦の味わいが強く、辣油・黒酢の味変に適する。
韮叶(ジューイエ)|機械打ちのように平たく、唇を快速で走り抜ける
寛(クワン)|端がぴらぴらで、薄く長い刀削麺のよう。つるつるとした食感。
大寛(ダークワン)|麺というより“皮”
蕎麦棱(チャオマイレン)|三角のエッジが効いて、スープの絡みがよい。
粗蕎麦棱(ツーチャオマイレン)|エッジの効いた太うどん。辣油や黒酢の味変に適する。

細ければやさしくスープを抱き、太ければ小麦の風味がしっかりとし、幅広ならばつるつる感がMAXに。やはり蘭州拉麺は「麺の太さとかたちが違えば、もはや別の料理(菊池)」なのかもしれません。

生地を触りながら麺談義

また、麺をさまざまなかたちに延べ分ける以前に、非常に大切なプロセスである生地づくりにも触れておきたい点があります。それは、原料となる粉へのこだわりです。

「小麦粉は、蘭州の本店の味を再現するため、中国の本店で使っている粉の成分を分析した上で、最も近いブレンド粉を使っています。粉の分類としては準強力粉に近いですね。

実は試作時、日本人受けすると思い、グルテンとなるたんぱく質が多めの粉を使っていたんです。そうすると、もっとサクッとした食感になります。でも、蘭州拉麺感は揺らいでしまう。やっぱり食べ終わる頃の“だるだる感”も蘭州拉麺らしさなんですよ(清野)」。

麺台で生地を練る清野さん。見た目ではわからない粉へのこだわりが、蘭州拉麺独特の食感を生む

また、太さで食べ心地は異なるものの、蘭州拉麺としてのハッキリとした共通項も。それは、つるつるとして滑らかな食感です。

例えば、太麺は太麺でも、日本が誇る吉田うどんや武蔵野うどん、讃岐うどんとは“啜り心地”がまったく異なります。すると、自家製麺界の雄・玉置さんが興味深いことをいうじゃありませんか。

グルテンは一方方向に延びると、麺がつるんとするんです。例えば讃岐うどんは、生地を作る時にいろんな方向に折り畳み、グルテンを一方方向に固めないようにします。だから全体がもちもちなんです。蘭州拉麺は延々と同じ方向に引っ張るから、それが啜り心地に直結している感じですね」

玉置さんの麺に対する解像度が高すぎて皆感嘆するばかり

この意見には清野さんも完全同意。「溜条(リウティァオ)といって、くるくると生地を巻き付ける製麺プロセスも、グルテンの方向を揃える意味があります。さらに生地に油を加えているので、より滑らかさが出るんですよね」

溜条(リウティァオ)。生地をこねた後、ツイストドーナツのように生地を巻き付けて延ばした後、引っ張って麺状にする

こうして現地の味わいとおいしさを徹底的にこだわって作られた麺は、筋道爽口(口当たりが心地よく、弾力あり噛み応えがある)

実際、蘭州から視察に訪れた社長や本店のスタッフも、来るたび「同じ味だ」と、その再現性に驚いているそう。麺は、ただ延ばすためだけに引っ張っているんじゃなかったんですね。

みんな違ってみんないい。リピートしたい麺はどれ?

さて、9種類の麺を食べ終え、真っ先にみんなに問うたのは「次回どの麺を頼みたい?」ということ。これが、5人5様でキレイに分かれたのです。

「私は粗蕎麦棱(スーチャオマイレン)。猫舌は熱いと細いのが啜れないから(笑)。これなら茹でたてを逃さず味わえます(モエ)」

猫舌のモエさん。猫舌に細麺はハードルが高い。(写真は「寛(クワン))

「ピタッと来たのは中太の二細(アーシー)。小麦感とスープのバランスがよくて、どんどん食べられる!(マサラ)」

蘭州食べ歩きの記憶と照らし合わせながら楽しむマサラさん

「私ももともと二細派だけど、今回、韮叶(ジューイエ)を食べたら、中国の麺の定番のかたちと完成度の高さに、改めていいと思いましたね(菊池)」

蘭州拉麺をしみじみ味わう菊池さん

「僕は寛(クワン)だな。端がピラピラしているのがいい。刀削麺は厚すぎて中心が粉っぽかったり、短すぎて啜り甲斐がなかったりしますが、食べごたえと啜り心地のよさがあって。これは絶対製麺機じゃできない食感です(玉置)」

「無茶なお願いしていいですか?のばす前の生地触っていいですか?」ということで、自作のイメトレをする玉置さん。嬉しそうだ

アイチーは以前から二細(アーシー)推しですが、今回改めて、噛む・啜るを同時に楽しめる良さを再認識!

私はブレずに「二細(アーシー)」派!

蘭州を旅するように蘭州拉麺を味わおう!

これまで日本と中国でさまざまな蘭州拉麺牛肉麺を食べてきましたが、この企画では多くの発見とともに、ほぼオーダーすることのなかった麺の新たな魅力を知ることができました。

中国では、蘭州拉麺は「蔵族的牛肉(チベット族の牛肉)」「漢族的糧食(漢族の穀物の主食)」「回族的面食技芸(回族の粉料理の技術)」が合わさって生まれたといわれることがあります。

思えば、かつてのシルクロードの要衝・蘭州は、今も昔もさまざまな民族の暮らしが息づいており、この土地だからこそ、これだけの麺の多様性が生まれたのかもしれないなぁと想像を膨らませるばかり。

ひとつの生地から9種類もの太さを延べ分ける蘭州拉麺は、やはり“ひとつの麺料理”を超えた、蘭州の食文化そのもの。皆さんもぜひ“蘭州を旅するように”、9種類の麺を食べ比べてみてください!

ごちそうさまでした!

<店舗情報>
馬子禄牛肉面 新宿店(2025年4月13日オープン)
住所 東京都新宿区歌舞伎町2-1-2 Hanrokuビル1階(MAP
TEL 03-6265-9680
営業時間 11:00-22:30(22:00 L.O.)

神保町店(2017年8月22日オープン)
住所 東京都千代田区神田神保町1-3-18(MAP
TEL 03-6811-7992
営業時間
平日 11:00-15:00(15:00 L.O.)  17:00-20:30(20:30 L.O.)
土日祝 11:00-21:00(20:30 L.O.)

馬子禄牛肉面 オフィシャルサイト|X @lanzhou_lamian

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TEXT アイチー(愛吃)
PHOTO 伊藤菜々子
取材協力 馬子禄牛肉面 新宿店


アイチー(愛吃)
中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。中華料理にまつわるコーディネート、アドバイス、監修などを行う。★執筆・出演記事はこちら