歯ごたえがあり、形がくずれにくいピーマンは、青椒肉絲(チンジャオロウスー)をはじめ、中華風の炒めものにぴったりの食材。今はハウス栽培によって年中出回っていますが、露地物は6月~9月に旬を迎えます。
ピーマンは栄養面からみると、免疫力を高めてくれる“抗酸化ビタミン”の異名を持つビタミンA、C、Eが豊富。特に赤ピーマンは、緑色のピーマンに比べてさらにビタミンCが多く含まれ、妊婦必須の栄養素・鉄分の吸収をより高めてくれるため、妊娠中は肉類と合わせて積極的に食べたい食材です。
特にこれからの季節は気温が上がり、ちょっと移動しても汗をかいたり、疲労がたまったりと過ごしにくくなってきます。疲れないよう努めていても、身体の中では赤ちゃんを育てるために、さまざまな栄養が赤ちゃんに送られてしまうので、妊娠中はどうしても疲れやすくなるのです。
また、産院から配布される妊娠生活指導資料や妊婦さん向けの雑誌では「疲れたときはゆっくり休むように」と決まり文句のように書かれていますが、仕事をしていると休みたい時に休みづらい場面もあるでしょう。仕事がない方でも、仲のよい親が近くに住んでいるとか、ホームヘルパーの方に来ていただけるなどの援助がない限り、家事などに追われてなかなか思うとおりに休めないのが現実です。
そこで今回は、肉類の中でも“疲労回復のビタミン”と呼ばれるビタミンB1を最も豊富に含む豚肉(なんと鶏肉の約6倍、牛肉の約8倍!)と、東洋医学において、血の不足による疲労感を軽減するとされるクコの実を使った炒めものをご紹介。
豚肉 | クコ |
調理時間は肉に下味を入れる時間を除いてたったの約10分。食欲が安定しない妊娠期には、劣化が早い食材は使いにくいものですが、栄養面、手軽さに加えて、使用する食材の持ちがいいのもこの料理のメリット。においに敏感になり、台所仕事がしにくくなった方や、身体が重くて思い通りに動きにくくなってきた方のお役に立てる一品です。
青椒枸杞肉丝(豚肉とピーマンとクコの炒めもの)
(青椒(qīng jiāo)=辛くない唐辛子=ピーマン 枸杞(gǒu qǐ)=クコ
肉丝(ròu sī)=肉の細切り)
平たく言うと、青椒肉絲(チンジャオロウスー)にクコが入った炒めものです。中国では肉といえば豚肉をさすので、肉丝は豚肉の細切りを意味します。牛肉や羊肉を使う時は、枸杞牛肉丝や枸杞羊肉丝というに、何の肉かを明確にしている場合が多いですね。豚肉を使っていることを明確にするために「枸杞猪肉丝」と表記する場合もあります。
【時期】妊娠初期~妊娠後期 【季節】春~夏 【栄養的メリット】抗酸化ビタミンの摂取(ビタミンA、C、E)、疲労回復ビタミンの摂取(ビタミンB1)、タンパク質、鉄分 |
レシピ(3名分)
豚肉生姜焼き用薄切り | … | 250g |
ピーマン | … | 3個 |
赤パプリカ | … | 1/2個 |
黄パプリカ | … | 1/2個 |
たけのこ水煮 | … | 50g※ |
※たけのこは細くカットされているものを使うと便利です。 | ||
クコの実(乾燥) | … | 20粒 |
油 | … | 適量 |
[調味料]-肉の下味- | ||
米酒 | … | 大さじ1 |
醤油 | … | 大さじ1 |
片栗粉 | … | 大さじ1 |
水 | … | 大さじ1 |
■作り方
(1)豚肉を細切りにし、下味調味料を合わせたものに30分程度漬けます。
肉は食べやすい細切りに。
肉を切り終わりました。
肉を下味に漬けます。
(2)クコは約15分程度水に漬けて戻します。
(3)野菜を細切りにします。
(4)フライパンを熱して油を入れ、(1)の肉を入れて炒め、火が8割程度通ったら取り出します。
肉を焼き始めて…
肉に火が通ってきて…
肉に8割程度火が通りました。
(5)ピーマン、パプリカ、たけのこを加えて炒め、しんなりとしてきたら肉を戻し入れます。
野菜類を入れて…
野菜類がしんなりとしてきたら…
肉を戻し入れます。
(6)肉にしっかりと火が通ったらクコの実を入れ、サッと炒めて完成です。
肉にしっかりと火が通ったら…
水で戻したクコの実を入れ…
完成です!
調理ワンポイント
※お肉の脂身が気になる方は、脂身の部分をカットしてもいいでしょう。
※米酒は台湾の料理酒のひとつです。ない場合は料理用の日本酒で作ってもおいしくできます。 ※肉の下味が効いているので、野菜と一緒に炒める時には調味料を使わなくても大丈夫。その方がさっぱりといただけます。
子ども向けにはチャーハンに!子どもにも大人と同じ食材を楽しんでもらいたい。そんな我が家では、1歳2ヶ月になる息子にこの料理を細かく切り、ご飯と一緒にサッと炒め、チャーハンにしています。 奥歯が生えきっていない子どもは、まだお肉や硬い食感の野菜は自分では噛み切りにくいもの。少しこぼれやすいので、大人が食べさせてあげてもいいでしょうし、子ども自身で食べたい気持ちが強い場合は、おにぎりにして手づかみで食べてもらってもいいでしょう。 |
参考文献
『中藥材食補養生圖典』葉翹博士 著/2012年/人類智庫數位科技股份有限公司
『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』/講談社編/2013年/講談社
『食材事典』星名桂治 著・監修/2011年/誠文堂新光社
『培梅食譜第一冊』傅培梅 著/2008年/旗林文化出版社
『最新版 妊娠大百科』2012年/ベネッセコーポレーション
Text / Recipe / Photo 山田早苗