上海料理の定番とも言える獅子頭(シーズートウ)。大きな肉団子に箸を入れれば、立ち上る湯気とともに、うまみたっぷりの肉汁が溢れ出します。

獅子頭

お店でしか味わえないと思っていたこのおいしさが、以前ご紹介した東坡肉同様、圧力鍋を使えば家庭でも気軽に楽しめるのをご存知ですか。本格的な獅子頭の作り方の手順とコツを「中華香彩JASMINE」の山口祐介先生に教わりました。

肉粒が食感の決め手!
ひき肉ではなく、さいの目切りが正解

まず、肉団子のもととなる豚バラ肉ブロック(500g)は、5mm角にカット。ひき肉と違って粘着力は弱いものの、その分硬くならず、あの軟らかな食感が生み出せます。肉は切る前に少し凍らせておくのがおすすめ。包丁が苦手な方もカットしやすくなります。
豚バラブロック

決め手は少量の水。
肉に水を吸わせてふっくらジューシーに

続いて、ボウルにカットした肉、塩、砂糖、紹興酒、胡椒、生姜のみじん切りを入れ、粘りが出るまでよく練ります。

ポイントは、粘りが出るまでしっかり練った後に、水(40cc)を3~4回に分けて入れ、その都度肉に水分を吸わせること。調味料をよくなじませ、ジューシーな食感に仕上げる大事な工程です。 肉がふっくらとしてきたら、溶き卵、万能ねぎ、ごま油を加えてさっくりと混ぜます。これで肉団子の素の完成です。

揚げてうまみを閉じ込めつつ、
油っぽさをさっぱり落とすプロの技

獅子頭にする肉の分量の目安は1個約150g。団子にする際に、水溶き片栗粉(水:片栗粉=1:1の分量)を手に付けながら丸めます。団子の表面が水溶き片栗粉で薄くコーティングされると、揚げたときに、油の中で肉団子同士がくっつきにくくなるのです。

高温の油で肉団子を揚げたら、さっとお湯にくぐらせ油抜きを。仕上がりが油っぽくならず、肉のうまみをダイレクトに感じることができるプロの技です。フライパンで焼く方法もありますが、きれいな団子状にならず、ハンバーグ状になってしまうことが多いので、面倒でもここは揚げておきたいところです。

煮込みは圧力鍋を活用。
味付けは二段階で照りよく仕上げる

味付けは、中国醤油(老抽王 50cc)、紹興酒(350cc)、水(2リットル)、長ねぎ(1本)、生姜(1片)の順に鍋に入れ、その都度沸かした汁を利用。この汁と肉団子を圧力鍋に入れ、約40分間加圧します。

圧力鍋

圧力鍋のメリットは、時間が短縮できる上、肉のうまみを逃がさずに調理できること。圧を抜いたら、表面に浮いた脂を取り除き、再び火にかけ、醤油(日本の醤油 60cc)、ざらめ糖(120g)を入れ、煮汁が半分くらいになるまで煮詰めます。

上海や近郊の家庭で作るときはこの段階で完成ですが、お店で出す場合はさらにひと工夫すると山口先生。煮汁に水溶き片栗粉、ごま油を加えて加熱を、さらに照りよく仕上げるのです。青菜やマッシュポテトを添えれば、立派なおもてなしメニューになりますよ。

獅子頭

料理:山口祐介(中華香菜 JASMINE
撮影:2017年7月13日の古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:狮子头(shī zǐ tóu /シー ズー トウ)
日本語料理名:獅子頭

関連ページ:中華wiki「獅子頭」

 


text 近江文代
photo 西田伸夫