東京東部エリアの「セブンイレブン」でビャンビャン麺を限定販売中。そんな情報が駆け巡ったのはつい先日のこと。
しかし「ステイホーム」と言われては、わざわざ買いに行くわけにもいかない。家にいながら、日本の食材で手軽に食べるにはどうしたらいいのだろう。幅広麺といえば、群馬県が誇る「ひもかわうどん」が脳裏に浮かび、取り寄せてみた。
パッケージを見ると「帯麺」とある。これは中国語に通じる表現だ。この麺を油泼(油溌:ヨウポー)で味付けすれば、ビャンビャン麺っぽい味わいが作れそうだ。
油泼面×做法で検索だ
まずは「油泼面(ヨウポー麺)」「做法(作り方)」で中国の料理サイトをいくつかチェックする。油泼(油溌:ヨウポー)とは、薬味や唐辛子粉の上に、チンチンに熱した油を直撃させ、それらの香りを引き出す調理法のこと。ビャンビャン麺の王道の味付けのひとつだ。
しかし、当たり前といえば当たり前なのだが、どのサイトも麺の作り方に重点を置いていて、調味料の配合はないところがほとんど。まあ、難しくないので好みでやってくださいということだろう。
そこで、油泼の味付けは ①中国の料理サイトを参考に ②本場西安で食べた味(2020年1月)を回想し ③日本でビャンビャン麺を出す各店での舌の記憶を融合。試作ののち、そこそこ満足のいく「擬製ビャンビャン麺」ができあがった。
つるりと食べるなら乾麺、コシを求めるなら半生麺
まず麺のチョイスだが、今回は「桐生うどんの里」のひもかわうどんを使った。
ビャンといえば幅も大事だが、コシも大事。乾麺と半生麺、両方試してみると、乾麺は薄くつるんとした舌ざわりが楽しめる。一方、半生麺はコシがあり、むちっとした食感が心地よい。好みの問題だが、半生麺の方がリアルに一歩近いようだ。
また、乾麺はゆでると湯を吸って一回り幅広に仕上がるが、半生麺はそれほど変化がなく、幅2cmくらいに仕上がる。本来のビャンビャン麺は、生地を打ち付けながら薄く伸ばしていくので、幅、コシ、薄さがポイント。そこを踏まえ、あとは好みで選んでほしい。
現地感は唐辛子とにんにくが決め手
調味は現地感をゴリゴリ出していくなら、にんにくと唐辛子粉を多めにするといい。ここでは過ぎたるは及ばざるが如し、ということで少し控えめにしている。味のアクセントには、好みで砕きピーナッツ、煎りごま、香菜などを入れてもいい。香菜は茎をみじん切りし、葉をトッピングに使うと見た目にキレイだ。
擬製ビャンビャン麺の材料(2人前)▼麺 ▼油泼の素(薬味・調味料・香辛料・油) 調味料:合わせておく。 香辛料 油:小さなフライパンに入れてスタンバイ。 ▼具 ▼お好みでトッピング |
段取り命。仕上げは一瞬!
実際にやってみると、難しくはないが段取りがモノを言う。さっそく作ってみよう。
①薬味をみじん切りにし、フライパンに油を入れておく。
長ねぎ(手前)を使ったのは、ねぎの辛味が欲しかったため。生姜は今の季節、新物で出回る新生姜(左)が使いやすい。軟らかく、シャキッと瑞々しい食感で、調味料と混ざり合うと漬物のような雰囲気になる。
にんにく(右下)は包丁の腹で潰してからみじん切りに。そうすることで、より香りが立ちやすくなる。ここでは香菜の茎のみじん切りも加えた。
唐辛子粉は、辛味の強い貴州省産の煳辣椒面(焙煎唐辛子粉)を使用。唐辛子は、品種と焙煎度合いによって辛さと色合いが変わるので、好みのものを使おう。
ポイントはにんにくと唐辛子粉。前述の通り、ここをガツンと効かせると現地っぽくなるので、好みで加減するといい(場合によっては味精(旨みのもと)も)。また、この段階でフライパンに油を入れておくと、麺がゆで上がった後すぐに油泼の行為に取り掛かれるので、スタンバイしておこう。
②調味料を合わせ、野菜を食べやすい大きさに切る。
醤油、黒酢、砂糖、塩を混ぜ合わせてタレを作り、野菜は食べやすい大きさにカットする。現地風なら野菜はノーカットだ。
タレができたら、あらかじめ器に入れる。ここで思いついたのだが、ステンレスボールに入れると現地っぽいと思い、1つはボールにしてみた(手前)。先に器に調味料が入っていると、なんだか麺店っぽい気分が高まってくる。
トッピングのピーナッツを砕くときは、ポリ袋に入れ、肉叩きなどで軽く潰す。こうすると、飛び散らないので使いやすい。
③湯をわかし、青菜ともやしをゆでる。
てぼ(麺をゆでる細長いザルのようなもの)や取っ手付きのザル(写真)があれば、麺をゆでながら野菜をゆでてもいい。ない場合は、先にゆでたほうがスムーズだ。
④ひもかわうどん、もといビャンビャン麺をゆでる。
最初に湯を対流させ、麺同士がくっつかないようにゆでる。袋には、麺を1本ずつ湯に入れるように書いてあるので、その通りに。
⑤麺、野菜、薬味、唐辛子粉の順に盛り付ける。
ゆで上がった麺を流水で洗い、器に入れる。野菜を添え、麺の中央に刻んだ薬味と唐辛子粉をのせる。このとき、できるだけ唐辛子粉とにんにくをセンターにまとめてのせておこう。
⑥油を煙が出るまで熱する。
フライパンに入れた油を、煙が出るまで熱する。煙を目視できるかどうかが目安だ。
⑦チンチンに熱した油をかける。
センターにまとめた唐辛子粉とにんにくに直撃するように狙うと、作りたてにんにく辣油のようなかぐわしき香りが立ちのぼる。文字通り、油で香りを発生させる油泼である。ヂヂーッと音が出れば成功!
群馬のひもかわうどんで心は大陸・西安へ飛べる
ビャンとはいってもひもかわうどん…と思いつつ作ってみたら、見た目も味もかなりビャンビャン麺だった。
乾麺でつくったときは、もっとコシがあるといいと思ったが、半生麺にしたらかなり満足感がアップ。実際のところ、西安でも日本でもそれほどコシのない店もあるので、そこは好みだ。
青菜の種類は意外と問わない。試作段階では、家にあった菜心と自家栽培もやしで適当にやってみたのだが、立派にビャンビャン麺を感じることができた。
もちろん、「麺を打ってこそビャンビャン麺なんですよ」という声もあろう。しかしここはセブンイレブン同様、誰もが手軽にビャン気分を味わえる、ということに重点を置いた。
手打ち麺を除けば、ビャンビャン麺らしさは油泼(ヨウポー)の味付けにあると思う。これをマスターすれば、心は大陸・西安にいけるはずだ。
TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)