東京東部エリアの「セブンイレブン」でビャンビャン麺を限定販売中。そんな情報が駆け巡ったのはつい先日のこと。

しかし「ステイホーム」と言われては、わざわざ買いに行くわけにもいかない。家にいながら、日本の食材で手軽に食べるにはどうしたらいいのだろう。幅広麺といえば、群馬県が誇る「ひもかわうどん」が脳裏に浮かび、取り寄せてみた。

ひもかわうどん帯麺。4袋入・送料込1,000円のお試しセット。半生タイプは3袋入で同額だ。

パッケージを見ると「帯麺」とある。これは中国語に通じる表現だ。この麺を油泼(油溌:ヨウポー)で味付けすれば、ビャンビャン麺っぽい味わいが作れそうだ。

油泼面×做法で検索だ

まずは「油泼面(ヨウポー麺)」「做法(作り方)」で中国の料理サイトをいくつかチェックする。油泼(油溌:ヨウポー)とは、薬味や唐辛子粉の上に、チンチンに熱した油を直撃させ、それらの香りを引き出す調理法のこと。ビャンビャン麺の王道の味付けのひとつだ。

しかし、当たり前といえば当たり前なのだが、どのサイトも麺の作り方に重点を置いていて、調味料の配合はないところがほとんど。まあ、難しくないので好みでやってくださいということだろう。

そこで、油泼の味付けは ①中国の料理サイトを参考に ②本場西安で食べた味(2020年1月)を回想し ③日本でビャンビャン麺を出す各店での舌の記憶を融合。試作ののち、そこそこ満足のいく「擬製ビャンビャン麺」ができあがった。

イメージは、西安市「愛骅裤带面馆」の油泼面。ちなみに西安市内の多くの店では、観光客がオーダーするせいか、ビャンビャン麺で注文すると具が豪華になり(芋などが入る)、油泼面は同じ麺で中華風微辛ペペロンチーノ的な味付けになる。
西安市「愛骅裤带面馆」外観。中国のグルメ口コミサイト「大众点评(大衆点評)」で2019年「西安面館TOP10」に選ばれている。

つるりと食べるなら乾麺、コシを求めるなら半生麺

まず麺のチョイスだが、今回は「桐生うどんの里」のひもかわうどんを使った。

ビャンといえば幅も大事だが、コシも大事。乾麺半生麺、両方試してみると、乾麺は薄くつるんとした舌ざわりが楽しめる。一方、半生麺はコシがあり、むちっとした食感が心地よい。好みの問題だが、半生麺の方がリアルに一歩近いようだ。

乾麺。ミルクケーキの巨大版みたいな感じだ。
ひもかわ幅広めん半生タイプ。こちらは3袋入1,000円送料無料がある。コシを好むなら迷わずこちらだ。

また、乾麺はゆでると湯を吸って一回り幅広に仕上がるが、半生麺はそれほど変化がなく、幅2cmくらいに仕上がる。本来のビャンビャン麺は、生地を打ち付けながら薄く伸ばしていくので、幅、コシ、薄さがポイント。そこを踏まえ、あとは好みで選んでほしい。

現地感は唐辛子とにんにくが決め手

調味は現地感をゴリゴリ出していくなら、にんにくと唐辛子粉を多めにするといい。ここでは過ぎたるは及ばざるが如し、ということで少し控えめにしている。味のアクセントには、好みで砕きピーナッツ、煎りごま、香菜などを入れてもいい。香菜は茎をみじん切りし、葉をトッピングに使うと見た目にキレイだ。

擬製ビャンビャン麺の材料(2人前)

▼麺
・ひもかわうどん(乾麺:1袋170g/2人前 または 半生麺:1袋270g/2人前)

▼油泼の素(薬味・調味料・香辛料・油)
薬味:すべてみじん切りにする。
・長ねぎ 5cm
・新生姜 4スライス(なければ生姜)
・にんにく 大1片の半分

調味料:合わせておく。
・醤油 大さじ1杯
・黒酢 小さじ1杯(ここでは山西老陳醋を使用)
・砂糖 小さじ1(ここではきび砂糖を使用)
・塩 ひとつまみ

香辛料
・唐辛子粉 小さじ1杯強

油:小さなフライパンに入れてスタンバイ。
・油 大さじ2(ここでは太白ごま油を使用)

▼具
・チンゲン菜 4本(約85g)※青菜ならなんでも。
・もやし ひとつかみ(100g)※お好みで。

▼お好みでトッピング
・砕きピーナッツ または 煎りゴマ
・香菜 適量

段取り命。仕上げは一瞬!

実際にやってみると、難しくはないが段取りがモノを言う。さっそく作ってみよう。

①薬味をみじん切りにし、フライパンに油を入れておく。

長ねぎ(手前)を使ったのは、ねぎの辛味が欲しかったため。生姜は今の季節、新物で出回る新生姜(左)が使いやすい。軟らかく、シャキッと瑞々しい食感で、調味料と混ざり合うと漬物のような雰囲気になる。

にんにく(右下)は包丁の腹で潰してからみじん切りに。そうすることで、より香りが立ちやすくなる。ここでは香菜の茎のみじん切りも加えた。

唐辛子粉は、辛味の強い貴州省産の煳辣椒面(焙煎唐辛子粉)を使用。唐辛子は、品種と焙煎度合いによって辛さと色合いが変わるので、好みのものを使おう。

ポイントはにんにくと唐辛子粉。前述の通り、ここをガツンと効かせると現地っぽくなるので、好みで加減するといい(場合によっては味精(旨みのもと)も)。また、この段階でフライパンに油を入れておくと、麺がゆで上がった後すぐに油泼の行為に取り掛かれるので、スタンバイしておこう。

②調味料を合わせ、野菜を食べやすい大きさに切る。

醤油、黒酢、砂糖、塩を混ぜ合わせてタレを作り、野菜は食べやすい大きさにカットする。現地風なら野菜はノーカットだ。

タレができたら、あらかじめ器に入れる。ここで思いついたのだが、ステンレスボールに入れると現地っぽいと思い、1つはボールにしてみた(手前)。先に器に調味料が入っていると、なんだか麺店っぽい気分が高まってくる。


トッピングのピーナッツを砕くときは、ポリ袋に入れ、肉叩きなどで軽く潰す。こうすると、飛び散らないので使いやすい。

③湯をわかし、青菜ともやしをゆでる。


てぼ(麺をゆでる細長いザルのようなもの)や取っ手付きのザル(写真)があれば、麺をゆでながら野菜をゆでてもいい。ない場合は、先にゆでたほうがスムーズだ。

④ひもかわうどん、もといビャンビャン麺をゆでる。


最初に湯を対流させ、麺同士がくっつかないようにゆでる。袋には、麺を1本ずつ湯に入れるように書いてあるので、その通りに。

⑤麺、野菜、薬味、唐辛子粉の順に盛り付ける。

ゆで上がった麺を流水で洗い、器に入れる。野菜を添え、麺の中央に刻んだ薬味と唐辛子粉をのせる。このとき、できるだけ唐辛子粉とにんにくをセンターにまとめてのせておこう。

⑥油を煙が出るまで熱する。

フライパンに入れた油を、煙が出るまで熱する。煙を目視できるかどうかが目安だ。

⑦チンチンに熱した油をかける。


センターにまとめた唐辛子粉とにんにくに直撃するように狙うと、作りたてにんにく辣油のようなかぐわしき香りが立ちのぼる。文字通り、油で香りを発生させる油泼である。ヂヂーッと音が出れば成功!

よーく全体をかき混ぜてからいただきます!

群馬のひもかわうどんで心は大陸・西安へ飛べる

ビャンとはいってもひもかわうどん…と思いつつ作ってみたら、見た目も味もかなりビャンビャン麺だった。

乾麺でつくったときは、もっとコシがあるといいと思ったが、半生麺にしたらかなり満足感がアップ。実際のところ、西安でも日本でもそれほどコシのない店もあるので、そこは好みだ。

上から見た景色。

青菜の種類は意外と問わない。試作段階では、家にあった菜心と自家栽培もやしで適当にやってみたのだが、立派にビャンビャン麺を感じることができた。

乾麺で試作バージョン。半生麺よりやや幅広だ。

もちろん、「麺を打ってこそビャンビャン麺なんですよ」という声もあろう。しかしここはセブンイレブン同様、誰もが手軽にビャン気分を味わえる、ということに重点を置いた。

手打ち麺を除けば、ビャンビャン麺らしさは油泼(ヨウポー)の味付けにあると思う。これをマスターすれば、心は大陸・西安にいけるはずだ。


TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)