[料理の基本]ひと晩水に浸けるだけ!干し貝柱の戻し方

干し貝柱は、数ある中華の乾物の中でも非常に使いやすい食材だ。なぜなら、戻す際のコツがそれほどいらないから。

ポイントは、料理する前に水で戻しておくというただ1点。戻し方は、器に干し貝柱を入れ、しっかり被る程度に水を注ぎ、一晩おいておくだけである。

参考までに、上の写真は2時間水に浸したLサイズの干し貝柱だ。一見、すでに戻っているように見えるかもしれないが、実はまだ芯が硬い。このくらい大きいものであれば、最低でもひと晩は水に浸しておこう。

その結果が下の写真だ。

上の写真は、戻す前の貝柱(左)と、ひと晩水に浸した干し貝柱(右)だ。乾物の状態で直径2.7cmだった干し貝柱は、直径3.5~3.6cmほどに膨らみ、厚みは2cm以上ある。

このように形がきれいで大きいサイズの干し貝柱は、見ても戻してもテンションが上がるものだ。しかし、難点が1つある。高いのだ。干し貝柱の形を生かして丸のまま使う料理でなければ、ここまで立派なものでなくてもいい。

家で使うなら割安で使い出のある「砕け」がおすすめ

そこで、より使いやすい干し貝柱を選ぶなら「砕け」である。「砕け」はもっと割安で、スープや煮込み料理など、家庭料理として使い道がいろいろある。

上の写真は「砕け」で、左が乾物、右が2時間ほど水に浸したものである(撮影用に水の量を減らしているが、実際はもっと多めの水を加えている)。

これをひと晩戻すとどうなるか。下の写真をご覧いただきたい。

左と右の干し貝柱は同じものではないため、完全に比較したとはいえないが、左の乾物に給水させると右のようにふっくらとして、繊維がほぐれやすい状態となる。こうなったら、煮込みにスープに炒飯になんでもござれだ。貝柱は天然のものなので、戻り方には個体差があるが、ひと晩水に漬けておけばほぼ問題なく使える。

ちなみに、アジアの市場などで見かける干し貝柱は、日本の北海道産のものより軟らかく小粒なものを多く見かける。これらは戻し時間が短時間で済むが、うまみはそれほど強くはない。

プロが買い求める香港の乾物問屋街で、北海道産の干し貝柱は高品質なものと認められている。それにはやはり「しっかりとしたうまみが出せる」という理由があるのだ。オホーツク海沿岸部の干し貝柱の作り方については、明治時代から輸出してきた歴史を持つ猿払村の取材記事があるので、こちらも併せてご一読いただきたい。

また、干し貝柱を使う際に大事なことは、戻し汁もすべて料理に使うことである。戻した状態で冷蔵庫に入れておけば、冬で1週間程度、夏場は3~4日は持つので、少し多めに戻しておいて、1週間で何度か干し貝柱を使った料理を楽しむのもいいだろう。おそらく、前ページでご紹介した白菜と干し貝柱の煮込みを食べたら、またすぐ作りたくなってしまうはずだ。

ほかにも大根の干し貝柱でスープをつくるのもおすすめだ。気が向いたらちょっと戻しておいて、自分らしく干し貝柱を料理で楽しんでいただきたい。

▼合わせて読みたい
食材狩人8|うまみの宝石!干し貝柱の作り方-日本最大級の生産地・北海道猿払村を訪ねて


RECIPE&TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)