葱油(ネギ油)は、中国料理の風味を底上げする強力な調味料だ。ごま油が町中華の香りなら、葱油は高級中華の香り付けに欠かせない

野菜や魚料理を品よくまとめるのもうまければ、葱油拌麺(葱油の和えめん)のように庶民的な味も得意とする。辣油やごま油のように場を支配する強さはないが、主役を引き立たせる能力はズバ抜けている。だからこそ、プロ中のプロの厨房で暗躍しているのだ。

例えば、細切りにした野菜をサッとゆで、葱油と塩で和えれば、素材を生かした美しい味わいの凉拌菜ができあがる。

細切りにした野菜をサッとゆで、葱油と塩で和えれば、素材を引き立てた美しい凉拌菜ができあがる。

かたや、醤油と砂糖と葱油でタレをつくり、葱の揚げカス(油葱酥)をトッピングすれば、ガツンとうまい葱油拌麺(葱油の和えめん)もお手のもの。

葱油拌麺(ツォンヨウバンミェン)。葱油を使った、代表的な上海の味覚だ。

そもそも、葱・生姜・大蒜は、中国料理で葱姜蒜(ツォンジァンスァン|cōng jiāng suàn)と略されるほど定番の香味野菜。三種の神器のひとつを油にしているのだから間違いがない。

市販の葱油もあるが、作りたての香りのよさ、ふくよかさは別格。ぜひこの週末、45分間じっくり葱と付き合って、3か月楽しめる中華の最強アイテムを手に入れよう。

ごま油一辺倒から卒業だ!香りを極めた葱油(ネギ油)のレシピ

葱油の作り方はさまざまだが、ここでは中国で主流と思われる、小葱メインのレシピを紹介する。小葱で香り、玉葱で甘み、長葱でキレを加え、香菜の根でさらに香りを引き立てる仕立てだ。

葱油を作るときの甘く香ばしい香りは作った者だけが感じられる特権。それではいってみよう。

材料 ※所要時間約45分
・小葱 1袋(約95g)
・白葱 10cm(約20g)
・玉葱 8分の1(約20g)
・香菜 1本(根つき。約5g)※なくてもよいが、香菜の根がいい仕事をする
・植物油 280g ※材料の2倍の重量

作り方のポイント
小葱をメインに、複数の葱を組み合わせることで、香ばしさや甘みを引き出す。
葱は硬い部分から3回に分けて入れる。
冷たい油から加熱し、葱の風味を弱火でじっくりと引き出す。
1:材料を切る。
左から、①小葱の根元・玉ねぎ・香菜の根 ②小葱の硬い部分(根元の上)・香菜の茎 ③小葱の緑の部分・香菜の葉

小葱は根元の方から順に、7cmくらいに切り分け、白い部分と緑の部分を分ける。
白葱は縦半分に切る。玉ねぎはくし切りにする。
香菜は根の部分とそれ以外に切り分け、茎は7cmくらいに切る。

それぞれの材料は、油に入れる順に、①小葱の根元・玉葱・香菜の根 ②小葱の硬い部分・香菜の茎 ③小葱の緑の部分・香菜の葉 に分けておく。

2:小葱の根元・玉葱・香菜の根を、冷たい油に入れて火にかける。

まず最初に、じっくり火を通しても焦げにくい[小葱の根元・玉葱・香菜の根]を冷たい油に入れて強火にかける。細かい泡が出てきたら弱火にして3分加熱する。

材料を冷たい油に入れる理由は、いきなり熱い油に入れると、風味を抽出する前に材料が焦げ、油に焦げ臭がついてしまうからだ。油を熱する前に材料を入れよう。

3:小葱の硬い部分・香菜の茎を油に加え、弱火で5分加熱する。

次に硬い部位となる[小葱の硬い部分・香菜の茎]を油に入れる。材料が増えることで、細かい泡がたくさん出てくる。火はそのまま弱火をキープだ。

4:小葱の緑の部分・香菜の葉を加え、約30分加熱する。

最後に[小葱の緑の部分・香菜の葉]を加え、引き続き弱火でじっくり加熱する。この30分で、葱という葱からすっかり水分が抜け、油に風味が移す。

小葱の緑の部分を入れてから、およそ15分経過した状態が下の写真だ。

まだまだ葱に水分が残っているのがわかる。ここからさらに15分加熱すると、このように。

最初に入れた小葱の根元や玉葱、香菜の根は焦げずに色づき、小葱の先の部分はほんのり緑色を残しつつも、油の中でカラカラに乾燥した状態になっている。こうなったら、あとは漉すだけだ。

5:葱から水分が抜けたら、ザーレンなどで油を漉す。

別の鍋やボウルの上にザーレンや網を乗せ、油を漉す。大きく葱をカットしているので、一度漉せば細かいカスはあまり出ない。また、サクサクになった葱の揚げカス(油葱酥)は葱油拌麺(ツォンヨウバンミェン)や、豚肉の煮込みの香りづけなどに活用できて合理的だ。葱油拌麺の作り方は、この続編で紹介する。

6:粗熱がとれたら、消毒した瓶などに入れて冷蔵庫に保存する。

小葱で甘く、香り高く。葱油づくりのコツ

なんと美しい色だろう。ほんのり緑がかった、黄金色の香り高き自家製葱油。これからさまざまな料理を格上げする、台所の宝の誕生である。

使い道は幅広く、ゆで鶏のたれ、魚料理の香りづけ、炒めもの(炒菜)、和えもの(凉拌菜)の香り付け、和え麺(拌面)など無限である。

手軽なところではインスタントラーメンの香り付けにもいい。特に「サッポロ一番 塩らーめん」なんてぴったりだ。塩と葱の相性が良すぎる。

さて、葱油を作ったら、香りのよさに誘われて、さっそく料理に使いたくなるはずだ。続編では、身近な野菜でつくる、美しい和えものを紹介する。大さじ1杯の葱油が決め手になる、そんな料理だ。

[続編]中華の香りは葱油でつくる① ビーガンにもおすすめ!葱油で引き出す野菜の品格。素八鮮(旬野菜の精進和え)のレシピ

▼中華の香りは葱油でつくる。自家製葱油シリーズ
まずはここから>葱で香りを極める45分。自家製葱油(ネギ油)の作り方
野菜を美味しく>葱油で引き出す野菜の品格。素八鮮(旬野菜の精進和え)のレシピ
泣く子も黙る!>ド直球のうまさ!至高の即席麺「葱油拌麺(葱油和えそば)」のレシピ
簡単即席肉味噌>葱油香る“あの味”を煮詰めず再現!滷肉飯と焼きビーフンのレシピ


RECIPE & PHOTO & TEXT サトタカ(佐藤貴子)