2015年 香港の旅
80C(ハオチー)スタッフが中国大陸、香港、台湾等で食べてきた料理をご紹介するfacebookページ企画「旅中華」。香港マカオ版のミシュランガイドに、街頭小食部門が新設されたニュースが舞い込んだのと時を同じくして、1泊2日で弾丸香港へ。香港島での小吃三昧をお届けします。
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【西環】【A】叁去壹點心粉麵飯 | 【B】百奇面包西餅 | 【C】英記麺家 |
【D】有記粉麵廠 | 【E】源記甜品專科 | 【F】坤記煲仔小菜
【中環】【G】蛇王芬飯店 【湾仔】【H】香港老上海飯店 | 【I】生果店
【西環】
【A】叁去壹點心粉麵飯 地址:西環薄扶林道11號
●西環のド・ローカルな小吃店は腸粉が大人気!
今回の宿泊地は、MTR(地下鉄)が開設されて間もない西營盤(Sai ying Pun)駅そば、西環エリア。朝イチで到着するなり向かったのは、薄扶林道「叁去壹(Saam Hui Yaat)點心粉麵飯」というド・ローカルな小吃店です。 こちらは香港好きならきっとご存じ「香港毎日ローカル飯」さんにおすすめいただいての訪問。周りを見渡すと、ほぼすべてのテーブルに上がっているのが腸粉(米粉ベースのつるつるした生地に、エビや叉焼などを挟んで巻いたもの)。朝からこんなに腸粉食べる習慣あったっけ?と思うほど、全員が腸粉を頼んでいるではありませんか…! 右に倣えでオーダーすると、作りたての腸粉は、絹のドレープのようにひらひらとして、口にするすると滑らかに消える繊細な食感。一方、タレはいい意味で下世話なこってり味で、これぞ下町の味。 店内は「これから仕事だぜ」という気忙しいおじさま方がササッと食べては出ていく一方で、新聞片手に茶を飲み飲み、まったりと居座る爺様&婆様も。オーダーは腸粉、蝦餃(エビ蒸し餃子)、叉焼包、普洱茶2名分で47香港ドル(752円)。気取らない香港の朝を胃袋で感じ、1日のスタートを切りました。 |
【B】百奇面包西餅 地址:西環正街62號地下
芒果班戟(マンゴーパンケーキ/1パック2個入)HK$14
●香港の街でマンゴーパンケーキをほおばる幸せ
香港の街にはパン屋が多いです。中でも「香港ならでは」と思うのが、芒果班戟(フレッシュマンゴーと生クリームを包んだクレープ)。カスタードパウダーの入った黄色い生地にたっぷりの生クリーム、そして濃いオレンジ色のマンゴー…。パンパンに張ったこの甜品を見たら、買わずにはいられません。 天気がいいのでそのまま外で食べようと、買い食いスポットに選んだのは西營盤(Sai ying Pun)駅にほど近い階段。珈琲を買って木の下に腰を下ろし、坂の上から、西環の街並みと海とを眺めてほおばる芒果班戟。これぞ香港の旅ならでは! |
【C】英記麵家 地址:西環高街32號地下
●そのままでも、スープに入れても!楽しみ方いろいろ、揚げワンタン麺
ゆでた雲呑(ワンタン)入りの麺はよくありますが、炸(揚げる)雲呑麺はあまり見かけないもの。訪れた時、ちょうどワンタンが揚げたてで、オーダーしたら揚げ雲呑と麺とを別々に出してくれました。こうすると、ワンタンそのものでも楽しめますし、スープに浸してもいい。好きなように食べられる自由があります。 雲呑はエビが丸ごと入った、ゴルフボール大の肉団子といった感じ。まずはそのままガブリと齧ってほとばしる肉汁で目が覚め、さらにスープに浮かべ、シナッとなったところをまたガブリ。当たり前といえば当たり前ですが、ワンタン、スープ、麺、それぞれ丁寧に作られたものを合わせたら、そりゃあおいしくないわけがない。歯切れのいい細身の香港麺は最後まで伸びず、スープもしつこくなくて飲み飽きない。こんな一杯が朝ごはんになったら元気が出ますよー。 そしてもう一杯は、牛腩(牛バラ肉)と叉焼を盛り合わせた麺。実はこの店、牛モツ系が推しの店でもあるようで、メニューのトップに来ていたのは牛腩(バラ)、牛什(モツ)、牛肚(ハチノス)でした。 ざっと数えたところ、麺料理だけで16種類、乗せる具のアレンジは多様。これって日本のさぬきうどん店に似ていませんか。ベースの麺とスープはしっかりしつつも、具は自由。そして時々むしょうに食べたくなる…。こうした麺食いができるのも、香港の楽しみのひとつです。 |
【D】有記粉麵廠 地址:西環西營盤第一街83號地下2號舖
上海麵 HK$12
●乾麺もいいけど、生麺もね
西營盤(Sai ying Pun)駅を出て正面にある製麺店。香港土産には干し貝柱や干しエビなどの出汁を練り込んだ乾麺が人気ですが、日本とは違った風土で作られた生麺もまた、旅の思い出を時間を置かずに味わうにはいいものです。 香港なのに上海麺にしたのは、ちょうど目の前に山盛りの上海麺が出ていたため。いわゆる市販の冷凍うどんより細く、そばより太く、断面は丸く、もちっとしており、表面はややざらり。 青菜と一緒にとろっとした老抽(中国醤油の一種)で炒めて焼きそばにするのが定番の食べ方ですが、3分ほどゆでて、一度冷水で締めてから火鍋の〆にしても。水で絞めるともちっとした食感が損なわれず、スープも濁りにくいのでいいですよ。 |
【E】源記甜品專科 地址:西環正街32號地下
●老舗の甜品専門店で、身体に嬉しいヤドリギ茶
「糖水」とは、お汁粉などに代表される、温かい「甘いもん」のこと。この店では、くるみ、杏仁、あずき、蓮の実など、定番の素材を丁寧に下ごしらえして、シンプルでくどくない、やさしい味わいの甜品を提供。夜遅くまで大繁盛の、西環の有名店です。 ここで目を引いたのが、桑寄生茶(ヤドリギ茶/そうきせい茶)。そばにあった新聞記事によると「滋陰降壓」、すなわち陰をうるおす=体液を補って滋養し、血圧を下げる効果があるとのこと。近年、国内の中醫院では、副作用なく血圧を下げたという結果が出ているそうで、他にも腰痛、安胎、肌や髪を艶よくするんだとか。 さっそく桑寄生蓮子茶(蓮の実入り桑寄生茶/32香港ドル=512円)を飲んで見ると、わずかな苦味、そしてコクがあり、すーっと身体に吸い込まれる感じ。加糖による甘さがあり、飲み飽きない味ですね。甘いのですが、お茶を飲まずに楽しめる甘さです。 一方、蓮子杏仁露(蓮の実入り杏仁汁粉/34香港ドル=455円)は、温かく香りのよい杏仁スープに、ほっくり上質な蓮の実入り。お汁粉は甘さも粘度も控えめ。さらっとしていて、食後でもするすると入ります。胡桃やあずきのお汁粉も試したくなりました。 |
【F】坤記煲仔小菜 地址:西環皇后大道西263號和益大廈地下1號舖
●秋冬の香港では必食!土鍋炊き込みごはん「煲仔飯」
香港で秋冬に好まれるのが、生米と具を砂鍋(claypot)で炊き上げ、タレをかけて食べる中華風釜飯こと煲仔飯(ボウジャイファン)。こちらは煲仔飯の超人気店で、煲仔飯だけでなんと25種類!熱々炊き立てが他のテーブルに運ばれて来るのを横目に、待ち切れない気分を味わうのもたまらないものです。 腸詰や干し肉、牛肉、カエル、鶏、鹹魚(ハムユイ=塩漬け発酵干し魚)など、具の組み合わせは様々。その中から、今回は白鱔排骨飯(ウナギとスペアリブ/90香港ドル=1440円)、臘味田雞飯(2種類の腸詰&干し肉+カエル/90香港ドル=1440円)を選んだのですが、どちらも最高! 蓋を取り、湯気とともに立ち上るのは、香ばしいインディカ米の香りと具の芳香。そこに甘じょっぱいタレをかけ、ごはんとともに上下かき混ぜれば、あとは何も考えることはありません。無我夢中で食べるのみ。白鱔排骨飯のウナギは輪切りでふっくら柔らかく、生赤唐辛子がいいアクセント。一方、臘味田雞飯のカエルは至極ぷりぷり、腸詰2種類と干し肉は熟成した香りを放っており、薄切りの生姜がいい仕事してました。 そして「ほぼ食べ終わり」という頃に、さらにまた楽しみがあるんです。それは、土鍋に貼りついたおこげ。米をググっとこそげ取ると、パリパリの煎餅のような食感と、具の旨みとタレが染みた米粒が同時に味わえ、なんとも幸せな気持ちになります。 |
【中環】
【G】蛇王芬飯店 地址:中環閣麟街30號地舖
蛇羹 HK$110
●秋といえば蛇!五蛇羹で滋養強壮 今回香港で絶対食べようと思っていたのが蛇スープ。なぜなら秋は、蛇が肥え、食べごろになる時期だからです。蛇は血行をよくし、滋養強壮に効くと言われているもの。こちらは5種類の蛇を合わせて調理した、伝統的な五蛇羹を提供しています。 しばし待って運ばれてきたのは、なみなみと縁いっぱいに注がれた熱々の一杯。具は細切りの蛇、鮑、鶏肉、生姜、椎茸、きくらげ、魚の浮袋で、それぞれの食材が羹(あつもの)の中でまったりと、混然一体となって調和しています。 そこに絶妙な刺激を与えてくれるのが、小麦粉にやや塩味をつけて揚げた、クリスピーな薄脆(ボクチョイ)と檸檬葉(レモンリーフ)。この檸檬葉が少量でも鮮烈な爽やかさで、慣れるとこれなしでは食べられない、実にくせになる味。 肝心の「蛇の肉はどんな味?」かといいますと、鶏肉より締まっていて淡白です。骨のそばを外した肉にゲジゲジとした形が残っているので、見ればすぐにわかりますよ。蛇にもいろんな食べ方がありますが、この五蛇羹が一番食べやすくて、効き目があるような気がしています。 |
【湾仔】
【H】香港老上海飯店 地址:灣仔謝斐道238號 香港諾富特世紀酒店 地庫1層
揚州炒飯 HK$88
●揚州炒飯、揚州式と広東式はどう違う?
香港で人気の食雑誌『飲食男女』2015年10月1日号に、広東式と揚州式の炒飯の比較が載っていたのですが、揚州の正統派の味として紹介されていたのが「老上海飯店」の揚州炒飯です。 具は金華ハム、鶏肉、川エビ、グリンピース、葱、卵入り。『飲食男女』の提供する動画で見るには「広東人は海のエビを使うが、江南地方の揚州炒飯は川エビを使う。それが瑞々しく滑らかなのだ。金華ハムのみじん切りも味の決め手となる」とのこと(ざっくり訳)。食べてみると、淡味で香りよく、サラッとしていつまでもつついていられる味。味が濃くないので、おかずと一緒に食べてもいけますね。 ちなみに広東式の揚州炒飯を出す店して紹介されていたのが、老舗の「陸羽茶室」。こちらは基圍蝦(車海老系のエビ)、叉焼、葱、卵が主要な具。比較すると、その土地柄が感じられて面白いですね。 |
砂鍋獅子頭(小サイズ) HK$128
●上海料理店では上海風の獅子頭を
「老上海飯店」ではさらにもう一品、揚州料理の定番・砂鍋獅子頭(獅子頭の土鍋煮込み)をオーダー。小サイズですが、普通に4人で鍋ができるサイズの土鍋で登場です。 鍋の中には、普通サイズのレードルにすっぽり収まるサイズの獅子頭がでかでか2個。ちょっとつついたら崩れそうなほどふわふわで、箸を入れれば肉汁がつとーーっと溢れ出てくるのがたまりません。 揚げてから煮込んでいるため、香ばしさがあり、その旨みを広東白菜が吸っているのがまたおいしい。煮込んだソースの色は濃い目ですが、口にすれば味は濃くなく、野菜がたっぷり入っていることもあり、さらっとしていて飲める味付け。肉と野菜、両方しっかり食べられるのが嬉しい獅子頭でした。 |
【I】湾仔の生果店 地址:灣仔道
紅肉蜜柚(チャンドラポメロ) HK$25
●湾仔の市場で、日本では珍しい柑橘を発見!
夕暮れ時の香港の市場は、夕日の赤さと店の灯りとで、なんとも風情があるものです。立ち寄ってみると、この日はどの八百屋でも紅肉蜜柚(チャンドラポメロ)を1個25ドル(400円)で大売り出し中。 こちらは福建省からやってきた有機栽培のものだそうで、直径は17~18cmほど。注文すると、包丁でヘタから3~4cmほどダンと斬り落とし、切れ目を入れて皮をむいた状態で渡してくれます(もちろん丸のまま買っても無問題)。あまりに勢いよく売って、それが売れているので、勢いで買ってしまったのですが、まあこれが重たいのなんの。 ポメロは人気の香港スイーツ、楊枝甘露(ヨンジーガムロー)の材料としても使われています。果物そのものは酸味がなく、穏やかな甘味。シーズンをちょっと外しているからか、思いのほか間が抜けているようにも思いましたが、プリッと粒だった食感はポメロならでは。日本にそのまま持ち帰れない果実だからこそ、香港で食べ甲斐もあるものです。 |
※日本円は1ドル16円(2015年11月8日のレート)で換算しています。