晴れた空に、空気がピリッと冷たい今日このごろ。そろそろ、いぶし銀の中国北方の料理を味わいに行きませんか。
お酒のアテにちょうどいい、鹵水(ルーシュイ:主に内臓などを煮るための香辛料入り調味液)で煮たアヒルや羊の舌、刺激が心地よい白菜の辛子和えを前菜に、冷え込む夜は涮羊肉(シュワンヤンロウ:羊しゃぶしゃぶ)。
小麦粉の生地にゴマを付けて香ばしく焼いた焼餅(シャオビン)を頬張れば、厳しさと素朴さと大らかさが同居する大陸を感じずにはおれません。





外観に惑わされるな!あのベテランシェフのセカンドステージがここに
こちらのお店は「福満苑 鼓楼(グーロウ)」。外観は、東京ならどの街にでもありそうな現地系中華、中に入れば居酒屋風の内観ですが、それは居抜き店舗だから。
腕を振るうオーナーシェフは、昨年秋まで赤坂の一軒家中華『白碗竹快樓』で料理長を務めていた白石淳さん。ここでは中国北方の味を中心に、本格的な中国料理を気取らない雰囲気で味わうことができます。

日本では今ここだけ。中国のナパバレー・寧夏からワインを独自に仕入れ
そんな店で、最も驚いたのがワイン。ドリンクメニューの中で、最も存在感を放っているのが「シャトー・バッカス(Chateau Bacchus)」です。
聞けば、中国の西北部、寧夏回族自治区でこのワインと出合い、「これはぜひ広めたい」と白石シェフが一念発起。寧夏といえば、今や「中国のナパバレー」とも呼ばれる注目の産地。何度も現地に足を運び、自ら商社に話をつけ、輸入に漕ぎ着けたという肝入りの3本がここに。

最近の中国のワイナリーは、フランス人の指導のもと、二人三脚でワインを創り上げるところも少なくありませんが、こちらもフランスはドルドーニュ(Dordogne)のシャトー・モンバジャック(Chateau Monbazillac)の生産者がサポートに入って作り上げたもの。
上質な中国ワインは、中国料理に合わせることも前提としているからか、赤ワインでも料理に覆い被さることなく、寄り添って料理とともに楽しめる印象。白ワインが1本8,000円~となりますが、お好きな方なら、6~7名でシェアする価値は十分あるでしょう。


前菜300円~、ランチは650円。良心的を通り越して料理が安い!
しかし「ワイン、まあまあするなあ…」と思ったあなた。これがなかなかのギャップなのですが、料理はアラカルトで前菜が300円から。つまみになる料理も多く、炒めもの系は600~1,200円という価格帯で非常に良心的…というか、安い!
昼の日替わりランチに至っては650円。お粥セットは手作りの揚げパン、小鉢、デザートもついて550円。近所にあったらありがたいことこの上ないですね。
また、北方の味わいが店のウリではありますが、シェフは横浜中華街にある広東料理での経験も長かったため、叉焼は広東式。麻婆豆腐のような四川料理もあれば、卵トマト炒めのような家庭料理もあり、グランドメニューには定番どころがしっかり並びます。

裏メニューも充実!鹿、熊などおまかせジビエ中華が凄い
さらに実力のあるシェフだからこそできるのが、充実の裏メニュー展開。特に冬場は、鹿、熊、イノシシなどの野味(ジビエ)の調理を得意とされており、イノシシは叉焼で、ツキノワグマは煮込みや串焼きで…と、さまざまな料理で味わえるという贅沢が。
また、定番の涮羊肉(シュワンヤンロウ:北京式羊しゃぶしゃぶ)も、仕入れ状況によってはツキノワグマや蝦夷鹿の追加ができます。


つまるところ、食いしん坊がわざわざ行くなら(といっても池袋の隣、駅近です)、夜、皆で連れ立って行き、あれこれ試してみるのが一番です。今の季節ならご予約の上、銅鍋で北京式しゃぶしゃぶ+ジビエ中華+寧夏ワインがおすすめ。他ではなかなか開けない宴会になること請け合いですよ。
福満苑 鼓楼 (フクマンエン グーロウ)
住所:東京都豊島区要町1-14-9(MAP)
アクセス:東京メトロ要町駅から徒歩3分
電話:03-5966-6661
ランチ:11:30~15:00 ディナー17:30~23:00(22:30L.O.)
定休日:水曜
text & photo 佐藤貴子(サトタカ)