「老辺餃子舘」。その名前は、餃子好きならご存知の方が多いことでしょう。遼寧省瀋陽にて1829年に創業した中華老字号(中国政府が認定した老舗企業)です。

制作精細(ひとつひとつ丁寧な作り)、皮薄肚飽(薄めでふっくらした皮)、柔軟肉頭(柔らかな肉)、口味鮮醇(ジューシーで旨い味わい)、濃郁不膩(濃厚ながらも脂っこくない)。こうした数々の賛辞が並び、多くの人々に愛されてきた老辺餃子。

そんな瀋陽の名店「老辺餃子舘」の技を継承し、丁寧に作られた餃子を、ここ日本でも楽しめるのです! それが、今回紹介する「鴻福餃子酒場」です。

「鴻福餃子酒場」外観。場所は鶯谷駅、入谷駅からも徒歩圏内の東京都台東区根岸。

「老辺餃子舘」とのつながりは、店主・呉昌明さんの瀋陽での料理人時代。呉さんが「北都酒店」に勤め始めたとき、師匠となったのが「老辺餃子舘」で10年ほど腕をふるっていた料理人でした。

そこで老辺餃子の技をみっちり叩き込んでもらった呉さん。来日後、いくつかの中華料理店で経験を積んだのち、2010年に「鴻福餃子酒場」を開業。

当初は呉さん自身が厨房に入っていましたが、店舗が増えて経営にまわった今は、呉さんから技術を受け継いだ厨房スタッフが餃子づくりを担います。2021年3月には、店の奥にある座敷個室を改装し、新しい餃子工房が誕生。中ではスタッフが寸暇を惜しむようにコツコツと餃子を包んでいました。

大盛りも瞬殺の予感!たまご・エビ・ニラの三鮮水餃子が一番人気

ランチタイムは、さまざまな餃子が選べる「餃子セット」に、日替わりを含む「鴻福定食」、麺類やチャーハンなどを提供。写真は「黒和豚肉使用 水餃子セット」に「豚肉焼餃子(3個)」を追加したもの。メインとなる水餃子は並盛8個。大盛12個も選べます。

「黒和豚肉使用 水餃子セット 並盛(8個)」と、追加で「豚肉焼餃子(3個)」(写真奥)。定食はライス、スープ、小菜、漬物付き。この日はデザートの杏仁豆腐もセットに。

水餃子の餡は「三鮮(たまご・エビ・ニラ)」。店員さんによると、豊富な餃子ラインナップの中で「三鮮」が一番人気だそう。たまごのフワッとした軽やかさと、エビのプリッとした力強い食感がやみつきに。これは大盛でもペロリと完食できたのでは!? と思ってしまうほど!

追加した焼き餃子は、キャベツや生姜などの野菜と豚肉がみっしり詰まってボリューミー。皮のもっちり感に加え、カリッと焼き付けた面もまた旨い!

「豚肉焼餃子(3個)」。ランチセットにプラス200円で追加できます。

現地の人から見れば、餃子の定食は“主食(餃子)+主食(米)”という不思議なスタイル。中国人の友人から驚きのツッコミを受けることもありますが、やはり美味しい餃子はごはんもすすんでしまいますね。

ディナーの主役は裏メニュー!? 4種4色多彩な餡に注目!

一方、ディナータイムのおすすめは、実は…メニューに載っていない餃子です。注文は「彩色餃子(cǎi sè jiǎo zǐ|ツァイスァジャオズー)」、もしくはこの記事の写真を見せたら一目瞭然!

「彩色餃子」980円。餡と皮色の組み合わせは、訪問時のもの。内容は時折変更しています。

私がこの存在を知ったのは、今年1月に店を訪れた人のwechat投稿がきっかけ。その写真を見せて「これはありますか?」と注文したら、この「彩色餃子」がでてきたのです。

内容は4種類の餡が2個ずつ、計8個入り。目にも舌にも鮮やか、餡はそれぞれの具材の味がジュワリと口中に広がる海鮮がベース。餡と皮の色の組み合わせは取材時のものですが、この日は以下の通り。

【黒】フカヒレ(豚肉・フカヒレ|皮色:イカ墨)
【緑】ナマコ(イカ・ホタテ・エビ・ナマコ|皮色:ほうれん草)
【黄】カニ(豚肉・カニ・カニ卵|皮色:ニンジン)
【紫】干し貝柱(豚肉・干し貝柱・卵|皮色:紫キャベツ)

「調理方法はどうしますか?」と尋ねられたら、蒸し、ゆで、焼き、お好みで注文OK。店員さんのオススメは蒸し餃子。しかしなぜ、こんな素敵な餃子がメニューに載っていないのでしょう?

尋ねてみると、日本人には焼き餃子が圧倒的な人気。さらに海鮮餡にあまりなじみがなく、知らない人が多いであろうということから、“表”メニューでの提供を控え“裏”メニュー状態なのだとか。日本在住の中国人には人気だそうで、ぜひレギュラー昇格してほしい逸品です。

彩色餃子より、豚肉・カニ・カニ卵の餃子。

もうひとつ、日本的なおいしさを感じる「しそ焼き餃子」もおすすめ。こちらはしその葉入りの肉餡と皮の間に、さらにまるまる1枚しその葉が。ダブルのしそ効果で、噛むとみしっと詰まったボリューム感を忘れるほどの爽やかな味わい。これまたクセになりそうです。

「しそ焼餃子」。イートインのみの提供です。

さらに夜は一品料理メニューも揃います。それらもつまみつつ、いろいろな餃子を味わうもよし、ひたすら餃子に向き合うもよし!

陳醋菠菜花生米(ほうれん草とピーナッツの黒酢和え)

卓上調味料は酢、ラー油、醤油、自家製の「ニンニク辛子味噌ダレ」が常設。黒酢は店員さんへお願いすると持ってきてくれますので、水餃子と蒸し餃子のときはぜひリクエストしましょう!

卓上にある「ニンニク辛子味噌ダレ」。

お持ち帰り&お取り寄せOK!手づくり餃子を気軽に楽しもう!

イートインだけでなく、店の入り口すぐに設置された冷凍庫には、さまざまな餡の餃子がズラリ! 包んで急速冷凍したものを販売しています。

冷凍餃子は1袋20個入りが基本。いろんな餡が選べます。お持ち帰りを狙う場合は、保冷バッグを持参しましょう。

さきほどの「ニンニク辛子味噌ダレ」や、特製「餃子のタレ」も200円で販売中。餃子のタレは、卓上常備の酢・醤油・ラー油を調合したもの、味噌ダレは、豆板醤・ラー油・ニンニクを合わせたもの。「ニンニク辛子味噌ダレ」は、ご飯の友にもよさそうな感じです。

さらに同店はネットショップ(楽天市場Yahoo!ショッピングも開設。冒頭で「老辺餃子舘」ゆかりの餃子を、“東京でも”ではなく“日本でも”食べられると記したのは、全国の皆さんにお楽しみいただける、ネットショップがあるからです。

店おすすめの「彩色餃子」は、各色単品、または3袋以上で購入できる4色1袋入りを販売中(楽天市場限定販売)。発送はクール便(冷凍)。調理は、“ゆで(水餃子)”をはじめ、“蒸し”でも“焼き”でもお好みで! 野菜と一緒にゆでたり蒸してもよいですね。

お近くの方のみならず、全国の皆さんに味わっていただける体制万全。お店でもおうちでも、遼寧省瀋陽を旅するように餃子を頬張りましょう!


鴻福餃子酒場
東京都台東区根岸3-7-18(MAP
TEL 03-3876-5377
営業時間 11:00-15:00 17:00-20:00(19:45 L.O.)
定休日なし


text & photo :アイチー(愛吃)
中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。中華料理にまつわるコーディネート、アドバイス、監修などを行う。一つの「食」を愛し、味も知識も徹底的に極めた「偏愛フーディスト」がプロデュースする期間限定レストラン『偏愛食堂』中華料理担当として、多彩な中華地方菜の楽しさを伝える。