JR山手線鶯谷駅。降りたことがない方には、ホームから見るラブホ街のネオンのイメージが強いかもしれません。しかしこの界隈は、歩くほどに東京の多様性が感じられるエリア。駅の南側は天台宗の関東総本山・寛永寺がどんと構えており、北側は少し歩くと閑静な住宅地です。

俳人・正岡子規が暮らした「子規庵」や、「新宿中村屋」、日本酒の「真澄」などのラベルの字を書いた書家であり洋画家・中村不折が収集した書が展示される「書道博物館」といった通好みの文化施設もあれば、朝6時から営業する都内最大級のビル型銭湯「萩の湯」、24時間営業の「サウナセンター」など、ととのう場もしっかり。

中華に関心の高い方なら、以前80C(ハオチー)でもご紹介した「鴻福餃子酒場」や「台湾料理 小吃 龍一吟(ロンイーギン)」、窯焼き叉焼の持ち帰り専門店「焼豚の大井川」なども気になるところです。

そんな鶯谷エリアを歩いていると、根岸の住宅街に突如現れるのが「ヴィーガン餃子 優(YU)」。店の前にはウッドデッキがあり、解放感のある気持ちいいカフェ的な空間が印象的です。

その店内で出しているフードメニューが、なんと生地から手づくりのヴィーガン餃子。いったいどうしてこんな店ができたのでしょうか?

「ヴィーガン餃子 優(YU)」外観。「菩提小厨」とは精進料理の小さな厨房という意味合いですね。住宅街の路地裏に、スコンと抜けた気持ちよい空間です。
店内はカウンター席にテーブルが2つ。晴れた日はデッキに椅子でも楽しめそう。ゆったりとした空間です。
随所にあるグリーンが、のびやかな雰囲気を醸し出しています。

ヴィーガン歴15年!南京出身の女性がつくる、11種類のヴィーガン餃子とは?

店のオーナーで、ヴィーガン餃子を作っている近藤優さんに話を聞くと、ご自身のヴィーガン歴は15年。旦那様はさらに長く30年だそうで「もともとこの餃子は、自分が食べたくて作り始めた」のだそうです。

出身は中国南京。しかし、中国生まれだからといって、誰でも餃子を作っているわけではありません。「ヴィーガン料理は前から作っていましたが、これまで餃子は作ったことがなかったので、動画を見たり、知人に教わったりして学んだんです」。

結果、独学で自分が食べたいヴィーガン餃子を作れるようになった近藤さん。驚いたのは、餡の種類の豊富なこと。 ピーマン、にんにく、キムチ、しいたけ、にら、セロリ、ねぎ、茄子、生姜、コリアンダー(香菜|パクチー)、さらに棗餡が入った甘い餃子もあり、ラインナップは全11種類!

食べてみると、大豆ミートをベースに、主材料となる野菜を加え、餡によって春雨や米などの副材料を加えることで一体感を出している創意工夫が素晴らしいのです。

ヴィーガン餃子は全11種類。写真に12個あるのはシイタケが2つあるため。

例えば、しいたけ餃子は大豆ミート、白菜、黒きくらげ、にんじんなどが入り、餃子の生地でしいたけの炒め煮を包んだような滋味深い味わい。

ピーマン餃子は大豆ミートに春雨が加わり、ピーマン本来の香りも残した仕上がりです。また、茄子は日本人にもなじみのある味噌と自家製の辣油を使い、ピリ辛でこっくりとした味付けが魅力。それぞれに個性があり、ひとつひとつ食べる楽しさがあります。

しいたけ餃子。炒め煮を包んだような雰囲気で、餡はみっちり入っています。持ち帰りを撮影。
ねぎ餃子。加熱されたネギの甘みがしっかり。持ち帰りを撮影。
キムチ餃子。完全におかずになる味です。持ち帰りを撮影。
棗餡とクルミが入った甜餃子。一般的な中華餡と異なり、油を感じさせません。持ち帰りを撮影。

一般的に餃子の餡というと、豚肉が主体のイメージがありますが、どの餃子も動物性食材が入っていないことを忘れさせるくらい味わいが豊か。もちろん化学調味料の類は不使用。油はオリーブオイルが主体で、ごま油を用いるのは一部の餃子のみ。

味付けはしっかりされていますが、素材の風味がわかり、餃子というよりも新しい小吃(軽食)を味わっているような感覚もあります。これは中国東北地方が名物の餃子(jiǎozi:ジャオズ)とはまったく異なる世界…!ちなみに現在は欧米人のお客さんが多いのだとか。

調理法は、蒸し、ゆで、焼き。今回は餃子の生地と餡がシンプルに味わえるよう、蒸し調理をお願いしました。生地はかなりもっちりとした食感です。ゆでたり、焼いたりすると、また違った食感と香りが楽しめそうですね。

どの餃子もつけだれなしで味わえる塩梅に整えており、1個あたりの重さは28~30g。しっかり食べごたえもあります。

また、店内で楽しめるドリンクは、クラフトビール、コーヒー、お茶。クラフトビールはタップマルシェが置いてあり、『FAR YEAST 東京IPA』や『インドの青鬼』、SPRING VALLEY BREWERYのタップが用意されています。バリエーションが多いのはコーヒー。餃子とノンアルを合わせるなら、ジャスミン茶や緑茶ですね。

タップマルシェが設置されています。

食べるたびに盛り上がる!持ち帰りや通販もやってます

すべての餃子はお持ち帰りOK。注文は5個以上からですが、おすすめは全種類楽しめる11個入の1,330円(税込)。店でも11個いただきましたが、家でも同様に「この色の味はなんだろう?」と、ひとつひとつ食べるたびに盛り上がれます。

ともかく新鮮な体験だったので「80C(ハオチー)でご紹介していいですか?」と確認したら、「もちろんぜひぜひ!でもこれ中国料理じゃないよ!」おっしゃった近藤さん。たしかに中国の視点なら「中国料理じゃない」というのも理解できるところがあり、率直で誠実だと感じました。

しかし餃子としてユニークで、ヘルシーで、手づくりで材料にこだわりもあり、求めている人に届いたらきっと喜んでいただけるはず。しっかり食べた満足感を得ながら、食後は胃が軽やかで、ランチのあとに眠くてしょうがない…といったこともなさそうです。遠方の方は通販もありますので、気になる方は試してみてはいかがでしょう。

カラフルな見た目にも気分が上がります。

ヴィーガン餃子 優(YU)

東京都台東区根岸3-11-17陽光ビル1F(MAP
アクセス JR鶯谷駅から徒歩約4分
TEL 03-3871-7017
営業時間 10:00-22:00(2022年1月21日~2月13日までは~20:00)
※緊急事態宣言期間中およびまん延防止等重点措置がとられている期間は、営業日や営業時間に変更がある場合があります。また、酒類の提供も停止されることがあります。最新の情報は店に直接お問い合わせください。
水曜定休
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TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)