江蘇省の省都・南京名物といえば湯包(汤包:タンバオ)。それを日本で食べることができる貴重な店『王氏湯包』が、2022年4月27日、池袋駅西口エリアに移転オープンを果たしました。
生地の中に肉餡とスープがたっぷり入った南京の湯包は、小籠包と似ているものの、味も見た目も異なるもの。詳しくは初出記事(2020年3月)でおさらいしていただくとして、この店では、南京の人気店『徐建萍湯包』で修行した麺点師・王建東さんが包む、本場の湯包が味わえるのです。
現在は、東長崎にあった頃からのファンや、情報を聞きつけた南京出身者など、首を長くして再スタートを待ちわびた人たちが駆けつけ、賑わいを見せています。もちろん、王さんが湯包をひたすら包み続ける手も止まりません!
特色は甘~いスープ。懐かしいか、驚きの味かは貴方次第!
そんな南京湯包といえば、甘〜いスープが特徴です。ちょうど近くの席で、南京人(中国東方)と山東人(中国北方)と思しき2人の会話が繰り広げられていたのですが、
「うわぁ懐かしい!久しぶりだなぁ!」
「うわぁこういう味は初めてだなぁ。山東ではこういうの食べたことがなかったなぁ」
と南京人の歓喜の声に対し、驚きを隠せぬ山東人の呟きが耳に飛び込んできました。
反応の対比から、地方による食文化の違いを感じ取れるのは興味深いものですね。恐らく、台湾や上海の小籠包の味に慣れた日本人にも、湯包は新鮮に感じられる方が多いかもしれません。
メニューには単品からセットまでいろいろありますが、南京名物が満喫できるのは「3点セット(三点套餐)」。王氏湯包(1蒸籠に6個)、鴨血粉絲湯(1杯)、糯米焼売(1個)の組み合わせで、『王氏湯包』の代表的な味わいを一気に楽しめます。さっそく内容をご紹介していきましょう。
軽軽移、慢慢提、先開窓、後喝湯!作法通りに食べれば美味極まる!
まず、店名にもなっている湯包(汤包:タンバオ)は、蒸籠で蒸したてが運ばれてきます。目の前で蓋を開けてくれるので、熱々のスープで火傷せぬよう気をつけつつ、ホカホカのうちにいただくのが美味のポイント!
初出記事でもご紹介しましたが、湯包の食べ方は「軽軽移、慢慢提、先開窓、後喝湯(轻轻移,慢慢提,先开窗,后喝汤)」。蒸籠からそ~っとレンゲに移し、ゆ~っくり持ち上げ、レンゲの上でまず皮に少〜し穴を開けてから、スープを飲みます。
ちょこんと箸先で穴を開けるだけでジュワッとスープが溢れ出すので、こぼさぬよう気をつけて。好みで卓上の黒酢を少しつけるのもオススメですよ。提供時に、蒸籠と一緒に黒酢用の小皿も添えられます。
湯包伴侶!鴨血粉絲湯はアヒルの都・南京の定番スープ
続いては、アヒルの血をプリン状に固めた鴨血と春雨のスープ・鴨血粉絲湯(鸭血粉丝汤:ヤーシュェフェンスータン)。スープはアヒルを煮込んだもので、とても優しく澄んだ味わい。好みで卓上の辣油を加えていただきます。
こちらも“金陵一絶(南京随一)”として親しまれる、南京の軽食の代表格。王建東さんの修行先『徐建萍湯包』でも、湯包伴侶(汤包伴侣:タンバオのお供)として、マストな組み合わせとして食べられているスープです。
ちなみに南京は“鴨都(アヒルの都)”の呼び名もあるほどで、
「三天不吃鴨,走路要打滑」(3日もアヒルを食べなかったら、足元おぼつかなく転けちゃう)
「没有一只鴨子能活着游出南京」(南京から生きて飛び立てるアヒルなんて一羽もいない)
といった慣用句も。アヒルの頭からお尻、そして血までも、余すことなく味わい尽くす食文化があり、この小吃もまた“アヒル愛”のひとつのかたちといえるでしょう。
具はサイコロ型にカットした鴨血のほか、粉絲(春雨)、油豆腐(油揚げ)、別皿で香菜(パクチー)が基本形。それぞれの具材は増量でき、さらにオプションで鴨肝(アヒルのレバー)、鴨腸(アヒルの腸)も追加できます。豊かな食感を楽しみながら“鴨都南京”をより深く体感するのもオススメです。
鴨血のスルンとした滑らかさ、鴨肝のフワリとした柔らかさ、鴨腸のシャクっとした歯切れのよさに、春雨のツルリとした喉越しも加わる、食感豊かな一杯。クセになるかもしれませんよ。
米のうまみがにじみ出る!ビッグサイズの糯米焼売
糯米焼売は、以前に増してさらに大きくなったような…!? そう感じたのは気のせいかもしれませんが、相変わらずのビッグサイズ!
プルッと薄めの皮に詰まった糯米の粒立ちがよく、噛み締めるとチャーシューと米の旨みがにじみ出ます。こちらは1個ですが食べ応え十分です。
こうして南京味道(南京の味)3点が勢揃い、内容もボリュームも充実のセットを堪能!
ですがもちろん、セットだけがおすすめではありません。周りを見渡すと、湯包を複数購入し湯包三昧に浸る人もあり、鴨血粉絲湯やエビワンタンをひとり一碗ずつ頼み、湯包や糯米焼売をシェアする人もあり。好きなように、気軽に楽しめるのが小吃のいいところです。
店名は、以前の『金陵一絶 王氏湯包』から『王氏湯包』へとシンプルになりましたが、料理には“金陵一絶(南京随一)”がしっかり残っています。場所は池袋駅西口を出てすぐ、以前よりもぐっとアクセス良好に。おそらく日本でここだけ!? の南京味道体験を!
王氏湯包
東京都豊島区西池袋1丁目35-1カドビル2階(MAP)
TEL 080-4190-7317
営業時間:ランチ11:00-15:00 ディナー17:00-21:00
月曜定休
メニュー
3点セット(王氏湯包+鴨血粉絲湯+糯米焼売1個)2,000円
王氏湯包 6個 800円
鴨血粉絲湯(鴨の血と春雨スープ) 1,000円
鴨血粉絲湯の追加トッピング
鴨血・鴨肝(レバー)・粉絲(春雨)各200円
鴨腸300円
油豆腐(油揚げ)・香菜・味玉各100円
糯米焼売 3個 600円
蝦仁餛飩(エビワンタンスープ) 800円
南京烤鴨 南京ダック(胸/腿)1,500円(現在未提供ですが予定あり)
text & photo :アイチー(愛吃)
『中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。中華料理にまつわるコーディネート、アドバイス、監修などを行う。一つの「食」を愛し、味も知識も徹底的に極めた「偏愛フーディスト」がプロデュースする期間限定レストラン『偏愛食堂』中華料理担当として、多彩な中華地方菜の楽しさを伝えている。