もくじ
1 ビーフンと呼べるのは米粉でつくるビーフンだけ!
2 練って練って押しまくる!ビーフンの生地づくり
3 目から鱗!蒸したての生ビーフンの味とは?
RECIPE:美味しくて手軽!ビーフンのかんたんレシピ
ここまで約4時間の作業を経て(米の浸し時間を除く)、ついにビーフンらしい見た目になったお米の粉。
これをそのまま天日干しにすればビーフンのできあがり…! そう言いたいところですが、さらに大事なもう一工程が残されていました。それは再度、この麺を蒸し上げる作業です。
というのも、最初に米を練るために蒸したのは三分蒸し。つまり、現時点では生米の状態が七割のため、今度は中まで加熱しなければならないというわけ。押し出した麺がくっつかないうちに、タワー型の蒸し器に手早く入れて、麺を一気に蒸し上げるのは、未来の四代目の仕事です。
昨年までは、杉材で自作した蒸篭で蒸していたそう。
ここから麺を取り出したら、再び一家総出の力仕事。扇風機で強風を送りながら、熱々の龍の髭のような麺を一気に広げて伸ばす伸ばす!
蒸したてのビーフンからもうもうと湯気が上がるため、ご主人も奥様も作業中は汗だく。しかし、これを一気呵成にやらないと、軟らかで水気の多いビーフンがくっついてしまい、さらには乾燥して固まってしまうため、一秒たりとも休むことはできません。
この作業が終わったら、そのままビーフンをハサミでカット。食べるのに適した長さにあらかじめ切ってから、小さくまとめて天日干し作業に入ります。
途中、お邪魔してできたてのビーフンを口にしてみると、これが想像以上にむっちりとした弾力。しっかりとしたお米の味が口に広がり、ビーフン独特のコシも感じられます。
まさか、これが米と水だけでできているんなんて…。塩も砂糖もつなぎも一切入っていない、混じり気のないビーフンは、クセがなく、ついついつまみ食いが止まらない、後を引くうまさでした!
ちなみに朝が早かったということで、奥様がこの生ビーフンを使った餡かけビーフンを朝ごはんにご馳走してくれました。
カップの中は生ビーフンに若干のスープをかけ、豚肉、揚げネギ、香菜と甘じょっぱいたれをかけたもので、ひと口すすればまさに台湾の味! ビーフンは意外に汁気を吸わないので、さっぱり、するっと食べられます。
お母さん曰く、「市販しているビーフンは胃もたれする人もいるらしいんだけど、うちの米粉100%のビーフンだと胃もたれしないから、って買っていく常連さんがいるのよ」とか。
奥様がスクーターで近所の名もなき屋台から買ってきてくれた一杯。
また、日本ではなじみがありませんが、台湾ではこの生ビーフンの状態で仕入れる店もあるそうで、カットされたビーフンはひもで結ばれ、乾燥しないよう布をかけて、この後竹東の市場へ。
そして残りは、この地に伝わる「三分日曬・七分風乾」という言葉通り、三割が天日、七割が風に晒されることで上質な新竹米粉に。
「1日250kgの生米を仕込んで、できあがるのは20kg。でもそれで十分。これからも100%お米から作ること、家族みんなでやること。この2つだけは絶対に変えません」。
そう語る郭さんの目には、新竹に100年伝わる伝統の味を担ってきた誇り、そしてこれからも継承していく意志が光っていたのでした。
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取材・文・撮影 佐藤貴子/ことばデザイン