[第1話]JANU東京「虎景軒」―水分たっぷりの豆腐をどうやって「海鮮風炒飯」に?

再現された「海鮮風炒飯」
第1話|JANU東京「虎景軒」|水分たっぷりの豆腐をどうやって「海鮮風炒飯」に?
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日本一の中国料理店と評される「五番町飯店」。そこでジャンが初めて作った料理が「海鮮風炒飯」である。再現を担当したのは、JANU東京 虎景軒(フージン)の山口祐介シェフだ。

山口シェフは「高校時代、『週刊少年チャンピオン』を自転車のハンドルの上置いて読みながらアルバイトに向かってました」というリアルタイム読者(よい子は真似しないでください)。

振り返れば、原作監修者の小山さんを私に紹介してくれたのも山口シェフであり、安定感のある鍋振りの姿勢も抜群に美しい。依頼すると即「2つの鍋のジャックルで豆腐の水分は飛ばせません(笑)」と言われたが、一発目はこの方をおいて他になかった。

山口祐介シェフ。80Cでは「山口祐介の江南食巡り」と題して、浙江省台州市滞在中から料理人目線の食文化記事を連載中。

再現する「海鮮風炒飯」の具のメインは、豆腐と干し貝柱。漫画には描かれていないが、干し貝柱は水で戻して軟らかくしてから、料理に使うのが基本である。

戻した後は、スープや煮込み料理などに“うまみ”を加える食材として重宝するが、「実はうまみの塊である干し貝柱をたっぷり使っても、豆腐にわかりやすく風味がつくわけではないんですよ」と山口シェフ。

たっぷりの干し貝柱。戻してから使うのが基本。

そこで再現する炒飯には、想像以上にたっぷりの干し貝柱をほぐし、水切りした豆腐にその戻し汁を一晩吸わせてうまみを増幅させるという手法をとった。

水切りした豆腐に再び貝柱の戻し汁を吸わせる。この仕込みに一晩かかる。

その豆腐を角切りにし、油でカラリと香ばしく揚げたら、うまみを蓄え、軽やかなクルトンのようになった豆腐のできあがり。これをごはんと炒め合わせると、ふんわりと軽やかな一皿ができあがる。

右が干し貝柱の戻し汁。水切りした豆腐にこのうまみの素を吸わせ、軽やかに豆腐を揚げた(左)。油っぽさは皆無。
海鮮風炒飯は西条先生のアイデアだった。たしかに、小山さんなら紅ショウガや金糸卵は付けなそうだ

口にすると、米、葱、豆腐、卵のすべてがふわりと軽やかだ。鉄鍋で焼けた葱の香ばしい香りと、サクッとしてうまみを蓄えた豆腐が、口の中でパラリとほどける。そのたびに香りが膨らむ。

さらに、試食時には「原作にはないけど、「上湯(シャンタン)に散らしたらクルトンのようになるかと思って」と干し貝柱のうまみを吸った揚げ豆腐入りスープも添えられた。

上湯とは、老鶏や金華ハム、大棗など複数の動植物および加工品のうまみを抽出した上質なスープのこと。そりゃもう、おいしくないわけがない。

店のスープに、干し貝柱汁を吸わせた揚げた豆腐をクルトンのように浮かせた撮影特製賄い。漫画には登場しない、極上のセットメニューだ

ちなみに北海道オホーツク海の干し貝柱は、香港でも高く取引される高級食材。最も廉価な割れ欠け品でさえ、日本の小売価格で100g2,200円~4,000円ほどだ。

仕上げに錦糸卵と紅ショウガを添え、親しみやすい町中華テイストに見えて、実は1皿に60gも干し貝柱を使った高級炒飯だったのである。

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