[第4話]なかの中華!Sai―1周回って新しい!XO醤炒めと中華風シャリアピンステーキの衝撃

第1話|JANU東京「虎景軒」|水分たっぷりの豆腐をどうやって「海鮮風炒飯」に?
第2話|南方中華料理 南三|君は羊の脳みそ派?それとも6種類の卵入り?ジャン的「蒸蛋(中華ちゃわん蒸し)」の世界
第3話|神田 雲林|じいちゃんの魔法は王道の技法!紅焼鹿筋(鹿のアキレス腱の醤油煮込み)で乾物の水戻しと油戻しを食べ比べる
第4話|なかの中華!Sai|1周回って新しい!XO醤炒めと中華風シャリアピンステーキの衝撃

ガチ中華に光が当たるにつれ、日本でなじみのある中国料理が、日本らしく独自性のあるものとして、以前より際立つようになっている。日式中華なんていう言葉も耳にするようになり久しい。

そんな日本ならではのオリジナリティを感じるのが、第4話に登場する「中華風シャリアピンステーキ」だ。

なかの中華!Saiで再現された中華風シャリアピンステーキ

シャリアピンステーキは、帝国ホテルで1936年に誕生した名物料理である。きっかけは、ソビエト(現在のロシア)の声楽家、フョードル・シャリアピンが来日公演で滞在した際、「やわらかいステーキを食べたい」とリクエストしたこと。

そこで当時のレストラン「ニューグリル」のシェフが“すきやき”に着想を得て、牛肉を叩いて薄く伸ばし、みじん切りの玉ねぎを丹念に炒めて載せたステーキを提供。それをシャリアピンが大層気に入ったことから、帝国ホテルの名物メニューになったのは有名な話だ。

日本橋高島屋の特別食堂では、帝国ホテルのシャリアピンステーキが食べられる

この“日本式洋食”を中華風に調味し、中華風に香り付けをしたのが、『鉄鍋のジャン!』に登場する「中華風シャリアピンステーキ」である。

味の決め手はXO醤(エックスオージャン)。今ではスーパーでも売っている調味料だが、当時はまだ珍しく、世界に中華料理のトレンドを発信していた香港発の調味料として、日本の中華業界では眩しい存在だったのだ。

そこでジャンは「XO醤のリュウ」と呼ばれる刺客に、「料理人なら自分専用のXO醤を持っていて当然だ」と、自作の“肉専用XO醤”で対決を挑む。

そんな2種のXO醤を使い、ジャンとリュウの料理を再現してくれたのは、「なかの中華!Sai」の宮田俊介オーナーシェフだ。宮田シェフもまた生粋の原作ファン(使い方がおかしいがご容赦願いたい)。「辻調理師専門学校」での講師経験もあるため、調理の解説も明快でわかりやすい。

宮田シェフにはいろんな料理のみならず、調理音の収録にも全面的にご協力いただいた

漫画から料理に起こす際、見た目は漫画通り、プロセスは漫画に書いてあれば基本的には踏襲するが、微妙にわからないものもある。

ゆえに、料理監修の際は、料理人とさまざまなやりとりを経て最終形を決めているが、宮田シェフの掘り下げは一段と深かった。

「牛ヒレ肉と竹の葉に合わせるので、今回はなるべく海鮮系の食材は減らしてXO醤を作ろうと思ってます。多分香りがかち合うかな?と思うので、油葱酥(※1)、エシャロット、ニンニク、乾燥茸などで作れたらいいですね。

まず、飴色玉ねぎを作って、別でマッシュルームとエリンギ、エシャロットでデュクセルを作って、玉ねぎと合わせて、赤ワイン入れて油葱酥入れて、アルコール飛ばして煮詰めて、更にスープ入れて油葱酥が完全に煮溶ける様にして水分飛ばして、ざらめ、醤油、塩で味を調えます。

多分油葱酥を煮溶かさず、油の中でそれぞれの具材が見えるようにした方がXO醤っぽい仕上がりになるとは思ったんですが、スプーンですくう描写だったり、キリコがペロッと味見する描写だったり、肉にドロリとかける描写を再現できるよう、漫画の表現に沿うようにペーストっぽい仕上げにしますね」

※注1:油葱酥(ヨウツォンスー):台湾料理でよく使われる揚げ赤ねぎ。

通常店で作っているXO醤油とは異なる「中華風シャリアピンステーキ専用XO醤」を作成

実際の調理は、すりおろした玉ねぎに牛ヒレ肉を漬け込んだのち、両面を焼いて焼き色をつけたら、先ほどの「アニメ再現専用XO醤」を載せ、竹の皮で包んでオーブンでしっとりと焼き上げてできあがり。

シェフの解説とともに味わうことで、見た目はもちろん、味もこんな感じだったろう…と思わせる“漫画メシタイム”を制作陣一同満喫したことは言うまでもない。

笹の葉を開き、肉をナイフで切ると、中はしっとりとピンク色に焼き上がっていた♡

また、ジャンと対決する“XO醤のリュウ”の料理「XO醤炒双鮮(チャオシュヮンシェン)」も、ホタテの切り方から添え野菜のチョイスに至るまで、あの時代、この料理で、この料理人ならこんな風にするだろう……と登場人物に想いを馳せた考証もまたご馳走だった。

こちらは店のXO醤を使って調理。「漫画で黒に見えるポツポツは…紅いクコの実か?」などといいながら再現に至った日々が懐かしい

第1話から4話までまとめたらずいぶん長くなってしまったが、このプチ連載、アニメ放送を追いかける形で4話ずつまとめ、5~8話、9~12話と続ける予定だ。原作ファンはもちろん、アニメで『鉄鍋のジャン!』を知った方も、当記事で作品と中国料理の世界をより深く味わっていただけたら嬉しい。

◆アニメ『鉄鍋のジャン!』公式サイト公式X
テレビ放送の後は、「アニメタイムズ」「ABEMA」「U-NEXT」「アニメ放題」ほかたくさんのプラットフォームでご視聴いただけます。詳細はこちら

TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)