[第6話]赤坂四川飯店-息ピッタリ!2人でキメたおこげ料理「太極鍋巴」

太極模様のおこげ料理をキメるためのポジションを確認し合うシェフたち。2人が息を合わせて1つの料理を仕上げる
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焼き肉、すき焼き、しゃぶしゃぶ、鉄板焼き――。日本で牛肉料理といえば“和牛”を主役に、いわゆる“いい肉”の素材を活かすように食べるのが人気かつ王道だ。

かたや中国料理では、香辛料を使った煮込み料理や、牛肉麺・牛肉粉(粉=米粉の麺)のように、主食と組み合わせて食べる料理が充実している。第6話は、そんな牛肉料理がテーマだ。

対決するのは、中国料理の技法を取り入れた鉄板焼きを作る沢田圭と、伝統料理のおこげ料理を作るジャン。派手なパフォーマンスと甘いルックスで若い女性に人気の沢田に対し、ジャンは汗をかきながら地味な料理を作る。

この対決は、見た目も対照的なら、使う部位も調理も対照的だ。ランプ、イチボ、サーロインなど高級な部位を使う沢田に対して、ジャンが選んだ部位は牛スネ肉。筋が多く、脂は少なく、硬い。

しかし、スネ肉は長時間火を入れてやわらかくすることで、肉はほろほろ、筋はぷるぷるむちっと化け、煮込むほどに濃い肉の味わいが現れる。中国には「肉はよく動かす部位ほどうまい」という考え方があるが、スネ肉はまさにそれを体現できる部位だ。

下味を付けてしっかりと煮込まれた牛スネ肉。口にするとほろりとほぐれ、濃い肉のうまみがある。食べごたえも十分だ。

そんな牛スネ肉を使ったおこげ料理「太極鍋巴(タイジーグォバー)」を再現したのは「赤坂四川飯店」の田中良司料理長である。

田中シェフは「日本の四川料理の父」陳建民氏と、「中華の鉄人」陳建一氏の両名に師事し、技と味を受け継ぎ、本店の厨房を守るベテラン。これほど任せて安心な人はいない。

「赤坂四川飯店」の田中良司料理長。18歳から四川飯店に入り、この道一筋だ。

そもそも、おこげ料理は江蘇料理や四川料理で親しまれており、原作にあるとおり「天下第一菜」と呼ぶのは江蘇料理。しかし、今回の料理は牛肉や濃厚な白湯を使った仕立て。料理の方向性としては、四川料理店のほうがしっくりくる。

皿の上のS字カーブはどう作る?茶と白で描き出す太極模様

さて、再現するおこげ料理「太極鍋巴」は、仕立ての異なる2種類のあんで、皿の上に太極模様を描くという大作だ。

まず1つは、ホロッとやわらかく、筋がぷるっとするまで3時間蒸した牛スネ肉が主役。肉にはあらかじめ醤油とオイスターソースをベースに下味をつけてから火を通し、中華鍋に移したのち、ピーシェン豆板醤を加え、炒めて香りを引き出し、こっくりと煮込む。

煮込まれた牛スネ肉を、熟成させたピーシェン豆板醤を用い、奥行きのある味わいのあんに仕立てる。

そしてもう1つが、白湯(ぱいたん)と野菜のあんである。「赤坂四川飯店」の白湯は、鶏肉、豚肉、豚骨、もみじ(鶏の足)を3時間煮込んだタンパク質とうまみの塊。

そこにアスパラ、にんじん、戻した干し椎茸、セロリの4色4種類千切り野菜を加えた、牛肉に負けず劣らず贅沢な味わいだ。

濃厚でリッチな味わいの白湯。複数の肉と部位を合わせてつくる、コラーゲンの塊だ。

では、これをどうやってくっきりとした太極に仕立てるのか? ここにシェフの工夫があった。

まず、アルミホイルで自作したS字型の衝立(ついたて)をテープで皿に固定。続いて2人の料理人が、呼吸を合わせ、茶と白のあんを一気に皿に流し込む。ここはぜひ動画でご覧いただきたい。

 

衝立を取ると、見事に2色のあんがS字カーブを描いているじゃないですか!

最後に、茶に白、白に茶の餡を一滴ずつたらしたら画竜点睛。アニメではジャンが1人で作り上げたことになっていたが、実際は2人の料理人が呼吸を合わせて仕上げた、なんとも贅沢なおこげ料理だったのだ。

美しいS字カーブを描く茶と白のあん。それぞれのエリアに点が入れば画竜点睛! photo by TROYCA

なお、この仕立ては撮影用。実際に料理として提供する場合、揚げたてのおこげをバッチバチに熱した皿に盛り、触れたら火傷必至の激熱の餡をかける。すると、熱された油と熱々のあんの出合いによる無数の連続的水蒸気爆発によって「拍手のような音」が鳴り響くのだ。

そこで、同じ餡を使って、原作さながらの「拍手のような音」が立ち上がる一皿も作ってもらった。こちらも動画でどうぞ。

ちなみに原作で「ありふれた料理」と評されているおこげ料理だが、30年経った今、おこげ料理を出す店は多くない。そんな中、「赤坂四川飯店では、創業以来おこげそのものを手作りしている。

中華食材として流通している一般的なおこげは、もち米の粒を残したまま固めたものが主流。しかし、同店伝統の手作りおこげは見た目からして違う。炊いて潰した米を大きなボウルに薄く貼り付け、乾燥させて作るのだ。

左が市販のおこげ、右が赤坂四川飯店の手作りおこげ。撮影は原作の見た目通り、左のおこげを使用した。
「昔からこれでおこげを作ってます」と、潰した米を貼り付ける大きなボウルを見せてくれた田中料理長。凹凸が歴史を物語る。

食べ比べると、軽やかさが違う。食べるとフワシャッ!と崩れ、口の中であんと一体化する快感がある。

アニメ『鉄鍋のジャン!』でおこげ料理に興味を持たれた方もいるかと思う。再現料理とは異なる仕立てだが、同店伝統のおこげ料理は唯一無二。体験していただけたら嬉しい。

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