7月5日のテレビ放送開始から、国内外のネット民の反響が止まらないアニメ版『鉄鍋のジャン!』。毎週放送直後Xはちょっとした“祭”になり、海外の反響をまとめたYouTubeが出るなど、原作ファンのみならず、新たなファンも獲得したようだ。

テレビ放送は終わったが、現在「アニメタイムズ」公式YouTubeで期間限定無料配信中。なんと10月9日で239万再生を超えている(無料期間は10月11日(日)17:59まで)。

そこで当記事では前編に続き、第5話から第8話までの料理再現の舞台裏をアニメ版料理監修・コーディネーターのサトタカ(佐藤貴子)がご紹介する。放送前から話題沸騰の「マジックマッシュルームスープ」の話もここに含まれる。気になる方は下記の目次から、お好みの順番で召し上がれ!

前編(第1話~第4話)から読みたい方はこちらから
第5話|赤坂璃宮 銀座店-全視聴者が釘付け!マジックマッシュルームスープそっくりさん
第6話|赤坂四川飯店-息ピッタリ!2人でキメたおこげ料理「太極鍋巴」
第7話|JANU TOKYO「虎景軒」-“真空調理”丸鶏のフカヒレ詰めは本当に“ちぐはぐ”だった?
第8話|中国菜 漢-鰻×蓮根×ココナッツミルク!? 90年代香港オマージュ「蓮藕炒鱔球」を完全再現
[注意]料理解説はネタバレの宝庫です。先に知りたくない方はアニメを観てからお読みください。

 

[第5話]赤坂璃宮 銀座店-全視聴者が釘付け!マジックマッシュルームスープそっくりさん

中国料理でスープときけば、真っ先に思い浮かぶのが広東料理だ。中国南方の広東省において、市井の人々の日常的な養生食であり、ハレの日のご馳走にもなるのが湯(スープ)。このアニメで本格的に料理バトルが始まる第5話『中華料理人選手権大会』は、そんな至高のスープの闘いだ。

対決する2種類のスープを再現したのは、今年で開業30年を迎えた広東料理店「赤坂璃宮 銀座店」の水野耕作料理長である。

スープを入れる大型蒸籠と水野耕作料理長。photo by TROYCA

赤坂璃宮といえば、創業者の故・譚彦彬氏が陣頭指揮をとっていた頃から、原作監修者のおやまけいこさんが懇意にしていた店。当時から、同店の宴席料理に出されるスープ料理には、いつも驚かされていたものだ。

例えば、かつておやまさんとご一緒させていただいた宴会に登場したのは「漢方燉馬鞭」。なんとこれ、熊本からやってきた馬のペニス(馬鞭)が主役。また、翌年の別の宴会では、丸々1匹の蛇と豚肉、乾物を取り合わせた蒸しスープに舌も胃袋も心も奪われた。

漢方燉馬鞭。中心に見えるそれっぽいものがあれだ。
スープはすべての素材を抽出した精のようなもの。一見お茶のように見えるが、とんでもなくお金と時間のかかった一杯。
こちらはスープの出がらし。馬鞭はむっちりとしていた。

もちろん、珍しいとかゲテモノだとかで驚いたのではない。いずれのスープも広東料理の王道に忠実に、生鮮食材と生薬を組み合わせ、食材のエキスを美しく引き出した命の一杯だ。その感動を以て、今回の再現依頼に至ったわけだ。

「スープの広東」を実感。生鮮と乾物の組み合わせに技あり

まず、ジャンが勝負する「中華薬膳料理店 藤田」の藤田貫一のスープは「漢薬燉鰻魚(ハンヤオドゥンマンユィ)」。直訳すると、鰻と漢方薬にとろ火でじっくりと火を通した料理、という意味になる。

漫画には具体的なレシピはないものの、さすが広東料理に熟達した水野シェフだ。鰻、鶏肉、棗、クコの実、当帰、北芪、花旗参(アメリカニンジン)、當参(ヒカゲノツルニジン)、龍眼肉、蓮の実、生姜、酒、水を取り合わせ、飲んだそばから皮膚までするりと養分が浸透しそうなスープを作り上げた。

漢薬燉鰻魚。この力強いビジュアルたるや!作品では「強壮、利尿、老化防止の薬膳スープ」とあるが、品鍋のフタを開けて香りを嗅ぐところからすでに強壮効果がありそうなスープだった。
スープの主素材に対して生薬の組み合わせが自然に出てくるのが熟達した広東料理人。これだけの素材を組み合わせながら、えぐみが一切なく、太いうまみと奥行きを描き出しているのはさすがのひと言

対するジャンのスープは「魔法蘑菇湯(モーファーモーグゥタン)」、直訳するとマジックマッシュルームスープである。

原作ではモエギタケ科とフウセンタケ科の何らかのきのこを一定の割合で2種類組み合わせ、幻覚作用を生み出して審査員をメロメロにし、高得点を叩きだすという邪悪なスープ。もちろん、今は完全にアウトだ(2002年6月6日より違法)。

ここで水野シェフが選んだのは、大粒ナメコ(モエギタケ科)と乾燥チチタケ。「作画の見た目に似せたスープを作りました」と話してくれた通り、漫画通りのビジュアルが、香り高い湯気とともに登場した。

魔法蘑菇湯。このスープにおける魔法は食材をおいしさに変える魔法である

大粒ナメコは、加熱しても縮みにくく、丸い形が保たれるため、作画のためのきのこのモデルにはぴったり。チチタケは栃木県きのこ好きに愛される品種で、汁物に使うとコクのある出汁がでる。まさに、見た目も味わいもぴったりの組み合わせだった。

奥がチチタケの乾物、手前が大粒ナメコ。

さらにうまみを下支えするのは鶏肉、金華ハム、豚肉の3種を贅沢に使った動物性のスープ。これが2種類のきのこの味わいとガシッと結びつき、飲めば飲むほど元気になりそうな液体と化していた。

これこそ、第5話のタイトル「至福の調合(「調合」と書いて「マジック」と読ませる)」そのもの。我々取材チームも「うまい!」「もう1杯いただこうかな」「最後は僕が…」と、無心に飲み続けて品鍋を空っぽにしたことは言うまでもない。ああ、思い出してもまた飲みたくなる…!

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