[第7話]JANU TOKYO「虎景軒」-“真空調理”丸鶏のフカヒレ詰めは本当に“ちぐはぐ”だった?

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第7話|JANU TOKYO「虎景軒」-“真空調理”丸鶏のフカヒレ詰めは本当に“ちぐはぐ”だった?
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鶏を丸ごと一羽使った料理は、中国料理で宴会の華。特に広東料理では「無雞不成宴」、鶏がなければ宴会が始まらないと言われ、農家楽(農家レストラン)では生きた鶏を絞めて食べるところに価値がある。ぶよぶよとした軟らかい肉ではなく、よく運動した締まった肉こそ上等なのだ。

第7話は、そんな鶏肉料理がテーマだ。ジャンが対決するのは「河原クッキングスクール」校長の息子・河原裕司。食材を真空パックし、低温で加熱した「真空調理器」を駆使して勝ち上ってきた異色の料理人だ。対するジャンは、丸鶏を蒸して揚げて煮込む、昔ながらの手のかかる調理法を選ぶ。

果たして、伝統の技法が勝つのか、「21世紀の料理」が勝つのか? 2つの丸鶏料理を再現したのは、第1話で「海鮮風炒飯」を再現してくれたJANU TOKYO「虎景軒(フージン)」の山口祐介シェフである。

本日の仕事人、山口シェフの道具。

料理監修の仕事では、原作とシナリオに基づき、どこまでのプロセスを収録する必要があるのかをまとめた上で、料理人と撮影側の双方にとって、なるべく無駄のない方法を提案する。

その点、この料理を制限時間内に収録するには、提供直前まで仕上げた丸鶏2羽と、まったく仕込んでいない中抜きの生の丸鶏1羽を用意する必要があった。

撮影は約2時間。要点を踏まえ、シェフから事前に共有された「ジャン撮影準備」と書かれた2日がかりの仕込表には、発注内容と時系列にまとめられた仕込みのプロセス、各工程の確認事項が記されていた。まさに、計画無くして為し得ない料理である。

山口シェフから共有された「ジャン撮影準備」一覧表には食材の発注内容から仕込みの流れが書いてあった(一部抜粋)。事前の準備と計画がかなり重要なのだ。

[厨房ドキュメント]ジャンと河原“二羽の丸鶏”を追う

まず、ジャンの鳳胎粉絲(フォンタイフェンスー|丸鶏の春雨詰め煮)は、骨を抜き去る“つぼ抜き”の手技を撮影する。

鶏は骨があってこそ、そのフォルムが保たれているが、尻から手を入れ、筋を切り、関節を外しながら丸鶏を裏返し、骨を抜き去るのが“つぼ抜き”。詳しくは写真と動画でどうぞ。

まな板の上の丸鶏。内臓は抜いてある。
尻から手を入れ、筋を切りながら骨を外していく。黄色い油は長く育った鶏の証拠だ。
鶏のつぼ抜きを披露する山口シェフ。皮の中でも薄い部分を破かないよう注意を払う。
骨を抜いた鶏。「秋山の魔法」ではない。

骨を抜くと、ご覧の通り、まるで“肉の袋”のようになる。しかし、この袋は詰め物によって再び鶏の形を取り戻すのだ。

鶏の内部に紹興酒、醤油、オイスターソース、白胡椒、胡麻油、老抽(色づけ醤油)を塗り込んで下味をつけ、春雨、ささみ、どんこしいたけを炒め合わせた具を腹に詰めると、まるで骨を抜く前のように、丸々と肥った鶏になる。

味のしみた春雨を鶏の腹に詰めていく。
春雨が丸鶏の腹を膨らませる。裏返すと、元通りの丸々とした丸鶏に。

かたや、河原の春茶鳳胎魚翅(チュンチャフェンタイユィチー|丸鶏のフカヒレ詰め 春茶の香り)は、フカヒレの尾びれをほぐし、中国ハム、クコの実と合わせて塩味ベースで調味し、骨を抜かずに鶏の腹部に詰める。詰め物は異なるが、要領としては韓国料理の参鶏湯(サムゲタン)に近い。

さらに、鶏の皮と肉の隙間を丁寧に指で剥がし、薄切りにした黒トリュフを挟み込む。これはフランス料理の技法だ。有名な料理は、Poularde en demi-deuil(プラルド アン ドゥミ ドゥイユ)、直訳すると「半分喪服の鶏肉」。白い鶏皮に黒トリュフが斑点のように透けて見えるのがトレードマークだ。

ここまで仕込んだら真空パックに詰め、70℃で2時間を目安に加熱する。厨房には河原のようないかつい調理システムはないため、ここでは寸胴に低温調理器をセットして火を通した。

周りに立つ三脚は小型カメラ。厨房に5か所カメラを立て、全方位から撮影を行った。
皮から透けて見える円形のものがスライスした黒トリュフ。

ジャンの丸鶏の仕上げは、皮の表面に醤油と老抽をまんべんなく塗り、油で揚げて表面に色づけ。このひと手間が、煮込んだときに味を染み込ませるだけでなく、料理の香ばしさを増幅させる。

ただ、揚げるといってもドボンと中華鍋に入れるのではない。「上下の皮が破けないよう、ザーレンにクッキングペーパーを敷いて、上から何度も油をかけます」と山口シェフ。

このままでも十分おいしそうなジャンの丸鶏。

最後に原作では鶏を煮て仕上げるが、「鶏の型崩れを防ぐため、蒸して中まで火を通し、コクとうまみのある醤油ベースのたれをかけて仕上げますね」。これもまた、作画のための細かな配慮だ。

調理をサポートしてくれた須戸勝士さん。完成まであとひと息!

一方、河原の春茶鳳胎魚翅は、70℃で2時間低温加熱調理し、龍井茶の葉(ロンジンチャ|中国を代表する緑茶)、スープ、色づけに少量の抹茶で薄緑色の餡をつくり、丸鶏の上からかけたらできあがり。

ここまで追って見て、料理をする人なら想像がつくだろう。黒トリュフ・緑茶・フカヒレ・中国ハムに丸鶏。どれを活かすのか定まらない、香りの飽和状態なのだ。

「春茶鳳胎魚翅」完成形。皿の縁にはピンクグレープフルーツが飾られた。
腹の中にはたっぷりのフカヒレと中国ハム。贅沢。

実際に食べてみると、低温でしっとりと火を入れた鶏肉は、ほどけるような質感が心地よく、シェフのさじ加減もあっておいしかった。しかし、それは食材の重なる味わいではなく、鶏そのものが持つおいしさでもあった。

かたや、ジャンの鶏肉料理は、こっくりと味付けした春雨を詰めた鶏肉を蒸し、醤油を塗って揚げて香ばしく、さらに醤油系のスープで煮込んで(ここでは蒸して)うまみを積み上げ、コクと香りを高めるために、一直線に向かっていく作り方だった。

骨抜きした鶏肉と、腹に詰めた春雨やどんこ、干し貝柱などの風味が、調理によってひとつの力ある料理へと昇華していた。

ジャンが言い放つ「料理は経験の蓄積だ!馬鹿め!」という台詞は、プロの料理人が聞けば胸がすく思いだろう。さまざまな対比が鮮やかに描かれた第7話は、料理人にこそ見ていただきたい。

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