麻婆春雨の原型を知ろう

ピリ辛スープに春雨が入った麻婆春雨は、日本の食卓でもおなじみの料理。しかし、今回ご紹介する料理は、その名前の通り、昔の四川省で作られていたもの。現代の麻婆春雨とはちょっと異なります。

蟹腿粉絲煲(カニ肉と春雨の煮込み)
現代の麻婆春雨の一例、蟹肉入り麻婆春雨。これはこれでおいしそうですよね。

では、何が違うというと、まず1つめが春雨。春雨といえば細くて白い緑豆(りょくとう)のでんぷんで作られたものが一般的ですが、「古典式」の場合は、サツマイモのでんぷんで作られた紅薯(ホンシュウ)春雨を使用します。
こちらは四川省でよく使われており、インスタントカップ麺になっているくらいメジャーな食材。韓国料理でチャプチェ等にも使われているものと同じで、モチモチの食感が味わえます。

また、2つめの違いが春雨の戻し方。一般的にはお湯で戻しますが、ここではお湯に塩と醤油を入れて戻して、春雨に味と色をつけるのです。そして3つめの違いは、牛ひき肉に下味を付け、カリカリになるまで炒めること。こうすることで、肉が春雨に絡んだ時にしっかり旨みを加えてくれます。

さらに最後、4つめの違いは、スープの中に春雨を入れ、汁気を春雨に吸わせるようにして炒め上げること。これらのポイントをおさえ、最後に砕きピーナッツを散らしたら、ごはんのおかずにぴったりの古典式麻婆春雨のできあがりです。
見慣れた料理も、いつもとちょっと違った素材と工程で作ると、まるで別の料理のように味わえますよ。

料理:菰田 欣也(スーツァンレストラン陳
撮影:2012年9月 古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:螞蟻上樹(mà yǐ shàng shù / マー イー シャン シュ)

古典式マーボ春雨


Text 遠藤亜紀
photo 西田伸夫