暦の上でも、気持ちの上でもまごうことなき春。とはいえ今の季節は、天候が不安定で雨は冷たく、冬の名残を感じることもあるのではないでしょうか。
こんな季節ですから、妊婦さんの中には、雨や寒さ、または花粉症のために、外出や散歩の機会も少なくなり、体重管理に苦戦している方もいらっしゃるかもしれません。また、動かないとむくみや便秘になりやすいのも心配です。そこで役に立つのが大根と豚肉。どちらも、とても身近な食材ですね。
大根 |
豚スペアリブ |
実は大根と豚肉、特に大根とスペアリブの組み合わせは中国料理の定番の使い方。ここには、スペアリブから出る旨みを大根が受け止めるという“おいしい関係”があるのです。
一方、それを薬膳的な観点からみると、大根は下気消食(かきしょうしょく)、すなわち消化不良による胃や腹部のはり、げっぷ、吐き気、下痢、便秘を解消するのによく、豚肉は滋陰潤燥(じいんじゅんそう)、発熱におる無気力、のどの渇き、から咳、便秘、産後の母乳不足を解消するのによい食材。
つまり、この2つの食材の共通点は便秘解消。合わせて使うことにより、それぞれの食材が持つパワーもより強いものになります。
また、それぞれの栄養を見てみると、大根は94%以上が水分ですが、カリウムと食物繊維が含まれ、むくみや便秘の予防・解消に役立つ食材。一方、豚肉はたんぱく質とビタミンB群が豊富で、特にビタミンB群は、糖や脂肪の代謝に欠かせない成分。肥満予防や疲労回復、さらにストレス緩和も期待できます。
なお、今回は妊婦さん向けに、厚揚げとにんにくの芽も加え、赤ちゃんの筋肉や血、臓器を作るための栄養源となるたんぱく質とカルシウム、免疫力を強化するビタミンCも摂取できるような一品にアレンジしてみました。
野菜と肉のバランスがよく、しっかりと満腹感を得られ、便秘解消にも役立つという三拍子揃ったこの料理。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
萝卜炖猪排骨(大根とスペアリブの煮込み)
(萝卜[luó bo]=大根 炖[dùn]=とろ火で煮込む 猪排骨[zhū pái gǔ]=豚スペアリブ)
調味料は塩・胡椒のみ。それでいながら、豚スペアリブの骨から出る旨みによって、さっぱりとしつつもコクのある味わいに仕上がるのがこの料理の魅力。やわらかな大根、ニンニクの芽の甘みとシャキシャキ感も相性がよく、スープの旨みを引き立てます。
さらに、この料理は離乳食としても使えるのがうれしいところ。産前だけでなく、産後も家族みんなでおいしくいただけるのが嬉しいですね。
【時期】妊娠後期、産後 【季節】冬 【注目栄養素】たんぱく質、カルシウム、ビタミンB群、ビタミンC |
レシピ(2~3名分)
大根 | … | 300g |
厚揚げ | … | 1枚※ |
豚スペアリブ | … | 400g |
ニンニクの芽 | … | 1袋(100g前後) |
塩、胡椒 | … | 各少々 |
※今回は角切りの状態で販売されているものを使用しました。
■作り方
(1)大根は皮をむいて角切りにし、ニンニクの芽は4等分の長さに切ります。
(2)スペアリブを沸騰した湯に入れ、アクを取り除きます。
【アクのとりかた】
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(3)深めの鍋にアクを取ったスペアリブを入れ、材料が浸るくらいの水を入れて弱火で30分煮込みます。
肉が浸るくらいの水を入れ…
段々と水が沸いてきたら…
蓋をして煮込みます。
30分後の鍋の水分量はこのくらいです。
(4)厚揚げと大根を加え、大根の色が半透明に透き通るまで、さらに約10分煮込みます。大根が透き通ってきたら、塩、胡椒を加えて味を調えます。
厚揚げと大根を加えます。
はじめは鍋から溢れそうですが…
煮込んでいくと落ち着き、大根の色が透明に。
(5)ニンニクの芽を加えて、ひと煮立ちさせて完成です。
ニンニクの芽を入れます。
煮込まれると、ニンニクの芽は少し深緑色になります。
ニンニクの芽を入れてひと沸きしたら完成です。
器に盛り付けてお召し上がりください。
調理ワンポイント
※中国のウェブサイトを見て見ると、豚肉を羊肉にして作っているレシピもあります。ニンニクの芽ではなく、葉ニンニクを使って作っている場合も。それぞれアレンジしてみてもいいでしょう。
離乳食アレンジ離乳食にする場合は、大根を煮込んで色が透き通ったところで取り分け、赤ちゃんが食べやすい大きさに切ったり、潰したりして使ってください。 我が家では、11ヶ月になり、歯が上下で8本はえている息子に厚揚げを一切れ分、大根を二切れ分を、具材をそれぞれ7mm程度の角切りにして食べさせています。 |
参考文献
『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』 講談社編 2013年 講談社
『安胎键儿怀孕食谱』 林秋香 著 2010年 南海出版公司
Text / Recipe / Photo 山田早苗