鮮やかな黄色のトウモロコシと、真珠に見立てた真っ白なイカの粒。その美しいコントラストを愛でつつ、トウモロコシのプチプチした食感と、イカのふわふわ、もちもちの食感が楽しめるお料理がこちら。

しかし、イカで真珠を作るとは、いったいどんなマジックが…?「麻布長江 香福筵(こうふくえん)」の田村亮介オーナーシェフに伺いました。

スミイカ真珠とトウモロコシの炒め

イカで真珠を作るには?

料理のポイントは、イカで真珠を作ること。まずは薄皮を剥いだイカに、エバミルク、卵白、塩、酒、醤油、胡椒、片栗粉を合わせてミキサーにかけ、すり身を作ります。

そのすり身をザーレンに乗せ、レードルの裏を押し当てて、ザーレンの穴から沸騰したお湯に落とすとあら不思議。1分半ほどボイルすると、なんと真珠のように丸く固まった“イカ真珠”のできあがり。

もし、ザーレンの穴にすり身がくっついてしまった場合は、ザーレンの底を湯の中に浸し、すり身を熱で固めてしまえば、レードルで簡単に取り外すことができます。

ザーレン
ザーレン(炸鏈)。主に揚げものを油からすくい出すのに使います。

続いてトウモロコシは、生のまま粒を外し、塩を少々加えた熱湯でゆでて加熱。そこに先ほどの“イカ真珠”を一瞬入れ、直ぐに引き上げ、水気をしっかり切っておきます。

最後に中華鍋を熱し、葱油で葱のみじん切りを香りが出るまで炒めたら、トウモロコシと“イカ真珠”を投入。あらかじめ合わせておいた塩、酒、醤油、酒醸(中華の甘酒)、清湯(チンタン:澄ましスープ)、水溶き片栗粉を加えて手早く炒めたらできあがり。

仕上げには、トウモロコシの髭を低温で色よく揚げてこんもりと盛り付け、ピンクペッパーを散らせば見た目もぐっと華やかに。夏のおもてなしにぴったりの一品です。

【食材ワンポイント解説】エバミルク

エバミルクは無糖練乳のことで、中国料理ではよく使われてきた食材です。この料理の場合、エバミルクが手に入らなければ、牛乳または鶏スープで代用できますが、生クリームではイカが真珠状にならず、使えないので要注意。エバミルクは牛乳を濃縮した乳製品なので、料理に入れると味にコクが生まれます。通販でも購入できるので、是非使ってみてください。

 

料理:田村亮介( 麻布長江 香福筵
撮影:2016年5月27日の古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:珍珠墨魚玉米(zhēn zhū mò yú yù mǐ / ヂェン ヂュ ムォ ユイ ユイ ミィ)


text 近江文代
photo 西田伸夫