2014年秋、家で羊肉を美味しく食べるために誕生した、魅惑のピリ辛クミン塩「羊名人(ようメ~じん)」。80C編集部による100袋の手売りから始まったこの商品も、今では連日のように調理例がTwitterのタイムラインで見られるようになりました。嬉しい限りであります。ありがとうございます。

さて、そんな「羊名人」が、今までにない形で注目を集めたのが2019年冬のこと。「サイゼリヤ」に登場した新メニュー「アロスティチーニ」こと羊肉の串焼きについている「粉」が、「羊名人」に似ているというつぶやきがTwitterに放たれたのです。

そしてのちに、この「粉」は「やみつきスパイス」という名前で販売されることに。そこで気になるのは、本当に「羊名人」は「やみつきスパイス」と似ているのか?ということです。さっそく買って試してみました。

「羊名人」は重なり合うスパイスの香り。「やみつきスパイス」はハーブガーリックソルト

まず、違いを確認するには成分を見るのが一番。ということで原材料を見てみると、配合はかなり違いました。

羊名人

唐辛子(中国・韓国)、ごま、砂糖、岩塩、クミン、花山椒、五香粉、ガーリック、こしょう、ジンジャー

やみつきスパイス

食塩(国内製造)、ガーリック、ハーブミックス、パプリカ、クミン、調味料(アミノ酸)

食品の原材料表示は、多く含まれているものから羅列する決まりがあります。そのルールで見ると「羊名人」で最も多く配合されている順に、唐辛子、ごま(粒のまま)、砂糖。袋を開けて立ち上るのは、唐辛子と五香粉などが混ざり合ったエキゾチックな香り。塩は岩塩ですので、粒子が大き目です。

左が中華・高橋の「羊名人」。右がサイゼリヤの「やみつきスパイス」。

一方「やみつきスパイス」は、食塩、ガーリック、ハーブミックスの順番です。こちらの袋を開けて立ち上るのは、クミンとガーリックとハーブの香り。配合としては後ろの方に並んでいるクミンですが、その存在感は十分。全体的に軽やかで細かめのハーブガーリックソルトという印象です。

また、同じ羊肉につけて食べるものでもコンセプトは異なります。「羊名人」は、家で羊肉をおいしく手軽に食べるために作られたもの。イメージは中国の焼烤調料こと串焼きの調味料で、基本的には先につけて焼くためのものですが、後からかけてもよく、どっさり使って上等!というバランスに仕上げています。

一方、「サイゼリヤ」の「やみつきスパイス」は、レストランで焼いたアロスティチーニ(店では羊肉の串焼き)に風味を添えるためのハーブガーリックソルト。塩が効いており、基本的には後付けの調味料となります。

ラム肉と野菜の炒めを「羊名人」と「やみつきスパイス」で作り比べてみた

では、同じ食材を「羊名人」と「やみつきスパイス」でそれぞれ同じように調理すると、味や香りはどう異なるのでしょうか。ラムもも肉と、ほぼ同量の野菜(玉ねぎ、ピーマン、エリンギ)で炒めものを作ってみました。

羊肉の品揃えがよいスーパー「サミット」でラムもも肉を購入。

レシピはこちら。肉に下味などはつけず、至極簡単な作り方にしました。肉と野菜の割合はざっくり1:1です。

ラム肉と野菜の炒め(約1人前)

<材料>
羊肉(ラムもも肉)85g(170gのラム肉を二等分した結果です)
玉ねぎ 40g
ピーマン 20g
エリンギ 20g
油 大さじ1(今回は比較のため、太白ごま油など香りが強くないもの)
「羊名人」または「やみつきスパイス」大さじ1杯(約6g)

 

まず、材料をすべて1.5cm角に切り揃えます。大きさを揃えると、口にしたときに気持ちいいバランスで食べられます。

下ごしらえはこんな感じ。

続いてフライパンに油をひいて加熱し、羊肉を入れ、表面の色が変わるまで炒めたら、玉ねぎを入れてさらに炒めます。玉ねぎは加熱すると半透明に色が変わり、甘みがでます。

玉ねぎが半透明になったところで、エリンギとピーマンを投入。

すべての材料に火が通ったら、スパイスを投入。まずは「羊名人」バージョンです。朱色の攻撃ザザー!

続いて「やみつきスパイス」バージョン。においは全然違いますが、カレー粉みたいな色ザザー!

料理で感じる大きな違いは塩味

口にすると、「羊名人」バージョンは〈魅惑のクミン塩〉というキャッチがついていますが、塩よりもエキゾチックな芳香や赤色が印象的。塩よりもスパイスの香りが強いです。

「やみつきスパイス」バージョンは、〈スパイス〉と名がつく商品名ではありますが、しっかり塩が効いている印象。原材料に塩が一番前に来ているのも納得です。

うーむ、これは前者を口にしてから後者を食べると、後者の塩気をしっかり感じ、後者を口にしてから前者を口にすると、前者の塩気が薄く感じてしまう…。

そこで、途中まで食べたところで、両方を合わせて見ることにしました。

再びフライパンへ。

色は赤と茶の間になりました(当然といえば当然)。口にすると、中華的なスパイスにイタリアンハーブソルトが加わっても、足し算過ぎるどころかいい感じに調和し、落ち着いている驚き。これはクミンが結ぶ縁でしょうか。なにより塩加減が絶妙に…!

これで炒飯や炊き込みごはんを作ったら、さぞかしおいしいに違いない。インドにはジーラライス(クミンごはん)もありますし、ウイグルのポロみたいな雰囲気にも作れそうです。

あわせて使うと親しみやすくスパイシーな味わいに

「羊名人」と「やみつきスパイス」は似ているのか?という答えですが、クミンとガーリックという共通点を持ちつつも、「羊名人」は中華で、「やみつきスパイス」はイタリアンでした。

左がやみつきスパイス炒め、右が羊名人炒め。

両者の原材料での共通点はクミン、ガーリック、塩。クミンの香りは独特で、少量でも効き目抜群。恐らくそのファーストインプレッションが、それぞれを彷彿とさせるのかもしれません。

また、それぞれの調味料ともに、そのジャンルにはちょっと珍しい特徴もあると言えます。まず「羊名人」は現地の焼烤(シャオカオ)を食べてきた人からすると、ちょっとパンチが足りないと感じる人もいる配合です。

それは、中華調味料としては珍しい無化調であるため。そのかわり、砂糖や岩塩で風味とコクを出し、どっさり使っていただくことで、その香りを存分に味わうという趣向です。

また、やみつきスパイスは一口食べた時にしっかりとした旨さがあり、万人に好かれる味わいに仕立てられていると思いました。これは中華合わせ調味料などによく用いられるアミノ酸を添加していることも関係あるかと。

むしろ「羊名人」よりも日本人になじみのある、親しみやすい味わいで、羊のみならず、いろんな食材に合わせられる可能性を感じました。

左が「羊名人」、右が「やみつきスパイス」。

それにしても、二者を合わせて使ってもまったく違和感がありませんでした。これぞ合わせスパイスの合わせ技。中華とイタリアンのマリアージュ…!「羊名人」をお買い求めの方はぜひサイゼリヤで「やみつきスパイス」も買い求め、合わせてみるのも楽しいかと。80Cは共存共栄を願います。


TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)