INDEX|自家製中華干し肉、腊肉(ラーロウ)を作ろう |
腊肉(ラーロウ)レシピの最後にご紹介するのは、漬け込まない、そして蒸さないで食べられる干し肉です。
プロの作る腊肉とは、風味、食感、作る際に配慮するポイントなど諸々異なりますが、炒めものや煮込みなど、幅広い料理に使えるという点では一緒かと思います。
これで干し肉独特のうま味が味わえるのはもちろんのこと、一番の魅力は、家に肉が干されている愉悦が味わえること。それほど、家に肉がぶら下がっているのっていいものですよ…。
この作り方なら、面倒くさがりの方でも大丈夫。細かいところはこだわらずにやってみてください。
揉み込んで干すだけ!焼いて美味、煮込んで滋味のお手軽腊肉(ラーロウ)
材料
・豚バラ肉ブロック…1本250g
・塩…大さじ1杯(ややしょっぱめに仕上がります)
・五香粉…大さじ1杯(十三香や「羊名人(ようメーじん)」大さじ1杯でもOK)
作り方
① クッキングシートまたはバットの上に肉を乗せる
意外と大切なところがココ。肉に塩やスパイスを塗り込もうとすると、どうしても下にこぼれてしまうため、まずはそれらを受け止めるモノをスタンバイ。ここでは「クックパー®」を使用しています。
② 肉に塩を塗り込む
豚バラ肉に塩を塗り込みます。その際、肉の中でしょっぱいところとそうでないところがなるだけ偏らないよう、肉の太いところには多めに、細いところには少なめにするといいでしょう。肉は冷蔵庫から出したてよりも、しばらく出しておいた方が、塩が馴染みやすくなるようです。
なお、この干し肉はやや多めの塩分量で、塩気が強めです。その理由は、肉の腐敗を防ぐとともに、塩が入った方が、干したときに旨みもしっかり感じやすいため。塩分を控えたい方は、気候や干す日数なども留意して加減してください。
③ 肉にスパイスを塗り込む
中華の香りづけにスパイスを塗り込みます。使いやすいのは五香粉や十三香。香りは気分を盛り上げてくれるので、重要な要素です。
こちらの写真では「羊名人」を使用。「羊名人」にはあらかじめ塩分が含まれているので、最初に塗り込む塩をやや控えめにするのがおすすめです。
④ 「肉ハンガー」を作る
道具を作るといっても30秒もかかりません。肉を物干し竿に通す前提で、ワイヤーハンガーを変形させましょう。ハンガーを手に持ち、三角形の底辺にあたる部分をぐっと引っ張ってつき出し、物干し竿に通せる形にします。
⑤ 肉を「肉ハンガー」にかける
ハンガーの先をアルコール等で消毒し、肉にぶすっと差します。ワイヤーハンガーは、かつてはクリーニング店などでもらえましたが、最近はプラスチック製のハンガーが主流のよう。写真は100円ショップで購入したもの。10本入りでしたので、一度に最大10本肉が干せますね。
⑥ 肉を干す
1週間~2週間干します。干すのに適しているのは、風通しのいい場所です。屋外に干す時は、カラス、猫、人による盗難に注意してください。室内の場合は、湿気が少なく、気温の低い部屋を選びます。
ここでは、晴れた日は屋外の物干し竿、夜間は玄関ドアの蝶番(ちょうつがい)にかけて干しました。写真はちょうど10日間干したもの。このくらい時間を置くと、スパイスの香りは飛んでしまいますが、肉にしっかりと染み込んで、風味の一部になっています。
⑦ 完成!
肉を指で押してみたとき、硬いけれども中は硬すぎない感じであれば食べごろです。写真は12日間干したものの断面。肉は薔薇色、脂肪は白の美しい層が確認できます。
保存は1週間くらいであれば冷蔵庫へ。長く保存したい場合は、一度に使い切れる長さに切り(5~8cmくらいですと使いやすいです)、ラップをして冷凍庫に入れておき、使うたびに解凍するといいでしょう。
おすすめの食べ方は、スライスしてシンプルに焼く!
さあ、いよいよ食べるときがきましたよ。こちらは本格的な腊肉と違って、いきなり炒めても大丈夫。
一番のおすすめは、5~7mmにスライスし、フライパンに油を入れずに干し肉を入れ、弱火で加熱し、脂を出しながらこんがりと焼いておつまみにする食べ方。干し肉の脂で干し肉を炒めるようにすると、香ばしくサクサクの食感になります。
肉の周りに粒のスパイスが多くついていると焦げやすくなるので、気になる方は粒を払ってから炒めましょう。
こちらをあっさり系塩ラーメンの具にするのもオツ。まず干し肉を焼いてとっておき、同じフライパンで干し肉から出た脂で野菜を炒めると無駄がなく、風味よく仕上がるので一石二鳥です。
写真はサッポロ一番塩ラーメン。カリカリに炒めた干し肉と、干し肉の脂で炒めたキノコと白菜炒めを具にするだけで本格的な味わいに!
手抜き腊肉と本格腊肉の違い
実は10年近くこの干し肉を作っていたのですが、「中国に行くと干してあるあの肉はどうやって作るんだろう」「プロのちゃんとした干し肉はどんな工程なんだろう?」ということから発展したのがこの腊肉企画へと繋がりました。
実際に腊肉を作ってみると、この干し肉はとてつもなく手抜きです。しかし、まずこちらから作ってみると、ステップアップして腊肉を作ってみたくなる…というのもあるかと思い、このレシピのご紹介に至った次第。
ちなみに、二者の大きな違いは香りと色合い。特に香味醤油漬けの腊肉は、酒のような独特の芳香があって深みのある色。干し肉は、周りに塗ったスパイスの香りがつき、断面はローズに近い色に仕上がります。
また、腊肉は一度蒸してから使うため、調理前の工程がワンステップ増え、蒸すことによってぷるんとした食感も生まれます。一方干し肉は、切ってすぐに炒められる手軽さが魅力。それぞれによさがありますので、ぜひどちらもトライしてみてくださいね。
最後に、腊肉とひと言でいっても地域性があるというお話を。食文化系の話がお好きな方はぜひ次のページをご一読ください。
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text & photo & recipe サトタカ(佐藤貴子)