回鍋肉と言えば、豚バラ肉とキャベツを炒めたスパイシーな料理。ツウな中華ファンであれば、豚バラ肉と葉にんにくを炒めた一皿を思い浮かべる方も多いことでしょう。

そもそも「回鍋(huí guō:フゥイ グゥォ)」とは、こちらの記事にもある通り、一度加熱した食材を、再び鍋に戻して調理すること。

今回はその意味を踏まえ、キャベツ派にも、葉にんにく派にもぜひチャレンジしていただきたい新解釈の回鍋肉を「中國菜 老四川 飄香」の井桁良樹先生に教えていただきました。回鍋肉豚肉の下ごしらえは中華甘酒の酒醸(ちゅーにゃん)で

まず、この回鍋肉の最大の特徴は、、酒醸を使った豚肉の下ごしらえにあります。よくあるレシピでは、酒醸は豚肉と野菜を炒め合わせるときに加えるのがほとんど。しかしここでは、豚肉の下ごしらえから酒醸が登場します。

材料は、豚もも肉350gに対し、塩3.5g、酒醸(中国では醪糟(ザオラオ)とも)35g、老酒7g、白酒3.5g、ねぎ30g、生姜20g、花椒20粒。これらを肉に揉み込み、真空パックにして2~5日間冷蔵庫で漬け込みます。少々時間はかかりますが、数日後の美味しさに出合うためと思えば苦になりませんね。酒醸酒醸[jiǔ niàng]

低温調理で豚肉をしっとりやわらかく

次に、漬け込んだ後の豚もも肉を、パックに入れたまま70℃のお湯で90分間湯煎にかけます。豚肉にきちんと火を通しつつ、やわらかく仕上げるには、この温度と時間がポイント。湯煎の代わりに、温度設定ができる炊飯器やヨーグルトメーカーを使用してもいいでしょう。加熱が済んだら厚めにカットしておきます。

野菜は食感と香りを残して

キャベツはひとつまみの塩と少量の水でさっと炒め、ザルにあけて水分を切っておきましょう。もうひとつ、注目の野菜が「にんにく幸菜(こうさい)」と呼ばれるにんにくの新芽。しゃきしゃきとした食感が持ち味ですので、カットして最後に加えます。

“回鍋”後は手早く仕上げる

仕上げは、中華鍋に油を入れ、乾燥唐辛子6g、花椒20粒を炒め、香りが立ったら豚もも肉を投入。芽菜(ヤーツァイ:四川省名産の漬物)30g、酒醸60g、老酒小さじ2、塩ふたつまみ、キャベツとにんにく幸菜を加えて手早く煽ったらできあがりです。今までの回鍋肉のイメージを覆す見た目ですが、口に含めば唐辛子の辛さと山椒の痺れが一気に広がります。何よりも豚もも肉のやわらかさと、熟成された味わいに驚くことでしょう。

料理:井桁良樹(中國菜 老四川 飄香
撮影:2016年10月24日の古樹軒の料理教室にて
中国語料理名:香辣旱蒸回鍋糟肉(xiāng là hàn zhēng huí guō zāo ròu / シィァン ラー ハン ヂォン フゥイ グゥォ ザオ ロウ)


text 近江文代
photo 海野敦