身近な食材でハッとするような美味が作れるのが中国料理だ。例えば、豆腐と葱という味噌汁の具のような食材でも、火と油の力を借りれば、驚くほどごはんに合うおかずができあがる。

そんな料理の筆頭に挙げたいのが、葱焼豆腐(ツォンシャオドウフ|cōng shāo dòu fǔ)だ。

調理は木綿豆腐を軽く煎り焼き、葱を加えて醤油味で煮込むだけ。ただそれだけなのだが、たっぷりと使った白葱が、煮込み汁に甘く香ばしい風味を与え、煎り焼いた豆腐のぷりぷりした食感に箸が止まらない。

肉を使わなくてもコクはしっかり。世の中に「大豆ミート」があるのも納得の食べごたえである。レシピのオイスターソースをヴィーガン仕様すれば、すべて植物性食材なので菜食の方にもおすすめ。冬により一層おいしさを増す白葱を使って作ってみよう。

主材料はこれだけ。葱と木綿豆腐があればそれでいい。できればおいしい豆腐屋さんの豆腐を使いたい。

葱と豆腐でここまでうまくなる!葱焼豆腐(豆腐と葱の煮込み)のレシピ

材料(豆腐1丁分:2~3人前)
・木綿豆腐 1丁
・白葱 20cm
・油 大さじ2
▼合わせ調味料
・醤油 大さじ1
・オイスターソース 小さじ1
・塩 小さじ2分の1
・砂糖 小さじ1弱
・水 100~120cc
▼とろみづけ(水溶き片栗粉)
・片栗粉 大さじ2分の1
・水 大さじ1と2分の1
※好みで仕上げに小葱を散らす

1:木綿豆腐の水を切る。
水を切ったばかりの豆腐は、豆本来の香りがより強く感じられる。

豆腐は水を切ると、加熱したとき崩れにくく、ぷりっとした食感に仕上がり、煮汁が水っぽくなるのを防げる。難しくないので、この一手間は省かないようにしたい。ここでは2つのやり方をご紹介しよう。

▼時間のある方(所要時間約20分)
豆腐の上下に折り畳んだキッチンペーパーを置き、上に豆腐の倍くらいの重さのものを乗せて水を切る。途中で水を吸ったキッチンペーパーを取り替える。

豆腐の上に皿を置き、その上に水を入れた鍋を置いて水を切る。下から、バット→キッチンペーパー→豆腐→キッチンペーパー→皿→水を入れた鍋。

▼時間のない方(所要時間約3分)
豆腐の上下に折り畳んだキッチンペーパーを置き、上に皿をのせて電子レンジで1分半加熱する。水を吸ったキッチンペーパーを取り替え、さらに1分半加熱する。

皿→キッチンペーパー→豆腐→皿の状態でレンジへ。

水切りは、豆腐を指で押すとちょっと弾力が増したな、という塩梅になればよいので、時間は若干前後しても問題ない。豆腐の水切り方法とその比較については、こちらのサイトにも詳しいので参考までに。

2:豆腐を大きめのスプーンで一口大にカットする。

豆腐をカレー用のスプーンなどで一口大に切り分ける。こうすると、煮汁がしっかりと絡み、食べごたえのあるかたちになる。野菜の煮物を作るとき、にんじんや大根を乱切りにするイメージだ。

豆腐一丁をこのようにカットする。
3:葱を斜め切りにする。

冬の白葱こそご馳走である。少なすぎるより、ちょっと多いかな?というくらいでもOKだ。

4:鍋に油を入れ、豆腐の表面を強めの中火で煎り焼く。

ややたっぷりめの油に豆腐を入れ、片面がほんのり黄色っぽくなったら、他の面も軽く色がつくまで表面を焼く。

こうすることで香ばしくなるとともに、煮込んでも崩れない、ぷりぷりとした豆腐の食感が生まれる。

煎り焼くときは、焼き色がつくまであまり動かさないのがポイント。頻繁に動かすと豆腐が崩れてしまう。

豆腐の表面を軽く焼き固めるイメージで煎り焼く。

もしかすると、ここで「厚揚げでもいいんじゃ…?」と思う人がいるかもしれない。しかし、厚揚げにはないふわっとした軟らかさと、煎り焼いたばかりの豆腐の香ばしさは似て非なるもの。

この後、この香ばしさをさらに増す食材を重ねていく。それは、葱だ。

5:同じ鍋で葱を軽く炒める。

焼けた豆腐を鍋の片面に寄せ、もう片面で葱を炒める。みるみる加熱した葱の甘い香りが匂い立ってくる。

6:合わせ調味料を鍋に入れる。

葱が焼けたら、合わせ調味料を鍋に入れ、鍋を大きく回しながら豆腐の表面にまとわせる。火が入り、油に調味料が絡むと、徐々に乳化し、ごはんを呼ぶ香りに変わる。

7:水溶き片栗粉を加えて全体をまとめる。

豆腐に煮汁が絡んだら、水溶き片栗粉を流し入れ、ダマにならないように混ぜてさらに加熱する。とろみが強すぎると感じたら、さらに水を加えて調整しよう。煮汁がぐつぐつと煮立ち、いい感じにとろみがついたらできあがりだ。

白ごはんと合わせれば瞬殺必至。肉がなくても大満足!

主食材は豆腐と葱だけ。動物性のスープは一切使わないのに、こっくりとした味わいで、実にごはんが進む。葱がまた、最高の調味料なのだ。

ちなみにこの調理法は、中国料理で紅焼(ホンシャオ|hóng shāo)と呼ばれている。醤油などを使った赤茶色い煮込みで、さまざまな食材の調理に用いられている。

ちなみに中国の場合、葱はあまり加熱せずに辛味を残すことが多い。しかし今回のレシピでは、葱のとろりとした食感、甘さ、香ばしさを引き出すため、先に葱を焼いてから煮込んだ。この塩梅は好みで使い分けてほしい。

また、中国では老豆腐と呼ばれる硬めの豆腐を使うため、水を切る必要はない。日本では島豆腐が比較的近い硬さなので、手に入るなら使ってみてもいいだろう。

とはいえ、軟らかな木綿豆腐をこのように煎り焼いてつくる葱焼豆腐は口当たりがよく、実に心地よいもの。老若男女におすすめできる味と食感になるのは間違いない。

白ごはんと合わせれば瞬殺必至、麻婆豆腐に匹敵するごはん泥棒、ぜひお試しを!


RECIPE・TEXT・PHOTO サトタカ(佐藤貴子)