日本各地でじわじわ増加している蘭州拉麺店。『本場で蘭州拉麺食べ比べ』のように蘭州に行けなくても、本場気分で楽しむコツとは…? 蘭州拉麺のスタンダード「一清 二白 三紅 四緑 五黄」を満たす注目店とともにご紹介します。
ライター:アイチー(愛吃)
『中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。日本の中華のなかでも、中国人シェフが腕を振るい、郷土の味が味わえる“現地系”に精通。『メシコレ』『retty』等でも執筆中。 |
大家好!アイチーです。いやぁ、マサラさんの蘭州拉麺の旅、読みごたえありましたね!わたしも蘭州へ飛んで行きたくなってしまいました。
とはいえ仕事柄、なかなかたっぷり連休が取れないもの。さすがに甘粛省蘭州市までは「じゃ、次の休みにちょこっと行って来るか!」と言える距離ではないのが悩みどころです。
しかし今の日本、劇的な勢いで各地に蘭州牛肉麺の店が増加中。そこでこの記事では、蘭州拉麺のスタンダード「一清 二白 三紅 四緑 五黄」を満たす5軒を、東京・埼玉・千葉からピックアップ。
さらに、頼むときも食べるときも「ここさえ押さえておけば、蘭州を旅しているように蘭州牛肉麺を楽しめる!」というポイントをご紹介したいと思います。
麺の指定は最初にしよう!
目の前で打ちたての麺を食べられるのは蘭州拉麺店の醍醐味。いろいろ食べ歩いてみると、日本の店では2〜4種類から選択でき、細麺を基本とするところが多いようです。
注文時「麺はどうしますか?」と確認してくれる店もありますが、麺の太さと形を指定したいときは自分から伝えましょう。何も言わないと、店が設定している基本形が提供される場合があります。
ちなみに本場蘭州市では、麺の太さと形は以下のように細分化。その数なんと12種類!
▼円形麺(6種類) 毛細(直径0.5〜1mm) → 細 → 三細 → 二細 → 一細 → 二柱子(5〜7mm) ▼平麺(5種類) 韮葉(幅5mm程度、韮の葉くらい)→ 薄寛 → 寛 → 大寛 → 皮帯寛(30〜40mm程度、ベルトくらい) ▼三角形麺(1種類) 蕎麦棱(蕎麦の実のような形) |
今回ご紹介する店では、西川口「ザムザムの泉」の基本9種類対応が最多です。同店では、状況によって「◯◯と◯◯の間くらいで」なんていうオーダーができるときもありますよ。
手延べ麺の見物ポイントは?
オーダーしたら、職人さんの技を見つつ、できあがりを待つのも蘭州拉麺の楽しみです。麺づくりのプロセスは、
①和面(生地を作る)
②醒面(生地を寝かせる)
③吊面(こねる・引っ張る・台に打つ)
④溜条(空中でツイストドーナツ状にクルリと巻きつける)
⑤拉面(引っ張って麺状にする)
の5工程。生地はあらかじめ準備されていることが多く、人気店となると1日何度も追加して作る場合も。
こうして数秒のうちにサーッと作り分ける技は圧巻!製麺が終わったら、⑥煮面(ゆでる)を経て、麺はどんぶりへと入ります。
蘭州拉麺の基本形
さぁ、蘭州拉麺ができあがってきました!蘭州拉麺を構成する5つの要素は、コチラです。
蘭州牛肉麺を構成する5つの要素
①一清(清らかに澄んだ牛骨牛肉スープ)
②二白(良いスープで煮込まれた大根)
③三紅(スープを引き立てる辣油)
④四緑(彩や味のアクセントとなる香菜、葉にんにく)
⑤五黄(高い技術を施された、薄黄味がかった手延べ麺)
さらに、⑥六黒=黒酢は“味変”を楽しめるプラスアルファの要素。卓上に置いてあったり、伝えると持ってきてくれるところもあります。加えるとまろやかな酸味が生まれますので、後半にちょい足ししてみては。
また、煮込まれた牛肉(醤牛肉)も重要なポイント。蘭州では別オーダーとなりますが、日本ではあらかじめ具として載っていることがほとんどです。
牛肉は脂肪分が少なめ、コラーゲン質が多めのスネ肉等をじっくり煮込んでおり、店によって厚切りだったり、脂多めの部位を使っていたりと違いがあります。
では、各店の5大要素はどのようになっているのでしょうか?
「一清 二白 三紅 四緑 五黄」まるわかり
①一清(清らかに澄んだ、牛骨牛肉スープ)
まず、スープは各店とも「牛骨・牛肉を、数十種類の漢方スパイスと煮込んでいる」とされています。しかし実際に味わってみると、その違いは実にさまざま。ここは一番好みが分かれるところかもしれません。
こちらは池袋「蘭州拉麺 火焔山」の漢方入り蘭州ラーメン。一清(スープ)は旨味と甘味がしっかり。二白(大根)は半月切りが2枚ほど。三紅(辣油)はコクのあるスープの引き締め役で、香ばしさが身上です。四緑は香菜と万能ネギの合わせ技。五黄(麺)は細と平打ち(寛)、三角(蕎麦棱)の3種類で、量はたっぷり250~300g!
②二白(良いスープで煮込まれた大根)
大根も、厚みや形、煮込み加減、枚数が各店異なります。しっかりスープが染みているとおいしいですね。
こちらは神保町「馬子禄(マーズルー)」の蘭州牛肉面。一清(スープ)はほの甘く、スッキリとして飽きの来ない味わい。二白(大根)は銀杏切りで、しっかりとスープが染みています。
三紅(辣油)は焙煎の香味がしっかりしており、四緑は香菜と万能ネギ。五黄(面)は細、平打ち(韮葉)、三角(蕎麦棱)の3種類を提供しています。
③三紅(スープを引き立てる辣油)
そしてスープの引き締め役となるのが「三紅」。蘭州拉麺に使われている辣油は油泼辣子(ヨウポォラーズー)といい、唐辛子やゴマなどがザクザクと底に沈んでいる「食べるラー油」のようなものです。
各店自家製が多く、辛味だけでなく香ばしさも楽しめますが、辛さが苦手な方は、麺のオーダー時に辣油なしでと伝えましょう。途中で加えたくなったら、卓上に辣油がありますので、好みの量をかけることができます。
こちらは六本木「金味徳」の蘭州牛肉拉麺。一清(スープ)は国産の牛骨と20種類の香辛料を6時間煮込んだもので、他店とはちょっと色味が違いますね。
二白(大根)は半月切り、三紅(辣油)は8種類の唐辛子をブレンドしており、スパイス多め。四緑は香菜を少々。五黄(麺)は細、三細、寛麺、三角(蕎麦稜)の4種類から選べ、細麺だと128mになるそう!
③四緑(彩や味のアクセントとなる、香菜やにんにくの芽)
彩を香りを添える薬味は、日本だと香菜だけのところが多いよう。好みでさらに追加ができるよう、各店トッピングメニューとしても扱っています。白葱を使うところもありますが、薬味としての「引き立て役」を超え、主張が強くなってしまうような…。
こちらは千葉市「蘭州牛肉麺」の蘭州牛肉麺。一清(スープ)は牛ゲンコツと数十種の漢方食材を煮込んだもの。二白(大根)はそのスープで煮込んだ薄イチョウ切りの大根が4片入っています。
三紅(辣油)はかけないで運ばれてきますので、初めピュアな一清の味わいを楽しんだ後、卓上の辣油を加えましょう。やさしい辛味で、ゴマの香りが立っています。四緑は刻み香菜がやや多め。五黄(麺)は細、平打ち(韮葉)、三角(蕎麦稜)の3種類を打ち分けてくれます。
ちなみにシェフは本場蘭州市がある甘粛省の東隣、寧夏回族自治区のご出身。手延べ技術が高く、三角麺(荞麦棱)のシャープな仕上がりにウットリ!
③五黄(高い技術を施された、薄黄味がかった手延べ麺)
最後に蘭州拉麺最大の特徴といえる麺。こちらは同じ店でも、太さや形によって異なる印象を受けると思います。スープが気に入った店があれば数回通って、自分好みを見つけたいですね。
こちらは西川口「ザムザムの泉」の牛大(蘭州拉麺の異名)。一清(スープ)は文字通り透明感があり、二白(大根)は半月切りが2枚ほど。三紅(辣油)は色鮮やかで香ばしさがあり、四緑は香菜と小葱が散らしてあります。驚くのは五黄(麺)で、9種類の打ち分けが可能という圧倒的な技術力。写真は大寛で、厚いひもかわうどんのよう!
「肉蛋双飛」が現地にいる気分を加速!
そして、写真をご覧になってお気づきでしょうか。もうひとつのお楽しみが「肉蛋双飛(肉蛋双飞:ロウダンシュアンフェイ)」こと、卵です!
こちらは定番のトッピング。茶葉蛋(茶葉の風味をつけて煮た卵)や、鹵蛋(中華風醤油味の煮卵)があれば、ぜひ加えてみてください。
「牛大、肉蛋双飛(ニウダァ、ロウダンシュアンフェイ)」なんて注文すれば、あなたも蘭州人!お店の人をびっくりさせちゃいましょう!
そして今回ご紹介したポイントをチェックしながら、各店それぞれの個性を楽しみつつ、ぜひお気に入りの「My 蘭州拉麺店」を見つけてくださいね。
店舗DATA
馬子禄 東京都千代田区神田神保町1-3-18(MAP) 03-6811-7992 |
ザムザムの泉 埼玉県川口市西川口3-32-9 メゾン里山東側(MAP) 048-299-4628 |
火焔山 蘭州拉麺 東京都豊島区池袋2-47-7(MAP) 03-6907-1765 |
金味徳 東京都港区六本木7-14-1 宝祥ソシアルビル1~2階(MAP) 03-6438-9630 |
蘭州牛肉麺 千葉県千葉市若葉区東寺山町934-1(MAP) 090-9641-9137 |
※各店の麺の状態は撮影時のものです。肉の枚数や大根のカット等、常時同じではありませんのでご留意ください。また、営業時間等はご自身でご確認の上、訪店を!
text アイチー
photo アイチー(ザムザムの泉・金味徳・蘭州牛肉麺)、佐藤貴子(馬子禄・火焔山 蘭州拉麺)