神奈川県藤沢市は、観光地・江の島近くに片瀬漁港があり、毎日イキのいい地魚が水揚げされる。また、市の北部は多くの農家があり、一年中野菜も豊富に収穫されるエリアだ。

その海の幸、山の幸をふんだんに料理に取り入れたいとの熱い思いで、藤沢駅近くに7月29日にオープンしたのが「fu-fu shisen(ふーふーしせん)」。なんとこの店、肉類を一切使わず、魚介類と野菜だけでオリジナリティの高い中華料理を食べさせてくれる、相当にユニークな店でもある。

fu-fu shisenのウッディなエントランス。

妻が夫をプロデュース!? 目指すは女性も入りやすい中華

店を営むのは、廣木臣尚(たかなお)さん、みきさん夫妻。廣木シェフは、横浜の「トゥーランドット 游仙境」から修業をスタ―トし、その後は「芝蘭」など主に四川料理の名店で腕を磨いた。みきさんはイタリア料理店などでサービスに従事してきたそうだ。

店主の廣木臣尚さんとみきさん夫妻。

まだ開店数日という「fu-fu shisen」に行ってみると、店のインテリアもおよそ中華料理店のイメージからはほど遠い、カフェまたはイタリアンレストラン風のしつらえ。

そう書くと、ふたりの得意分野をうまくコラボレーションした店とも思えるが、実は店のコンセプトはほとんど妻のみきさんのアイデアに基づいたものだとか。

その日水揚げされた魚介でつくる、おすすめの料理は黒板メニューでチェック。
イタリアンかスペインバルのようなインテリア。

「僕は最近まで四川料理一本でやってきたので、料理とはこういうものだと、決めつけてしまうところがあって。だけど最近は、よだれ鶏でも麻婆豆腐でも、おいしいのは当たり前という時代、そこをどうにかひねって個性を感じる料理を出したいと、いろいろ考えていました。

そんなとき、肉料理をやらない、というアイディアを彼女から出されたときは、ちょっと悩みました。けど同時におもしろいな、とも思いました」(臣尚さん)

「どんな無理な要求でも、自分ならおいしくできる、という自信を持っている人なので、じゃ、やってもらおうじゃないってお願いしました(笑)。

中華料理は男性的な料理のイメージがありますけど、女性の方にも気軽に来ていただけるような店にしたかったので、料理も店の雰囲気も、食器やサーブのしかたも、どこかかわいらしいものになりましたね」とみきさん。「プロデューサーには、逆らえませんからね(笑)」と臣尚さん。

一度にいろいろなものを味わって欲しいという気持ちから、ほとんどの料理は、小皿でサーブされる。あれもこれも頼みたい人にはうれしいポーション。値段も1,000円以下のものがほとんどだ。店名の《fu-fu》も夫婦を意味するネーミングと聞けば、なるほど納得。

食材だけでなく、見るほどに、話を聞くほどに、「えっ?」「おっ!」とか次々と驚かせてくれるような意外性がどんどん出てくるので、食べる前からワクワクしてしまった。

魚介は地元鮮魚店から。香辛料と発酵調味料で唯一無二の味わいに

魚介類は、地元の「藤保水産」で仕入れている。廣木シェフが品揃えのよさと地魚の豊富さに惚れ込んだ鮮魚店だ。

看板メニューになりそうな「麻辣魚(マーラーユイ)」は、四川料理ならではの発酵調味料のたれと、昆布締めしたムツを合わせたもの。別名よだれ魚。昆布のうまみをまとわせたムツと、真っ赤なたれのなんと相性のいいこと。

「麻辣魚(マーラーユイ)」800円

また、地物の丸々と太ったイワシを丸ごと使った「四川風いわしの炙り焼き」は、花椒や数種類の唐辛子に、タイ料理などで使うコブミカンの葉などをミックスした自家製調味料で炭焼きしたもの。香り良く、ふわりと柔らかく焼き上がっていて、どんどん箸がすすむ。

「四川風いわしの炙り焼き」580円

「『芝蘭』に入ったとき、辣油を自家製で作っていたのですが、その味に驚き、感動しました。いま僕が作っている自家製辣油も、その味がベースになっています。一味唐辛子で辛みを、韓国唐辛子で赤みを、朝天唐辛子でコクを、と辣油だけでも3種類の唐辛子を使うんです。

やっぱり四川料理の魅力は香辛料と発酵調味料の種類の多さですね。同じ発酵調味料を使っても、そのタイミングやちょっとしたさじ加減で、全然違う味わいが生まれます。そこが一番おもしろいし、やりがいがある部分でもありますね」。

四川料理に欠かせない朝椒など香辛料が並ぶ。

豚肉不使用、麺は自家製。天然酵母の中華パンも!

また、「麻婆豆腐」には、豚ひき肉の代わりに大豆ミートを使っている。食べてみたけれど、説明されなければ気づかない。麺も自家製だが、主に中力粉を使い、かんすいを入れてないのでモチモチとした食感がなんともいい。

さまざまな大豆ミートを試したのち、決めたのがこれ。
「汁なし担々麺」750円。イタリアの中力粉を使って作る麺の上には鯖のコンフィ。58℃でしっとりと火を通している。

また中華風のパンは、大事に育てているレーズン酵母を使った全粒粉の天然酵母パン。これもみきさんのリクエストで、はじまったとか。調味料もキビ糖をはじめ、身体に良いものを使い、身体にやさしい味つけを心がけているのもこの店の特徴だ。

「いい食材をおいしく食べてもらいたいので、中華料理の技術だけでなく、昆布締めや、魚のあらで出汁をとるなど和食のワザや、コンフィのような洋食の手法も取り入れています。まだ店はスタートしたばかりなので、季節の食材を大事にしながら、四季を通して個性的な料理を出していきたいと思っています」(臣尚さん)

オーナーシェフの廣木臣尚(たかなお)さん。

fu-fu shisen(ふーふーしせん)

住所:藤沢市鵠沼橘1-1-15 富洋ビル1F(MAP
アクセス:藤沢駅南口より徒歩4分
電話:0466-52-8080 ※席数が少ないため、予約してからの来店をおすすめします。
席数:14席
営業時間:17:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:月曜
各種小皿料理500円~
水煮魚~白身魚のからし煮950円、酸菜鮮貝~アサリと高菜の発酵スープ蒸し800円、沸騰魚~白身魚のとうがらし香りオイルかけ950円

 


text 北條尚子
photo 塩谷卓也

中華・高橋が作るよだれ鶏のタレ
日本橋古樹軒

※情報は掲載時のものです。内容は後日変更される可能性がありますので御了承ください。

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