個人的な話で恐縮ですが、文京区千石に4年少々住んでいました。
千石は、とげぬき地蔵や「おばあちゃんの原宿」の愛称で知られる巣鴨と、東洋大学のある白山の間。縁のない方はまったく縁のない場所かと思いますが、実はここ、引っ越しても通いたくなる店がたくさんあるエリアなんです。
アジア料理であれば、日本初のモンゴル料理店「シリンゴル」。ケーキを買うなら、ホテル西洋出身のパティシエが、実家の金物屋を改装して開いたフランス菓子店「トレカルム」。
食いしん坊の間で話題のイタリアン「DA PEPI(ダペピ)」や、「コーノ式ドリッパー」をはじめ、コーヒー機器のパイオニアとして知られる珈琲サイフォン株式会社も界隈にあります。
すべて手書き。メニューに描かれた料理と四箇条。
そんなこだわりの店が集まる千石に、2018年8月下旬にオープンしたのが待望の中華。四川家庭料理の店「中洞(なかほら)」です。
オーナーシェフの中洞新司さんは、神楽坂「芝蘭」の料理長として腕を振るい、語学留学の傍ら、四川省成都の料理店で修業も重ねた四川料理のプロ。
メニューをめくると、目に飛び込んでくるのは「当店の四箇条」。日本と四川、両方での経験を経て、導き出されたモットー、これが実にすばらしい。

咸鮮醇香(しっかりした下味がコクと香りを生む)
微辣不燥(程良い辛さで汗をかき、余分な湿気や毒素を排出する)
香気四溢(良い香りが辺りに漂う)
百吃不厭(何度(百回)食べても飽きない)
※上記、簡体字を日本の漢字にしています。「微辣不燥」は「辛さは控えめで汗をかきすぎず、身体の水分を奪わない」という意味合いにも読めますね。
お伺いしたのは日曜のランチ。メニューは6種類で、サービス担当の奥様のおすすめ通り「① 中洞特製麻婆豆腐」と「② 唐辛子・肉そぼろ和え麺」をオーダーしました。
あと味が心地よい、中洞特製麻婆豆腐

運ばれてくるなり、花椒の爽やかな香りが漂う麻婆豆腐は、まさに「香気四溢」。ひと匙すくって口に運べば、角の丸くなった豆腐はぷりんとしてハリがあり、するんと心地よい口当たりです。
また、ほどよく粒感のある挽き肉は「咸鮮醇香」。煮込まれた豆腐にしっかりと寄り添い、じわりと旨みを加える役割を担っているよう。
見た目は赤いものの、辛さは「微辣不燥」でしつこくなく、後味がいい。この1皿、まさに先ほどの「4箇条」にぴたりと当てはまるものでした。

甜醤油が決め手!唐辛子・肉そぼろ和え麺
さらにもうひとつオーダーした「唐辛子・肉そぼろ和え麺」。これが私のツボど真ん中。

極細の麺の上に載っているのは、ひき肉とササゲを刻んだ肉味噌とゆでキャベツ。麺の太さは素麺と冷麦の間くらいでしょうか。細いのにむっちりとして、次へ次へと麺を手繰り寄せたくなる食感です。
聞けば、このために特注している粉と水だけで練った麺とのこと。くせのないストレート麺は、四川の麺を彷彿とさせますね。

味の決め手は甜醤油。角の取れたスパイスの風味と、熟れた甘さ、そこに辣油の香りと辛さが加わり、ぐんぐん箸が進みます。
ぜひ2~4人で行ってシェアしては…とご紹介したいところですが、この麺は、本能的に人と分け合いたくないおいしさ。ぜひ独り占めでお楽しみください。

お子様連れからお年寄りまで、みんなにやさしい動線設計
印象に残るのは、料理だけではありません。この場所は以前イタリアンだったのですが、「中洞」では店内を改装し、お子さまやお年寄り、お一人さまにもフレンドリーな設計に。

例えば壁際のベンチシート。ここなら、かさばる荷物を置きやすく、小さなお子さまも寝かせやすい。店内を見ると、お子さま用のクッションも用意されていました。
また、私たちが座った窓際にある席は、端で出入りしにくいことを考慮して、ダイニング用の回転椅子を設置。入口こそ階段が数段ありますが、いろいろと配慮されています。
日曜の昼過ぎ、ご近所のお一人さまも次々訪れる一方で、ベビーカーのお子さま連れの方も食事を楽しむ風景がここに。
どなたさまにも利用しやすく、料理は本格的。さらに化学調味料を使わないのも店のこだわりです。近所にこういう店があると、日々の暮らしの幸福度が上がりますね。今度は夜行こう。

| 四川家庭料理 中洞(なかほら) 住所:東京都文京区千石4-43-5 ラピュタ千石大武ビル1F アクセス:JR・都営三田線巣鴨駅、三田線千石駅より徒歩6分 TEL:03-5981-9494 OPEN:ランチ11:30ー13:30 ディナー17:30ー20:30 定休日:主に月曜・火曜が中心(祝日の場合は営業。翌平日休) ※毎月の営業日はInstagramに掲載しています 備考: ・店主は香りに敏感のため、香水や柔軟剤などの強い香りをまとってのご来店はご遠慮いただいております。また、喫煙後すぐのご来店もお控えください ・火鍋は3日前までに要予約/おまかせ2名様~/料理のお持ち帰り対応可 |
text & photo 佐藤貴子(サトタカ)







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