中華料理店の掲載は26店舗!

店選びのひとつの指標である『ミシュランガイド』。今年で13年目となる『ミシュランガイド東京 2020』は、2019年11月29日(金)の発売です。

そのオフィシャルサイト『クラブミシュラン』では、ガイドブックの発売に先駆け、11月26日(火)から掲載店を期間限定で無料公開中。

中華料理店の掲載は、2016年版は19店舗、2017年版は21店舗、2018および2019年版は26店舗と数を増やしてきましたが、最新の2020年版はどうなっているでしょうか。さっそくご紹介していきましょう。

※()内は所在区/最寄り駅です。
※新たに加わった店はNEWマークをつけています。

【二つ星★★】2019年から不動の2店舗

茶禅華(港区/広尾)
御田町 桃の木(港区/三田・田町)

二つ星の定義は「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理 ―熟練した技術で丹念に仕上げられた料理は、シェフの個性と能力をしっかり示している―」レストラン。昨年同様「茶禅華」と「御田町 桃の木」が二つ星に輝きました。

「茶禅華」は〈和魂漢才〉をコンセプトにした旬のコースに、ドリンクペアリング、広尾の一軒家という空間およびロケーションと三拍子そろったファインダイニング。今ここで提供できる最高のものを体験してしてもらいたい…そんな意思をも感じるサービスを、圧倒的なチームワークによって実現しているレストランです。

茶禅華

もう一店の「御田町 桃の木」は、磨き抜かれた料理を安定した味わいで提供するレストラン。鎮江黒酢の酢豚、パパイヤの蒸しスープといった定番のスペシャリテもあり、厳選されたワインも取り揃えています。小林武志氏シェフは「日本橋 古樹軒」の料理教室「中国料理の友」レギュラー講師としても人気ですね。

御田町 桃の木

【一つ星★】2019年より2店舗減の8店舗

一つ星の定義は「そのカテゴリーで特においしい料理 ―常に良質な料理を提供している―」レストラン。選出されたのは以下の店です。

厲家菜 銀座(中央区/銀座)
瑞雪(世田谷区/梅ヶ丘)
銀座 やまの辺 江戸中華(中央区/銀座)
センス(中央区/三越前)
ミモザ(港区/表参道)
私厨房 勇(港区/白金)
琥珀宮(千代田区/東京)
富麗華(港区/麻布十番)

2020年の一つ星は2店舗減。新規店はなく、昨年と同じ顔ぶれでした。特徴をまとめると、個室があり、接待や会食などの場にも適する高品位なレストランが「厲家菜 銀座」「富麗華」、ホテル中華はマンダリンオリエンタル 東京の「センス」およびパレスホテル東京の「琥珀宮」。

カウンターメインのオーナーシェフ店が「やまの辺」「勇」、上海料理をベースに、シンプルで洗練された料理がいただける路面店が「ミモザ」、広東料理をベースに、世田谷の住宅街で愛されてきた店が「瑞雪」。こう見ると、店の方向性は実にさまざまです。

一つ星の定義にある「特においしい」「常に良質な料理」という言葉は、主観的な基準にもなり得るからかもしれません。いずれも人気店ではありますが、この8店舗が選出されたポイントが伝わりにくい印象もあります。

なお「快適度」を表現するスプーン&フォークのマークがついた店の中でも「特に魅力的」な店は、昨年同様「厲家菜 銀座」「センス」「琥珀宮」。マークが3つ揃ったこの3店は、きちんとした接待ができる店の指標となることでしょう。

【ビブグルマン】新たに3店舗追加!昨年よりプラス2の16店舗

ビブグルマンの定義は「コストパフォーマンスの高いレストラン ―丁寧に作られた良質な料理が手ごろな価格で楽しめる―」レストラン。選出されたのは以下の店です。

中国菜 智林(新宿区/神楽坂)NEW
遊猿(新宿区/四谷三丁目)NEW
O2(江東区/清澄白河)NEW
豊栄(文京区/茗荷谷)
中国食酒坊 まつもと(杉並区/西荻窪)
ENGINE(新宿区/神楽坂)
中華香彩 JASMINE(渋谷区/広尾・恵比寿)
jeeten(渋谷区/代々木上原)
中華酒家 大三元(墨田区/錦糸町)
中華銘菜 圳陽(中野区/東高円寺)
なかの中華!Sai(中野区/中野)
中国菜 膳楽房(新宿区/神楽坂)
錦福 香港美食(千代田区/九段下)
Matsushima(渋谷区/代々木上原)
中国四川料理 梅香(新宿区/神楽坂)
くろさわ東京菜(大田区/大森)

今年新たに掲載されたのは3店舗。2019年神楽坂にオープンした「中国菜 智林」、鉄板も使ったダイナミックな料理が楽しめる、荒木町「遊猿」、今のイーストサイド・トーキョーらしさに溢れた、清澄白河「O2(オーツー)」が加わりました。

遊猿
O2(オーツー)

なお「中国菜 智林」は、以前よりビブグルマンに選出されている「膳楽坊」の姉妹店。同じ神楽坂エリア、かつ、同じオーナーの店が2店舗入るという快挙でした。

『ミシュランガイド東京 2020』雑感

今年の中華料理カテゴリは、正直なところ新鮮味は感じないセレクションでした。よい・わるいということではなく、あまり変動がなかったこと、東京の中華で80C(ハオチー)編集部が感じた今年の勢いは感じられなかったことなどが主たる理由です。

では、今年の中華はどうだったのでしょうか。詳しくは、12月に掲載予定の80C(ハオチー)年末恒例のまとめ企画でご紹介したいと思いますが、かいつまんで振り返ると、昨年に引き続き、四大中華、八大中華といった従来のカテゴリに収まらない中華料理の認知が高まり、人気も獲得してきた年だったのではないかと思います。

また、今の東京はビャンビャン麺(陝西省)、沙県小吃(福建省)、手作りの肉まんや焼きまんじゅう(中国東北地方中心)、葱油拌麺(中国江南地方)など、中国のローカルな軽食がよりどりみどり。これらを入り口に、中国料理という大きなくくりではなく、各地方に伝わる中国郷土料理の魅力に開眼した方も増えたのではないでしょうか。

さらに日本人オーナーやシェフの店では、「老四川 飄香(ピャオシャン)麻布十番本店」や「中國菜 四川 雲蓉」のように、中国現地でも限られた店でしか提供していない伝統料理を手がける店もあれば、中国料理の一ジャンルを徹底的に追求した修行時代を経て、その型にこだわらずに料理を出していく店も出てきています。特にこれから、日本人オーナーの店は、より多様性が増していくでしょう。

以上、『ミシュランガイド東京 2020』紹介記事ではありますが、中華の新店情報やこだわりの食材等の情報は、引き続き80C(ハオチー)でお楽しみください。


text & photo 佐藤貴子(サトタカ)