同店は閉店しました。2023年現在、高田馬場に系列店がオープンしています。

関内駅からほど近い、横浜・伊勢佐木町商店街。ストリートミュージシャンからスターダムに駆け上った「ゆず」や、セクシーな歌声で多くの男性を虜にした、青江美奈の「伊勢佐木町ブルース」で、街の名を耳にしたこともあるだろう。

明治時代から続く、由緒正しい商店街だ。

そんな伊勢佐木町には、広東スローフードを提唱する「龍鳳をはじめ、香酥牛肉餅(牛肉パイ)や羊湯が楽しめる「金鴻運」、台湾北部の粽をはじめ、手作り点心、かつて永楽製麺所で出していた伊府炸麺などを販売する「茂園 伊勢佐木町店」など、個性ある店が至近距離に集まっている。

なんならこの界隈だけで1日中華三昧もできる。詳しくは「ツールドチャイナ横浜1」をご覧いただくとして、今回ご紹介するのは、目抜き通りから少し横道に入ったところある「五条人糖水舗」。ほとんどの甘味を1品350円(税別)で提供している広東系スイーツ専門店だ。

五条人糖水舗。円の中に描かれているのは獅子舞の獅子。外観には400とあるが、現地サイトを参照すると、中国で約500店舗を展開するチェーン店となっている。

甘いものは別腹!シェアして食べたい「スイーツ火鍋」

メニューを見ると、双皮奶(広東式蒸しミルクプリン)、西米露(タピオカ)、糊類(お汁粉)、糖水(果物や乾物のシロップ煮やデザートスープ)、涼粉(仙草ゼリー・亀ゼリー)、小食(軽食)…と、それぞれ「系列」で分類しているのが現地っぽい。

メニュー。Twitterで最近話題になった桃膠(桃の樹液)入りの双皮奶もある。なるべく多くの方に香港スイーツを味わってほしいということから、原価に近い価格で提供されているとか。

そのメニューの中で、ひときわ目を引くメニューが糖水捞火锅(糖水撈火鍋)、日本語でスイーツ火鍋だ。

スイーツ火鍋

「捞(lāo:ラオ)」とは、水などの中から「掬い取る」という意味で、火鍋から甘味を掬って食べるスタイル。「小」と「大」のサイズが選べ、火鍋スープにあたる「汁」は、ココナッツミルクか生姜ミルクが選べる。

オーダーした「小」は、鍋の直径20数cm。3~4人でも十分シェアできる大きさだ。

スイーツ火鍋(小)680円(税別)。大は980円(税別)。金のポットに白い煙が『アラジンの魔法のランプ』のよう。

火鍋の中をのぞいてみると、湯圓(白玉団子)や仙草ゼリー、ミルクプリン、桃膠(桃の樹液)、角切りのドラゴンフルーツ、マンゴー、小豆餡など、他の単品糖水に入る具のオールスター。これで680円(税別)とはかなりお値打ち。

金色のポットからミルクを注ぐと、鍋の中から湯気があふれ出ているように見えるのも楽しい。実はこれ、火鍋の筒の部分にドライアイスが入っており、そこからけむりが湧き出ているのだが、わかっていても楽しくなってしまう演出だ。

嬉しくなってさらにミルクを注ぐと、煙で水面が見えにくいため、つい注ぎ過ぎてしまうがそれもまた一興。

ドライアイスの煙で水面が見えず、ついつい注ぎ過ぎる。手前の金色の塊が桃膠。

口にすると、甘さは控えめ、思いのほかさっぱりとしていて食べやすい。火鍋のつけだれポジションとして、チョコソース、練乳、チョコビスケットのトッピングもあるが、使わない方が味のまとまりはよいようだ。使わなければ、キワモノではなくけっこう正統派に落ち着くと思う。

それにしても、中国のどこかに「鍋に糖水を入れよう」と思った人がいるのだよなあ。日本だったら「土鍋かき氷」「土鍋おしるこ」という感じかもしれない。

揺らしたい衝動!白豚ココナッツミルクプリン

そんな火鍋スイーツに次ぎ、皆の注目を集めたのが「猪猪冻(ヂュヂュドン:猪猪凍)」。白豚を模したココナッツミルクプリンである。

自分1人だったら頼まないが、大勢いるとオーダーしたくなるのがこういうメニュー。そして、運ばれてくるこの豚を見た全員が思った。「この皿を揺らし、豚をぷるぷるさせたい」と…!

白豚ココナッツミルクプリン。

この後、順番に全員が皿をぷるぷるさせたのはいうまでもない。謎の共同作業発生。

小刻みに揺らすのがポイント。誰かが揺らし、誰かが撮る。金木犀のシロップもついている。

ちなみに同店、現代中国的甜品だけではない。パパイヤと仙草ゼリー入りココナッツミルクといった正統派の広東スイーツもあれば、広東省順徳名物、炸牛奶(揚げミルク)など、ローカル感溢れる甜品の用意もある。

木瓜椰汁西米露涼粉(パパイヤと仙草ゼリー入りタピオカミルク)350円(税別)。左奥は広東省順徳名物、炸牛奶(揚げミルク)。

さっぱりとして甘さ控えめがお好みなら「涼粉系列(仙草ゼリー・亀ゼリー)」がいいだろう。2~3人なら、先ほどご紹介した「スイーツ火鍋」もおすすめできる。

また、スイーツだけでなく牛バラ煮込みそばや、大根と牛モツの煮込みなどの軽食のラインナップも充実。

中国現地にいるような雰囲気。店内はスタッフのお子さんがいて、アットホームな雰囲気に和んだ。

伊勢佐木町に行ったらちょっと覗いてみたくなる店でもあるし、近所にあったら、ちょっと小腹が空いたときや気分転換に重宝しそう。こういう気軽な場が、ちょっとした社交場になるものだ。

>ツールドチャイナ横浜3|料理だけじゃない!蒔田の老舗「廣東楼」の楽しみ方
五条人糖水舗
神奈川県横浜市中区長者町6-94(MAP
横浜市営地下鉄 伊勢佐木長者町駅 徒歩3分、JR根岸線 関内駅 徒歩8分
TEL 050-3464-5290
営業時間 11:30~21:00
不定休
席数 16席
禁煙

TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)