鶏肉と干し椎茸でつくる北菇滑鶏煲仔飯(鶏もも肉と椎茸の香港式土鍋ごはん)の作り方
今回ご紹介するのは、材料を入手しやすくお財布にもやさしい、鶏もも肉と干し椎茸の煲仔飯(ボウジャイファン)。
プロセスは ①具を炒める→②米を炊く→③具をのせる→④おこげをつける という4ステップだ。米を炊く時間は累計で13~15分、コンロの前で火加減を見ていたら、あっという間に炊き上がる。
北菇滑鶏煲仔飯(鶏もも肉と椎茸の香港式土鍋ごはん)のレシピ(7号または6号の土鍋1つ分|2~4人前)
<米の準備>
長粒米 200g ※ここではタイ産ジャスミンライスを使用
水 200g
塩 1g(ひとつまみ)
サラダ油 3g
<具>
鶏もも肉 75g
干し椎茸(水で戻したもの)10g
長葱 5g
生姜 5g
鶏卵 1個
<具を炒める調味料>※サラダ油以外は合わせておくと楽
サラダ油 10g
料理酒 20g
オイスターソース 15g ※ここでは李錦記ブランドを使用
濃口醤油 3g
グラニュー糖 5g
白胡椒 少々
ごま油(焙煎タイプ)3g
<かけだれ>※すべてを合わせておく
濃口醤油 10g
オイスターソース 5g
グラニュー糖 5g
ごま油(焙煎タイプ)3g
<薬味>
小葱 適量
※土鍋での炊飯に慣れるまでは、炊くときにタイマーで時間設定すると楽です。
1【たれ】かけだれの材料をすべて合わせておく。
かけだれの材料を混ぜ合わせるのは、米を炊いている間にやってもいいが、慣れないうちは最初に作っておくとラクだ。
「今回のたれは、日本の濃口醤油とオイスターソースをベースに、香りづけにごま油を入れるレシピです。店では広東省の海天醤油の老抽(たまり醤油)、生抽(濃口醤油)、水を3:1:1くらいの割合で合わせ、最後に熱々に熱した葱油を調味料の上にじゅーっと加えて香りを出しています」(山﨑さん)
2【具】材料をカットし、炒め調味料を準備する。
鶏もも肉、干し椎茸、長葱、生姜はすべて1cm角に切る。生姜は皮付きのままで問題ない。「皮付きのほうが、香りが強くなります」(山﨑さん)
具を炒める調味料は、サラダ油以外はすべて合わせておくと楽。若干分量が前後しても、かけだれとおこげの力も仕上がりの味に影響するので、それほど計量には神経質にならなくてもいい。
3【具】炒めて、味を付ける。
フライパンにサラダ油を入れて熱し、カットした鶏もも肉を広げて火にかける。鶏肉を入れたら、あまり細かく動かさず、表面が固まるまでそのまま動かさずに焼こう。炒めることで、鶏肉の皮と肉の間から油がでて、香りもよくなる。
実は香港ではこの工程はなく、生肉を入れて最後まで炊き切っている。なぜ炒めるのかというと、「家では人によって具の大きさに違いもあるし、万が一、食材に火が通らなかったら困りますよね。そこで今回はあらかじめ具をフライパンで炒めることにしました」と山﨑料理長。
鶏もも肉に8割ほど火が通ったら、干し椎茸、葱、生姜を入れて香りがでるまで炒める。調味料を加えたあとは軽く混ぜ合わせる程度でOK。全体に調味料が回ったら、別の器にとり分けておこう。
4【炊飯】鍋に米を入れ、強火にかける。
<目安:強火で4分間炊く>
かけだれと具が準備できたら、いよいよ炊飯だ。ジャスミンライスをサッと洗って水を切ったら、土鍋に水と油、ひとつまみの塩を加えて強火にかける。
ジャスミンライスは軽く洗う程度でよく、日本のうるち米のように浸す必要はないので、すぐに炊けるのがメリット。浸しておいておくのではなく、材料を入れたらすぐに火にかけよう。
「煲仔飯は炊きあがったとき、米と具に一体感があることが大切です。それには、米と水を合わせる際に、塩と油を加えることがポイント。うちの店ではラードを使って風味を出しています。鍋の焦げが心配な方は、あらかじめ鍋に油を塗っておくのも手ですよ」(山﨑さん)
5【炊飯】ふたの穴から水が吹いたら弱火で3分。
<目安:弱火で3分間炊く>
火にかけて、鍋ぶたの穴から勢いよく水が吹いてきたら、中の水が沸騰したサインだ。この水吹きが見えたら弱火にして、じっくり炊いていく。弱火にすると、穴から水ではなく湯気がでてくる。
6【炊飯】具を入れて、弱火で炊き切る。
<目安:弱火4分間炊く>
ふたを開け、目に見えて水がなくなったら、調理済の具を米の上にのせる。ここからは、米と具を一緒に加熱することで、味の一体感を出しながらごはんを炊き上げていく。
「煲仔(砂鍋)で炊いた場合、米の表面に穴が開いたような状態になるのがひとつの目安です。香港では、先にお話しした通り生の具を入れますが、今回は炒めた具をのせます」(山﨑さん)
7【炊飯】かけだれを回し入れ、おこげをつくる。
<目安:1~3分間強火で香りを確認しながら焼く>
具に火が通り、米に具のうまみが移ってごはんが炊けたところで、煲仔飯の最大の魅力であり調理の山場、おこげづくりに取り掛かろう。あらかじめ合わせておいたかけだれを回し入れたら、強火にして米を焼いていく。
おこげをしっかりつけるなら「土鍋を持って、鍋肌に直接ガスの火を当てるようにするといいです」と山﨑さん。やる場合は、やけどしないように十分注意を。パチパチと焼ける音がして、香ばしい香りが立ってきたら火から下ろす。
8【蒸らす】卵を割り入れて米を蒸らす。
<目安:3分~5分蒸らす>
火を止めた後、3~5分間蒸らすことで、米粒がさらにシャキッとして、土鍋から米を取りやすくなる。卵は火を止めたタイミングで割り入れよう。卵を入れることで、香港式親子丼のような組み合わせが楽しめる。薬味の小葱もここで。
焦げむらがそそる!ジャスミンライスの多彩な食感に悶絶!
鍋のふたを開けると、ほの甘いオイスターソースと醤油の香りに、鶏肉や干し椎茸、ジャスミンライスの芳香がひとつの大きな湯気となって現れる。煲仔飯を食べる前の幸福な瞬間だ。
この状態をしばし眺めたら、待望のおこげを確認したい。鍋肌からしっかりかき混ぜ、具と米と卵をざっくりと混ぜてみよう。
ガリッと焼き焦げた米、まっさらな白い米、たれのかかった艶のある米、面となってガバリと取れるおこげが、鍋の中でまだらな様子を描いていたら上出来だ。
ところどころ焦げた米があるが、「喜記(ヘイゲイ)」の香ばしくシャキッとした煲仔飯のおいしさのポイントはここにある。こんな焼き色ができたら万々歳!!
【まとめ】お米はごちそう!煲仔飯をおいしく炊くコツ
煲仔飯の一番の難所はおこげづくりであり、最も満足感が得られるのもおこげだ。ラストスパートとなる焼き時間の目安は強火で1~3分だが、このプロセスは時間にとらわれ過ぎてはいけない。鍋から立ち上る香りで、鍋を火から下ろすタイミングを見極めよう。
おこげの加減は好みがある。焼き過ぎると米が黒こげになってしまうので、心配ならばかけだれを鍋肌にかけず、焼き過ぎない。アグレッシブにいきたいならその逆を攻める。いずれにせよ、香りが判断基準だ。
また、具を炒める調味料と、かけだれに使う調味料の多くが被っているのもポイントだ。こうすることで味わいに一体感が出る上、かけだれの多少で味の濃さを調整することも可能。一度作ってみて、好みの加減を見つけたら、再びトライしてほしい。具を変えて楽しむのもいいだろう。
具の組み合わせのコツは「うまみがあり、出汁がでる食材と、香りのでる食材を合わせるといいですよ。さらに食感のある食材を組み合わせるのもいいです」と山﨑さん。
香港でよく見る組み合わせとしては、臘腸滑雞飯(腸詰と鶏肉)、鹹魚肉餅飯(塩漬け発酵干し魚と豚ひき肉)、窩蛋牛肉飯(卵と牛肉)、 北菇田雞飯(シイタケとカエル肉)、梅菜肉餅飯(梅菜の漬け物と豚ひき肉)など。
例えば、中華の干し肉である腊肉(ラーロウ)、干し椎茸、干し貝柱など、干してうまみを凝縮させた食材は、出汁も香りもでて使いやすい。食感を加えるなら、広東式なら芥藍(カイラン)、春先の野菜なら菜花を添えてもいいだろう。
パエリア鍋で煲仔飯は炊けるのか?
最後に、おなじ世界の炊き込みごはんを意識して、パエリア鍋で煲仔飯のようなごはんができるのかトライしてみた。やってみると、底がフラットなのでおこげがはがしやすい。
ただし、パエリア鍋で炊く場合は、パエリア同様にもっと水分を多く加える必要がある。土鍋だからこそ、ジャスミンライス:水=1:1(重量比)の割合で炊き上げることができたのだ。もしパエリア鍋で炊きたい方は、パエリアに準じた米の分量で、煲仔飯の具の味付けで炊いてみていただきたい。
もっというと、ビリヤニ愛好家の方にもぜひビリヤニ鍋でやっていただけたらと思っているのだが、家にビリヤニ鍋がないのでできなかった。ともあれ、この味付けでおこげつきの長粒米は、毎日食べても飽きないのではないかと思うほど。具を変え季節を変えハマりそうだ。
取材協力:喜記(ヘイゲイ)銀座店
住所:東京都中央区銀座5-7-10 EXITMELSA 7F
TEL:050-3173-1505
アクセス:東京メトロ銀座駅A2出口より徒歩2分、JR有楽町駅より徒歩7分
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TEXT サトタカ(佐藤貴子)
PHOTO キッチンミノル