INDEX|自家製中華干し肉、腊肉(ラーロウ)を作ろう |
腊肉(ラーロウ / là ròu)とは、中国料理における漬け干し肉のこと。特に四川省や重慶市、湖南省、広東省などでは腊肉づくりがさかん。冬場に街を歩けば、家の軒先やマンションの一角、路上など、あちこちで肉を干す風景が見られます。
そもそも腊肉の「腊」とは旧暦12月のことで、この時期に肉を干すことがその名の由来。今では干し肉を総じて腊肉と呼ぶことが多いようです。
昨今は日本の中国料理店でも自家製する店が増えてきており、じわじわと腊肉の風味と料理が広がっている模様。そこで今回は、家でその腊肉を作ってみよう!という企画です。
聞き慣れない言葉でちょっと難しく感じるかもしれませんが、中国の家庭でも作っているくらいですから難しくはありません。
何より楽しいのは、軒先に肉をぶら下げ、日々肉が締まっていく様子を確認していると、実に豊かな気持ちになれること。また、1つあれば炒めもの、炊き込みごはん、煮込みスープ、シンプルに蒸してお酒のつまみなど、いろいろな料理に使えます。
今回作り方を教わったのは、伝統料理をベースに独自の味づくりを展開する田村亮介シェフ。同店で作り分けている数種類の腊肉の中から、さっぱり塩燻製タイプと、こっくり醤油漬け干しタイプ、2種類の作り方をご紹介します。
「慈華」田村亮介オーナーシェフ
1977年東京生まれ。中国料理店を営む家に生まれ、料理の道へ。1999年「麻布長江 西麻布店」で研鑽を積み、台湾で精進料理を学んだのち、2006年同店料理長、2009年店を受け継ぎ「麻布長江 香福筵」を開業。
2019年、建物老朽化のため外苑前に移転し「慈華(itsuka)」として再オープン。現在は四川料理を中心とした伝統的な料理をベースに、モダンで創作性のある中国料理を提供している。
腊肉づくりへの道|豚肉の選び方
腊肉づくりでまず用意するのは、肉と脂の層がある肉、すなわちバラ肉(三枚肉)です。
バラ肉は、赤身と脂肪が層になっているため、干して肉が締まったときにパサつきにくい肉。また、その脂も調理に使えるため、腊肉や腸詰にも適しています。
選び方のコツは「肉の専門店で購入する場合、肉と脂がきちんと層になっているところをカットしてもらうといいでしょう。なるべく均一な太さのところで切り出せれば、下味を均一に入れることができるので作りやすいです」と田村シェフ。
店ではバラ肉1枚を切り出して使うため、あばら骨(肋骨)周辺の“ゲタ”がついた部分は、凸凹をカットして形を整えるそう。
また、店では皮付きの豚バラ肉を使用。家庭では皮なしが手軽でおすすめですが、噛むときに感じられる皮独特の弾力と旨みは皮付きならでは。中国でも皮付きで作られますので、本格的に作りたい方はトライしてみては。
皮付きの場合、時には皮に毛が残っていることもありますので、気になる時は、剃る、炙る、毛抜きで抜くなどしてきれいにしましょう。
塩漬け、醤油漬け、燻製の道も…!加工で広がる腊肉の世界
腊肉は、腌(イェン /yān = 漬け込み)を経てから干すのが特徴で、漬け込む材料を塩ベースか、醤油ベースにするかで仕上がりの風味が異なります。
塩漬けは、塩と香辛料がベースとなり、比較的さっぱりとして、使う料理をあまり選ばないのがメリット。特にこれからの季節、土鍋煮込みや菜飯にぴったりです。
一方、醤油漬けは、醤油に酒と複数の香辛料を加えた漬け汁を使うため、醤油独特のこっくりとした旨み、奥行きのある味わいが身上。いかにも中国料理らしい香りが食欲をそそります。
さらに干した後、燻製するという選択肢も。現地では風味をよくするだけでなく、保存性を高める目的でも燻製しますが、日本の家庭で作る場合は好みの問題。仕上げの燻製で、食欲をそそる燻し香をまとわせることができます。
塩燻製、醤油味、さらに燻製…。さあ、どの味付けでいきましょうか。まずは次ページで、塩燻製タイプの作り方をご紹介します。
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TEXT サトタカ(佐藤貴子)
PHOTO 丸田歩