藁で編んだようなとんがり帽子を被せた、一風変わったビジュアルの鍋料理「雲南石鍋魚(ユンナンシーグォユィ:yúnnánshíguōyú)」。

2018年、80Cの記事バンコクの西川口に行ってきた|新中華街・輝煌(ファイクワン)に潜入!でご紹介した鍋料理ですが、なんとこれが『食彩雲南 湯島店』で食べられるようになったというじゃありませんか。

知らせを聞いて、さっそく上野界隈へ行ってきました。

雲南省への憧憬で大人気!中国で広がる蒸気石鍋魚

「雲南石鍋魚」とは何ぞや?というと、「蒸気石鍋魚」とも呼ばれる現代中国の鍋料理

調べてみると、雲南省北部の瀘沽湖(ろここ:泸沽湖)の畔にこの鍋を出す店が点在しており、旅行者が雲南由来の創作料理として都市部に紹介。発祥の店は定かではありませんが、今では中国各地で雲南名物として広まったと考えられているようです。

また、省都・昆明市には「撫仙湖石鍋魚」として専門店が点在。中国で雲南省というと、空気がきれいで自然に恵まれ、花々や新鮮な食材が豊富なイメージ。彼の地への憧憬も手伝って、広まっていったのかもしれませんね。

ハイパワー地獄蒸し!食べる前からエンタメ満載

この店の「蒸気石鍋魚」の調理の要となるのは、鍋とテーブル一体型の智能蒸汽机。鍋底に噴出口がついており、ここから噴射される高圧蒸気で食材を調理するという、ユニークな発想の鍋料理です。

注文すると、パフォーマンスと試運転を兼ねて鍋から一発蒸気を出してくれるのですが、その様相は大分県別府市鉄輪名物「地獄蒸し」のハイパワー版。鍋から出る間欠泉といった感じで、天井まで届く噴出に、食べる前から歓声が上がること間違いなし!

圧力をかけているため、蒸気は120~140度前後と高温。次第に室内が湯気で充満してくると、肌もしっとり、潤ってくるような…。

ゴゴーーーー!という轟音とともに噴射される蒸気。まるで人工間欠泉!
火災報知器が鳴ってしまうのではないか…と思ったら、やはり最初は鳴ったらしい。今は扇風機が湯気を流しています。

そんな「蒸気石鍋魚」の味わいは、主役の魚×スープの選び方次第

メニューにある魚は鯛、スズキ、魚の頭(この日はキンメダイ)の3種類。スープは黄金湯(南瓜×黄唐辛子×レモン風味)、椒麻湯(青花椒風味)、原湯(ベーシックな中華スープ)の3種類で、組み合わせによって作り出される味わいが異なります。

私のテーブルでは、鯛×黄金湯の組み合わせでGO!

蒸気石鍋魚のメニューはこちら。中国みのあるデザインに、丸文字の「コラーゲンたっぷり」がアクセント。注文は2名から、要予約。

汁が主役!滑らかな舌ざわりの濃厚スープがたまらない

魚をごろっと鍋に入れ、スープを注いだら、蓋をしてテーブルのスイッチオン。鍋のセッティングは、お店の方がやってくれるので心配は不要です。あとはセットに含まれる前菜をつつきながら鍋のできあがりを待つだけですが、この前菜がつまみにぴったり。

この日は腊肉、豆腐干絲の和えもの、大豆と落花生の煮もの、ハチノスの和えものでしたが、特に腊肉(ラーロウ:漬け干し肉)の香りと風味は抜群。こういう地味なつまみ、最高ですね。

前菜の涼菜4品。

魚の大きさや重さは人数によって異なりますが、この日は隣のテーブルとシェア前提で2匹の鯛を豪快に使用。

魚をあらかじめ素揚げしてあるのは「風味が凝縮されるだけでなく、魚の匂いを抑え、スープをしっかり白濁させる効果もあるんです」と、オーナーの牟明輝(む めいき)さん。

魚を鍋にセット。鍋底に白菜の芯をしくことで、魚の身崩れを防ぎます。

そこに注ぐ黄金湯は、鮮やかで透明感のある黄色のスープ。南瓜、黄唐辛子、レモン、香菜、にんにくなどが入っています。これが高圧蒸気でどう化けるのか…? わくわくが止まりません。

黄金湯をざざーっ。

魚にスープがかかっただけでもおいしそうに見えますが、ここから蓋をして調理すること13分。

蓋をして蒸気噴射開始!

上にかぶせた草帽蓋(草帽鍋蓋)には小さな穴が開いており、圧力と蒸気が逃げる仕組み。加熱とともに、空間全体がふたたび潤っていきます。

蓋には小さい穴が。近づくとかなり暑いのでやけどに注意。

ここまで実にスムーズな流れでしたが、「実は智能蒸汽机(蒸気噴射鍋付きテーブル)を安定して使いこなせるようになるまで、1か月近くかかったよ」とオーナーの牟さん。

この智能蒸汽机では「蒸気石鍋魚」だけでなく、蒸しものを楽しんだ後、お粥で締める広東省の「蒸気鍋」もできるそうで、調整は要りますが、いろいろと応用力を感じさせます。

操作フレームにはワット数と温度が表示されます。調理中はおよそ120~140度をマークしていました。

ちなみに石鍋本体には雲南省の石材を加工し、蓋は草帽蓋(草帽鍋蓋)と呼ばれる編み細工を使用。どこか牧歌的な雰囲気ですが、やっていることは高圧蒸気調理というギャップがたまりません。

いよいよ御開帳!

そして13分後、蓋を開けると……

キレイなレモンイエローのスープができあがっていました。

口にすると、黄唐辛子の華やかな辛さと、レモンのさっぱりとした酸味が印象に残ります。かぼちゃは中国料理のスープなどによく使われますが、強い主張はなく、色とコクを添える役割に。

また、蒸気がしっかり通って骨からもうまみが抽出されているからか、スープが実に滑らかで心地よい舌ざわり。

よくよく味わうと、青花椒の痺れや香りも効いていて、コクがあるなかにも飽きさせない味わい。別添の青唐辛子を入れるとシャープに、白葱を入れるとドライに…と薬味で香りが変わり、さらに違った表情が楽しめます。

選んだ黄金湯はかぼちゃ、レモン、にんにく、しょうが、青花椒、黄唐辛子、香菜と、ちょっと頑張れば現代日本でも調達できる食材なのですが、スープの香りが超・中国

同じような食材を家の鍋で煮てもこうはならなさそうなのは、智能蒸汽机のパワーはもちろん、蘇州出身の特級厨師・張永富(ちょう えいふ)さんの力によるところも大きそうです。

魚→野菜→肉団子→羊肉→自家製米線のめくるめく鍋展開

ひとしきりスープと一緒に魚つついた後は、野菜ときのこを鍋にIN。中国の鍋では、肉や魚を煮て食べたあとに野菜を煮る、これが定番の流れです。

しめじ、エリンギ、きくらげ、春菊などいろいろ入りますが、個人的にはミニトマトがツボ。

野菜のあとには、肉団子と羊肉も入ります。ご存じのとおり、魚に羊と書いて新鮮の鮮。中国語だとうまみを表現する言葉ですね。

そして〆にはうれしい自家製米線(ミーシェン)。雲南省が誇る米粉の麺です。

こちらはなんと店の手づくり。すべての材料のエキスを吸ったスープに入れるのですから、おいしくないわけがありません。中太の米線をぴゅるぴゅるとすすって、鍋はフィニッシュへ…!

米線は店の自家製!雲南省以外では米粉(ミーフェン)の呼称が一般的です。

雲南式つけだれで楽しむ「原湯」、青花椒と香味野菜香る「椒麻湯」

この日は隣のテーブルも知り合いだったので、スズキ×原湯も味見させていただくことに。

原湯はシンプルに魚の白湯(パイタン)という感じで、最も魚種の特徴が感じられそう。スズキは川魚の代用として日本でもよく使われているため、こちらも黄金湯に負けずとも劣らぬ“中国み”がありました。

スズキ×原湯の鍋。こちらも素揚げした魚からいい出汁がでています。

そして原湯バージョンは、雲南・貴州あたりで鍋に欠かせない蘸水(ジャンシュイ:つけだれ)をつけていただくのも特徴のひとつ。

蘸水の配合は店それぞれ。ここでは醤油ベースに唐辛子や香味野菜、豆豉を加えた、非常に使いやすいたれが用意されていました。

蘸水(ジャンシュイ)とはつけだれのこと。大き目の具はこれにつけて食べるのがおすすめ。

さらに魚の頭×椒麻湯の組み合わせも相性抜群。スープにはセロリ、生姜、にんにく、赤&青唐辛子、レモンなどを使っており、爽やかかつコクのある味わいです。

この日の魚の頭はキンメダイ。ここに高圧蒸気をかけるとコラーゲンたっぷりのスープとなり、これまた箸が止まりません。都会の地獄蒸しバンザーイ!

キンメダイの頭と椒麻湯。魚の頭といえば、中国では非常に愛されている部位です。

日本で中国の鍋というと、今は四川省の「麻辣火鍋」に勢いがありますが、本格的な「麻辣火鍋」は基本的にスープは飲まないものです。その点、こちらの「蒸気石鍋魚」はうまみのあるスープを飲みながら楽しむ鍋なので、日本人にはマッチすると感じました。

オーナーの牟さんは「料理名が覚えられないんじゃないかなあ?」と心配な模様。その場にいたみんなからは「噴気鍋(ふんきなべ)」というアイデアが出ましたが、どんなネーミングがハマりますかね。ここはぜひ体験して、この鍋の和名に想像を巡らせてみてはいかがでしょう。

食彩雲南 湯島店

東京都台東区池之端1-1-1 MK池之端ビル2F(MAP
湯島駅1番出口より徒歩約1分、仲御徒町駅A4出口より徒歩約7分、上野駅C7出口より徒歩約8分
TEL03-3836-1898
営業時間 11:30-15:00(L.O.14:30) 17:00-23:00(料理L.O.22:00 ドリンクL.O.22:30)

※蒸気石鍋魚は要予約でお願いします。現在店に提供できるテーブルは3卓です。


TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)