近年、東京の池袋や埼玉の西川口に多くの中国人が移り住み、ニューチャイナタウン(新中華街)を形成していると話題ですよね。
新中華街の特徴は、観光客相手ではなく、そこで暮らす中国人のための店が立ち並んでいること。一歩足を踏み入れれば、まるで中国にワープしてしまったような街並みが現れます。
そんな新中華街がバンコクにもあると噂を聞きつけ、80C(ハオチー)特派員・マサラが行ってきました!
ライター:マサラ
1年の3分の1はアジアにいる旅人。滞在地は主に中国とタイ。大学卒業後、3年間過ごした台湾で培った中国語力を活かし、日本語の情報が少ない中国のマイナー地域の開拓に力を注いでおり、現地では「どこの国の人?」ではなく「何省の人?」と聞かれるほど。好きな食べものは火鍋全般で、中国各地のご当地火鍋探索に余念がない。旅行口コミサイト『4 travel』でも旅行記執筆中。 |
全長400mの通りに現れるバンコクの新中華街
噂の新中華街があるのは、地下鉄MRTのHuay Kwang(ファイクワン/輝煌)駅周辺。
この界隈には中国大使館があるほか、高級クラブ、マッサージパーラー等の夜遊びスポットが密集。中国人ビジネスマンにとって利便性がいいことから、5~6年前からじわじわと中国人が集まり、新中華街が形成されてきたようです。
そのメインストリートに当たるのが、ファイクワン駅の東側に延びるThanon Pracha Rat Bamphen Road(タノン プラチャラット バンプェンロード)。わずか400m程の通りに、中国人向けのレストランや商店がずらりと軒を連ねます。
なんと、中国人観光客向けの無料パンフレットもありました。
よく見ると、Thanon Pracha Rat Bamphen Road(タノン プラチャラット バンプェンロード)沿いの店舗分類チャートも掲載されています。
見てみると、最も多いのが物流会社で、化粧品店、倉庫、レストランと順に並んでいます。実はファイクワンは中国人の間で、個人輸入代行の街として知られる場所。だから物流会社が圧倒的に多いんですね。
ザ・現地系!中国大陸の食堂がここに
もちろん、この界隈の中国料理店もバリバリの現地系。お店の外観からして、中国本土の食堂らしい雰囲気が漂っています。こちらは熱々のスープに米粉ヌードルを入れて食べる雲南名物・過橋米線の店。
こちらは中国東北地方、雲南省、四川省の小吃が味わえる「中華小吃」。
四川系の麻辣味を得意とする鍋料理店もあります。左からザリガニ、白身魚、海老料理を写真付きでご紹介。
スパイスをまぶして肉や野菜を焼く焼烤(シャオカオ)専門店もあります。
一通り歩いてみると、昔からバンコクの中華街として知られるヤワラー通りが潮州・広東系レストランが大多数を占めるのに対し、ファイクワンは四川・雲南系の店が多い印象です。そこもまた、日本の中華街と新中華街の違いに共通する部分がありますね。
そこで今回は、そんなファイクワンエリアの気になる中国料理店の中から、気になる3店舗を選んで行ってきました!
西双版納にルーツが!? 謎の石鍋料理「婆婆云南石鍋魚」
ファイクワンの気になる店1軒目は、とんがり帽子を被せた一風変わった鍋の店。雲南石鍋魚と書いてありますが、私はこれまで雲南省で見たことのない鍋です。
ネットで調べてみると、雲南石鍋魚として最近中国全土に広まっているとのこと。しかし、雲南のどの地域の鍋なのかはいまひとつ謎。
大理発祥と書いてあるものもあれば、西双版納(シーサンパンナ)発祥と書いてあるものもあり、結局雲南のどこのものかはわからずじまいでしたが、中国の鍋に間違いはありません。なにより珍しくておもしろそう!
ドアを開けると、4人がけのテーブルが5つ。各テーブルには石製の鴛鴦鍋(2つのスープが楽しめる鍋)が備えつけてあり、鍋の真ん中にある銀色の凸部から蒸気が噴き出す仕組みです。
メニューはタイ語と中国語併記ですが、写真があるのでわかりやすいですね。
鍋の具には、エビやカニ等の海鮮蒸しセットなどもありましたが、これはあくまで内陸部の雲南省の料理なので却下。やはり「石鍋魚」という名前の通り、魚がなければ始まりません。
店長に尋ねてみると、オススメは顔がナマズに似た淡水魚・黒魚。メニューでは1公斤(kg)500バーツ(約1,650円)でしたが、中国のように魚の重さを計って見せてくれるわけではなく、実質1匹のお値段でした。
蒸気がブシュー!魚は絞めたて鮮度抜群!
こうして魚や野菜、肉などの具を注文したら、いよいよ鍋の準備がスタート。店員さんがテーブルの下にあるバルブを回すと、ブシュー!と一気に蒸気が噴出、これで鍋を殺菌します。ちなみに中国本土の店では、ここに食器を入れて一緒に殺菌する店もあるのだそう。
続いて鍋に鍋底(鍋のスープ)を入れ、さきほど注文した黒魚を左右の鍋に投入。ぶつ切りになっていますが、まだ身がピクピクと動いていて新鮮そのもの。見るからに絞めたてですね。
鍋に魚を入れたら、とんがり帽子の蓋をして、約5分間強力スチームオン!時間が経つとともに、蓋の隙間から勢いよく蒸気が噴き出し、食欲そそる香りが漂い始めます。
スチーム中は気になっても、決して蓋を開けてはいけません。浦島太郎になってしまうかもしれないので…!
期待を上回る味と楽しさ!おもしろおいしい石鍋魚
こうして5分後、蓋を取った石鍋魚がこちら!
雲南石鍋魚は、まずスープからいただくのが流儀のようですので、まずは右の白いスープから。おぉ、これはトロリとコクのあるポタージュのようで非常に美味!黒魚の身はふわふわで、クセがなくサッパリとした白身です。
一方、左の麻辣スープには惜しみなく花椒と唐辛子が入っており、麻辣火鍋の味そのもの!ちょっとタイ風にアレンジなんてことは一切ないのが素敵です。
お好みで、タレを選んで作ることもできますよ。こちらは別料金で1人20バーツ。ネギ、香菜、にんにく、唐辛子、ごま油、醤油、腐乳など、いろんな薬味と調味料から、好きなものを選んで自作するのも楽しいものです。もちろん、タレなしでも十分いけます。
食後にこちらのオーナーにお話を伺ったところ、お婆さんがシーサンパンナ出身のタイ華僑3世だそう。この店をオープンしたのは7ヶ月前ですが、数軒先にある雲南焼烤(ユンナンシャオカオ)の店も姉妹店で、そちらは7年前からやっているとのこと。
オーナー曰く、ファイクワンに大陸の中国人が増え始めたのはここ5~6年。中国大使館が近いからというよりは、夜遊びに便利だからこの場所に集まって来たんじゃないか?と推測していました。
ちなみに同店のお客さんはタイ人と中国人が半々。これまで日本人は来たことがないそうです。行くなら狙い目ですぞ!
婆婆雲南石鍋魚 MRT HuayKuang駅 1番出口から徒歩約7分 営業時間 15:00~01:00 年中無休 今回オーダーしたのは2名で鍋底2種類、魚1匹(黒魚)、その他の具4種類(豆腐皮(押し豆腐)、木耳、菜の花、豚バラ肉)、タレ2人前、水1本。合計985バーツ(約3,300円)です。 |
>後半はさらにディープに食べ歩く!バンコクの西川口、ファイクワンのリアル中華街に潜入!
text & photo マサラ