新たな風が吹いてきた!? 中国料理店の掲載は22軒

2008年からスタートし、2023年で16周年を迎える『ミシュランガイド東京』。

今年は全422軒のセレクションのうち、最高ランクの三つ星は12軒、二つ星は39軒、一つ星は149軒、ビブグルマンは222軒、そしてミシュラングリーンスター(サステナブルガストロノミーに積極的に取り組むレストラン)は12軒となりました。

気になる中国料理店の掲載は、2018~2020年版は26軒、2021年版は27軒、2022年版は25軒、そして2023年版では22軒となりました。さっそく掲載店をご紹介していきましょう。

※()内は所在区/最寄り駅です。
※新たに加わった店はNEWマークをつけています。

[三つ星★★★]旅のデスティネーションを決める食体験がここに!

茶禅華(さぜんか)(港区/広尾)

三つ星の定義は「そのために旅行する価値のある卓越した料理」を提供しているレストラン。一昨年に日本初にして日本唯一、中国料理店の三つ星となった『茶禅華』が、3年連続でその栄誉に輝きました。

同店の根幹にある想いは「和魂漢才」。同じ漢字の国である中国の文化を混ぜ合わせるのではなく、日本人の精神をもって調和させていくというこの考えは、日本で中国料理を担う料理人、また日本で外国の料理を手掛ける料理人に、少なからず影響を与えていると感じます。

茶禅華のふかひれ。秋限定の上海蟹煮込み。

[二つ星★★]掲載が待たれる!昨年同様の不在

二つ星の定義は「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」を提供しているレストラン。

『ミシュランガイド東京2023』全体では39軒ありましたが、一昨年および昨年同様、中国料理店はありませんでした。セレクションは日本料理(寿司など含む)、フランス料理が中心となっています。

[一つ星★]予約必須!実力も個性も兼ね備えた中国料理店10選

一つ星の定義は「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」を提供しているレストラン。とはいえ、ふらっと入れるレストランはそうありません。『ミシュランガイド東京2023』では149軒、中華はそのうち10軒です。

赤坂 桃の木(千代田区/永田町)
慈華(itsuka)(港区/外苑前)
一平飯店(港区/麻布十番)NEW80Cの記事
銀座 やまの辺 江戸中華(中央区/銀座)
私厨房 勇(ユン)(港区/白金高輪)
ShinoiS(シノワ)(港区/白金高輪)
Series(シリーズ)(港区/六本木)
中国飯店 琥珀宮(千代田区/東京)
中国飯店 富麗華(港区/麻布十番)
WASA(渋谷区/恵比寿)

一つ星には実力も個性もある店舗がずらりと揃っており、いずれも接待や会食に適したレストランです。

新しく加わったのは、2022年3月1日にオープンした一平飯店。料理長の安達一平さんは『赤坂璃宮 新百合ヶ丘』勤務時代、故・譚彦彰さんと訪れた香港の美食に刺激を受け、現地での修行を経て、焼味(ロースト料理)をはじめ、広東料理の技術を磨き上げてこられた方です。

店ではクリアな味わいの料理がコース仕立てで味わえるほか、21時からは『夜香港(イエホンコン)』に看板を変え、より自由な“一平ちゃん”の世界が楽しめると評判。詳しくは『80C(ハオチー)』の取材記事で予習してみてくださいね。

『一平飯店』の炸子鶏。

[ビブグルマン]お値段以上!誰かを誘いたくなる、TOKYOを感じる中国料理店12選

ビブグルマンの定義は「良質な食材で丁寧に仕上げ、価格以上の満足感が得られる料理」を提供する店。その地域らしさが感じられるセレクションで、スタイルも多種多様です。『ミシュランガイド東京2023』では222軒、そのうち中国料理は12軒でした。

麻布 勇(港区/乃木坂)NEW
O2(オーツー)(江東区/清澄白河)
jeeten(ジーテン)(渋谷区/代々木上原)
仙ノ孫(杉並区/西荻窪)
中国菜 膳楽房(新宿区/神楽坂)
なかの中華!Sai(中野区/中野)
乃木坂 結(港区/乃木坂)NEW
日々の中華食堂(渋谷区/代々木上原)NEW
中国四川料理 梅香(新宿区/神楽坂)
遊猿(新宿区/四谷三丁目)
湯気(中野区/新中野)NEW
REI(渋谷区/代々木八幡)

特筆すべきは、新登場が4店舗登場したこと。

新たにビブグルマンに加わったのは、①一つ星に輝く人気店『私厨房 勇』の姉妹店として2022年5月にオープンした『麻布 勇』。②四川料理店で腕を磨いた増山シェフが率い、バランスのよいコースとアラカルトの両方が楽しめる『乃木坂 結』。③広東料理の確かな技をカジュアルに味わえる、代々木上原『日々の中華食堂』。④食べ疲れない、ほっとできる中華をナチュールワインと楽しむ『湯気』の4店舗です。

若いシェフとチームによる、軽やかな雰囲気をまとった中華が入ってきていることに時代を感じますね。

『湯気』の焼売。

『ミシュランガイド東京 2023』まとめ

ニュースメディアでは「ガチ中華」旋風が吹き、新語・流行語大賞にもエントリーされた2022年。現代中国をまるごと日本に持ってきたようなレストランが東京に増える一方、今年もミシュランのセレクションはブレない印象でした。

総じて日本人が「おいしい中華を食べたい!」という気分のときに、安心して楽しめるレストランがラインナップされており、その上でビブグルマンは4店舗の新顔が登場。中華の表情がより多彩になりました。

ビブグルマン『梅香』の前菜盛り合わせ。片(薄切り)の技術が光る。

何をもって中国料理とするかはいろいろな考え方がありますが、三つ星レストラン『茶禅華』の川田智也シェフが提唱する「和魂漢才」は、日本で、特に日本人が中国料理をつくる上で共感できるところが多いのではないでしょうか。

すなわち、中国の食文化や料理を理解した上で、安直に混ぜ合わせるのではなく、日本人の精神をもって調和させた料理こそ、自分たちが担い、つくる意義がある。ミシュランが選ぶ中国料理店は、そんな側縁を持っているかもしれません。

『ミシュランガイド2023』は、11月18日のガイドブック発売に先駆け、現在オフィシャルサイトで掲載レストランを紹介中です。ぜひこれを機に、改めて訪れたいレストランを探してみてはいかがでしょうか。

過去の『ミシュランガイド東京』掲載の中華料理店はこちら(2016年~)


TEXT & PHOTO サトタカ(佐藤貴子)