胃袋の数さえ揃えば、中国で必ず訪れたくなるのが農家楽(ノンジャーラ|nóngjiālè|农家乐)、すなわち中国式の農家レストランだ。絞めたての鶏で作った料理や、とれたての野菜の炒めものが所狭しと並ぶ円卓を囲めば、人の距離はぐっと縮まり、大陸の風を浴びて晴れ晴れとした気分になる。

のんびり食事をしたあと、大人は麻雀、子供は辺りを駆け回り、日がな1日過ごせる農家楽は、中国人にとって気楽に週末を過ごす場所のひとつだ。一方、海外からの旅行者にとっては、中国の田舎を体験できる貴重な場であり、その土地ならではの思い出を作ることができる。

そんな中国式の農家楽が、東京から車でおよそ1時間の場所に誕生するとは思いもしなかった。これが、ガチ農場の中に忽然と現れた、ビニールハウスの楽園だった。

農家レストラン入口。回りには大型のビニールハウスが立ち並ぶ。

食事処、遊技場、鯉の泳ぐ池までも…!ここはビニールハウスの楽園か?

栃木県栃木市にある北海農場は、一見、ビニールハウスが複数並ぶ普通の農場である。しかし、その使い方は普通ではない。ハウスといえば野菜栽培の場と相場が決まっているが、ここでは野菜を栽培するだけに非ず。ドアを開けて驚いた。ハウスそのものが広々とした食事処になっていたのだ。

どーんと広がる飲食スペース。奥にはちょっとした台もある。ゴルフコンペの打ち上げをここでやる人もいるとか。

それだけではない。隣のビニールハウスは遊技場だ。見渡すと、ビリヤード台、卓球台、中国将棋、幼児が寝転がって遊べるスペースもある。その隣のハウスには小川と錦鯉の泳ぐ池。さらに隣のハウスは、西瓜栽培の傍らにブランコも発見。自由過ぎるビニールハウスだ。

手前にビリヤード台、左奥には卓球台、右手前には子どもを遊ばせておくスペースが。
壁には中国将棋。
ビニールハウスの中に、小川と鯉の泳ぐ池を再現。こんな景色は初めて見た。
自家用と思われる西瓜、ひょうたん、トマトなどが少量栽培されているゾーンも。

もちろん、野菜や椎茸を栽培しているハウスもあるが、その多様性には目を見張る。なにより、こんなにもわくわくするビニールハウスが過去にあっただろうか。

飲食スペースや遊技場となっているビニールハウスには遮熱シートが貼られており、屋外よりもだいぶ過ごしやすい。

いってみれば、ここはビニールハウスの中に生まれた楽園。いったいどういう経緯でこの農家楽が誕生したのだろう。

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