食後の工芸茶とデザートのご紹介とともに、出句一覧をお届けします。
円卓を囲むほろ酔ひ同士かな
〆の刀削麺をしっかりと腹に収め、心地よい満腹感とほろ酔い感にひたる一同。そこにそっと差し出されたのは、牡丹珠茶と名づけられた工芸茶でした。
工芸茶は細工茶とも呼ばれ、カーネーションや千日紅(せんにちこう)など、色鮮やかな花と、緑茶やジャスミン茶などをひとつに細工してまとめたお茶のこと。お湯を注げばこのように花が開きます。
湯の中で大きく花開いた牡丹が、新たな年を迎える思いを応援してくれているかのよう。美しき乙女の句ですね。※句会の時期が1月下旬でしたので「新年」となっています。
そして、別腹のデザートは「千層冰沙柿子」こと、柿のソルベと湯葉のミルフィーユ。ミルフィーユとは1000枚(mille)葉(filles)というフランス語ですが、中国語でも本意のままに「千層」と表現。パイではなく湯葉を用いたところに中華のエッセンスを感じる一品です。
中国湖南料理 華湘 総料理長の秦由弘さん。このたびはお世話になりました。
それにしても、今回のコースの楽しかったこと…!
後日談として「刀削麺が一番食欲を刺激されたものの、見慣れない湖南料理は句材として面白かった」「初めて中華の奥深さを見た感じがした」という声もいただきましたし、日々中華満喫の編集部も、今回は料理の美しさ、おいしさだけでなく、一品一品「おっ!」と思わせてくれるプレゼンテーションに感銘を受けました。
この充足感を糧に、次もいい中華句会にするぞ…! そんな想いを胸に、ゆったり、まったりと第2回80C(ハオチー)中華句会は幕を閉じたのでありました。
≪出句一覧≫
参加者:木杓、こばら、泥頭、ぴざ子、まりも、漁太(以上五十音順)
※五句出句 五句選(内、一句最好(ズイハオ)四句好(ハオ))
※作者名下の数字は点数、()内の文字は選者、赤字は最好
▼水晶花様開味前菜:クリスタル前菜
(さといらず豆の花豆腐、海老芋の金木犀風味、コウフ(烤麩)のピリ辛煮、オーロラサーモンのレモンジュレ、合鴨の赤酒煮、大根の酢漬け)
冬薔薇の紅き花びら添へられり ぴざ子 2(木、ま)
水晶の杯に咲く大根かな 泥頭 2(木、ぴ)
冬菊やグラスの台座白一輪 ぴさ子
さといらず豆に野菜のアクセント 漁太
▼金華竹鴿湯:湖南省伝統鳩肉の竹筒スープ
竹筒にかぐや鳩をりけふの湯(タン) こばら 2(漁、ぴ)
竹筒の鴿のぽっぽと温まれり 泥頭 2(漁、ぴ)
天敵の鳩を食して飛躍する まりも 1(こ)
鳩の巣を蓮華でつつき湯(タン)すする 木杓
▼富貴火腿:湖南省名物 中国ハムの蜂蜜漬け 蒸しパン包み
春近し蜂蜜色の中華火腿(ハム) ぴざ子 3(泥、ま、漁)
火腿(ホウトイ)やまわたで包む蜜の味 こばら 2(木、ま)
火腿(フォートイ)をつまめど箸をすりぬけり 木杓
▼鳳尾展翅彩満堂:海老とホタテ貝 季節野菜の南極海流塩炒め
(ルタバカ、ロマネスコ、ター菜、芽キャベツ、レンコン、紅時雨大根、スナップピース)
南極の塩の逆海老固めかな 泥頭 3(こ、ぴ)
鯱に華を添えたりロマネスコ こばら
▼烟雲東坡肉:沖縄産ポークのトンポーロー 霜降り白菜煮込み 銀絲捲添え
銀絲捲(イースーチェン)割れば音色の出さうかな 漁太 4(ぴ、木、こ、泥)
東坡肉地獄の釜の激りかな 泥頭 1(こ)
器ごと故郷の来る東坡肉 漁太 1(泥)
健気かなそっと寄り添う金針菜 まりも
東坡(トンポー)もこれなら忘れなかりけり 木杓
▼湘水煮魚刀削麺:屋台風鮮魚のトウショウ麺
真っ直ぐに鍋へ飛びつく刀削麺 漁太 2(泥、ま)
四千年歴史削られ鍋の底 ぴざ子 2(木、泥)
刀削麺空手チヨツプのごと打てり 泥頭 2(こ、漁)
湘菜(シャンツァイ)を思い出したる刀削麺 木杓
見てくれの悪い麺もいとうまし 木杓
刀削麺麺の太さに想いはせ まりも
刀削麺牛乳飲みたくなる辛さ こばら
▼千層冰柿子:柿のソルベと湯葉のミルフィーユ
出句なし
▼牡丹珠茶
新年の想い彩る牡丹かな まりも 1(漁)
口に葉の運ばれてくる牡丹の茶 漁太
冬牡丹グラスの中の小宇宙 ぴざ子
▼円卓全般
円卓を囲むほろ酔ひ同士かな こばら 1(ま)
新春の食卓彩る華々よ まりも
≫中華句会の遊び方
≫第1回中華句会「チャイニーズテラス ルウロン」編
Text:佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo:佐藤貴子(ことばデザイン)、小杉勉