※2020.10.27追記:閉店しました。
中国で火鍋といえば、鍋を火にかけながら食べる鍋料理のこと。日本でなじみがあるのは、辛く痺れる麻辣火鍋ではないかと思いますが、中国では鍋のスープも具も地方によって実にさまざま。行く先々で郷土色たっぷりの鍋料理が楽しめます。
2018年9月、上野駅前にオープンした「花季 椰子鶏 上野店」も、そんな中国郷土鍋が食べられる店のひとつ。速報でもお伝えしましたが、なんとこの店、中国最南の省・海南省の火鍋が食べられるのです。
中国のハワイ、海南島から深圳へ…!海を渡った美味
地図を見るとおわかりの通り、海南省のある海南島は、台湾、香港、ベトナムのハノイよりも南方にある常夏の島。私が訪れたのは15年前ですが、当時観光開発が進む三亜市で、街のあちこちに植えられていたのがヤシの木でした。

事実、海南島はココヤシをはじめ、バナナ、コショウなどの熱帯作物の栽培が盛ん。そのココヤシから採れるココナッツを使った鶏鍋が、今回ご紹介する郷土鍋・椰子鶏です。
しかし、本家の海南島より、深圳市で評判になったというのがこの鍋のユニークなところ。深圳市は香港と隣り合う経済特区で、世界中からエンジニアが集まる場所。市内には椰子鶏の人気店があり「花季 椰子鶏 上野店」のオーナーも、深圳で椰子鶏を初体験。
そこで「素材の味わいを生かした健康志向の鍋料理だから、これは日本できっと人気が出るぞ…!」と食べて直感。椰子鶏の専門店オープンに漕ぎ着けたのだとか。
ぷりっぷりの鶏はココナッツウォーターが決め手
そんな椰子鶏の特徴は、若い椰子の実の中に蓄えられた、フレッシュなココナッツウォーター(椰青水)で丸鶏を煮込むことにあります。

本場では文昌鶏という海南島の地鶏を使いますが、「花季 椰子鶏」ではさまざまな鶏を検討し、現在は愛知県産の地鶏を使用。量は1羽(約1kg強/4~5人前)、半羽(約500g強/2~3人前)の二択です。

待ち時間は5分!現地の味を再現したタレもこだわり
意外にも鍋が食べられるまでの時間は早く、鶏が煮えるまでたったの5分。卓上にある砂時計をひっくり返したらカウント開始。サービスを担当してくれた周さんに聞くと、ココナッツウォーターで生の鶏を煮ると、5分でちょうどふっくらと火が通るのだそう。

こうして煮上がった鶏肉は、引き上げるタイミングに加えてココナッツの酵素の働きもあるのでしょうか、本当にぷりっぷり!
醤油ベースのつけだれは、現地の味を再現するため、薬味として小米椒(赤唐辛子の一種)、沙姜(広東省など南方の料理によく用いられる、独特の辛味を持つしょうがの一種)を空輸で取り寄せ。さらにすだちをギュッと絞ったら、鶏肉をつけていただきます。

鶏は煮上がった直後にぷりぷりの状態でいただくのもオツですが、ことこと煮込み、ほの甘いココナッツウォーターと、ほろっと軟らかくなった鶏とが一体となったところを味わうのも、この鍋の楽しみのひとつ。

中国同様、追加の具も豊富。おすすめは响鈴(シィァンリン/特製肉入り揚げ湯葉)や、きのこ類など。まず、鶏を煮て、ある程度食べてから入れましょうね。

ちなみに鍋は、くわいとアボカドが入った「馬蹄アボカド椰子鶏」、網状になったキヌガサタケが自慢の「衣笙茸椰子鶏」、当帰・なつめ・クコが入った「三味薬膳椰子鶏」の3種類がお店のおすすめ。
ほかに「とんこつ椰子鶏」などもありますが、ここはぜひ、フレッシュココナッツウォーターを使った鍋スープでキメてください。

カリウムやミネラルが含まれ、美容業界からも注目されているココナッツウォーター。ココナッツミルクとは異なる、まろやかでさっぱりとした風味は鶏鍋にぴったりでした。これなら寒い季節はもちろん、夏場でもおいしくいただけそうですね。

【閉店】花季(Hanadoki)椰子鷄 上野店 住所:東京都台東区上野7-3-2 GE上野駅前ビル3F(地図) アクセス:JR上野駅 浅草口 徒歩1分 電話:03-5811-1925 営業時間:11:00~14:30/17:00~24:00おすすめメニュー 三味薬膳椰子鶏(当帰入り):1羽2,980円、半羽1,980円 つけだれ:500円(1人前/人数分の注文が必要です) 具:响鈴(特製肉入り揚げ湯葉)750円、揚げ湯葉520円、蝦滑(自家製特製海老つみれ)6個1,080円、冬瓜480円、えのき320円、野菜盛り合わせ980円など |
text 佐藤貴子(サトタカ)
photo 小杉勉、佐藤貴子