干杯!『黄酒入門』著者のdonこと門倉です。
【黄酒の現在地 2024】三部作の最終回は、紹興酒の故郷・紹興市にある中国醸造酒専門の酒場(黄酒酒吧)をご紹介して締めくくろうと思います。
実は、中国では紹興酒はおろか、さらに範疇の広い黄酒でさえ、専門のバーや飲食店はほとんどありません。(紹興酒と黄酒の違いはこちらをどうぞ)しかし、さすがは酒の街紹興。市の北西部にある水郷・安昌古鎮に黄酒と郷土料理を堪能できる店があるのです。
また、古鎮を散策する中で、自家醸造の米酒にも出会いました。こちらも合わせてご紹介します。
街ぶら散策におすすめ!水郷の風情あふれる安昌古鎮
古鎮とは、中国で昔の佇まいを残す街のこと。主に明や清の時代の街並みを残すところが多いのですが、浙江省紹興市にある安昌古鎮の起源は古く、北宋時代(960年~1127年)にまで遡ります。
以来、戦乱による度重なる焼失を繰り返しながら、明(1368年~1644年)・清(1644年~1912年)の時代に再建。現在は風情ある古鎮として、国家AAAA級観光地にもなっています。

界隈には伝統的な建築や文化が色濃く残されており、古き良き美しい街並みが見事。古鎮は全長約1.8キロにも及ぶ川沿いに広がり、南側に民家や古い路地、北側に商店などが並び、両岸は多くの石橋で結ばれています。

名物は、安昌腊腸(腸詰)、板鴨(乾燥アヒルの燻製)、腐乳など。いずれも川沿いの商店で数多く販売されています。

こんなローカル感溢れる古鎮にも関わらず、アクセスしやすいのも嬉しいところ。新幹線が発着する紹興北駅から約6キロほど、タクシーで15〜20分程度で到着です。
古民家のテラス席で、個性ある黄酒と郷土料理を堪能。「BISTRO HONG 紅塵再(ホンチェンザイ)」

今回の目的地は「BISTRO HONG 紅塵再(ホンチェンザイ)」です。こちらは「本格的な黄酒が楽しめる、温かみのある場所を作りたい」というオーナーの思いを実現する形で2018年1月にオープン。バリエーション豊かな黄酒と、紹興を中心とした中国の郷土料理が楽しめます。
実はこちら、以前80Cでオーガニック黄酒の酒蔵としてご紹介した、国稀酒業が運営する店。ディナーパーティーに参加させていただいたことはありますが、日中の通常営業時に訪れたのは初めてです。
古民家を改築した店舗は、1階がレストラン、2階には宿泊できる客室も。訪問した日は天気に恵まれ、外の空気が心地よかったので、川沿いにあるテラスの席で黄酒と料理を堪能しました。
こちらで扱う黄酒は、低アルコールのやさしい味わいのものから、オーク樽で熟成させたしっかりしたものまで、さまざまな黄酒が並びます(ちなみにビールもあります)。その中でも特に印象に残った2種類がこちら。

まずは右側、クリアで透き通った黄金色がとても綺麗な黄酒が「太一玉液」。こちらは黄酒本来の味を実現するべく、原料となる糯米や小麦を無農薬で栽培。中国で初めてオーガニック認定を受けた黄酒です。

一般的な紹興酒は着色のためにカラメルが添加されますが、こちらは不使用。穀物由来の自然な味と色を堪能できます。
味はというと、小麦の穀物感や渋味、苦味がふわっと広がりライトな口当たりですが、しっかりと滋味深さが感じられて美味しい!アルコール度数は19度と黄酒の中でも高い方で、 辛口のお酒が好きな方にぜひおすすめしたい黄酒です。
ちなみに黄酒は糖分量によって4種類に分類でき、一般的な紹興酒は半干型(セミドライ)が主流ですが、「太一玉液」は干型といって、黄酒の中で最もドライなタイプ。干型は日本ではほとんど流通しておらず、飲めること自体が貴重です。
そしてもう一つ、左側のグラスの琥珀色に光る黄酒が「再相逢」。アルコール度数は醸造酒なのに40度!

ウイスキー並に高い度数ですが、一切蒸留はしていません。具体的には後述しますが、40度もあって蒸留酒ではないという現実に頭がちょっと混乱します。
果たしてどんな味わいなのか?というと、これが非常に面白い! 紹興酒特有の酸味がありつつ、アルコール由来の甘味が下支えとなって、まろやかさも感じられます。また、余韻が抜群に心地よく、ひと口、またひと口とスイスイ杯が進みます。
オーク樽で半年ほど寝かせていることもあって、香ばしい木の香りも鼻腔にふわり。度数が高いのにキツさがあまり感じられないのは、この樽熟のおかげなのかもしれません。
こんがり焼いた肉料理などと相性が良さそうですが、単品でもゆっくり楽しめるお酒です。個人的にはこの「再相逢」が一番のお気に入りとなりました。