新たな中国郷土料理との出合いと、辛さの選択肢に広がりをもたらしてくれた店といえば『本格湖南料理 李厨』。
〈辛い中華〉ですっかりポピュラーになったのは、四川の麻辣(マーラー)ですが、発酵唐辛子などを活かした湖南の酸辣(スゥァンラー)も、一度味わってみるとたちまち魅了されること間違いなし。
湖南人にとって、酸辣は「無辣不歓,無酸不入口(辛くなきゃガッカリだし、酸っぱくなきゃ口にしない)」という言葉があるほど味の要。
『李厨』は、そんな湖南省出身者が懐かしくなるような酸辣味が揃う店。その味に魅せられ、いつしかリピートするようになっていくファンがじわじわ増加しています。
1号店は高田馬場。好評を博し、満を持して登場した2号店は上野駅至近。2018年9月下旬、80C(ハオチー)でも速報記事がアップされましたね。
気分に合わせて、ランチの楽しみ方は3通り!
そんな上野店のランチですが、オープンして間もない頃は、昼夜通してレギュラーメニューを88折(=12%割引。8は近い発音から〈発〉を意味し、発展・拡大・富を願う縁起のよい数字)で提供するというキャンペーンをしていたため、ランチメニューがありませんでした。
では、今のランチタイムはどうなっているのか…?というと、ランチ営業終了時刻の15:00まで大賑わい!
なぜなら同店のランチは、シチュエーションに応じていろんな楽しみ方ができるのです。さっそくごご紹介していきましょう。
①おひとりさまは16種類の黒板メニュー!ランチ限定「木桶飯」も
ひとりで、限られた時間内でサッと食べたいときはこの中から選ぶのがおすすめ。その種類の充実度といったら!なんと16種類が黒板にビッシリ。圧巻!
ランチメニューには味玉子(おかわり自由)・ザーサイ・杏仁豆腐つき。麺or飯以外の一品料理にはライスがつきます。
例えば、酸菜魚米粉(酸っぱい漬物と魚のビーフン)のランチセットがこちら。
白身魚片と高菜の漬物がたっぷり。薄黄色のやさしい色目から想像つきませんが、実はしっかり酸辣(スゥァンラー)が効いています。
赤唐辛子は見ての通り。さらに高菜の茎のふりをした青唐辛子の塩酢漬(ここでは小米辣(シャオミーラー:激辛唐辛子の品種)を使用)も潜んでいるのです。スープにそれぞれの旨味が溶け合い、辛いのですが、額に汗してゴクゴク飲んでしまいます。
また、ランチタイムのみ登場する「木桶飯」は見た目のインパクト大!店名入りのオリジナル木桶の内側にステンレスボウルがセットしてあり、白飯の上に料理を盛り付けています。
ボリュームたっぷり。わたしが食べたのは、農家小炒肉(湖南の農家風豚肉と青唐辛子炒め)をのせたものです。
現地の木桶飯事情を調べようと、百度(バイドゥ:中国の検索サイト)を見ると、2008年に広州に現れたのち、深圳など広東省各地・湖南・広西・遠くは大連などにも広まったとあります。
店名に「湖南」や「湘(湖南省の略称)」の字を含めた木桶飯専門店が多くヒットしたので、李厨創業の立役者である李兄弟シェフのお兄さん、李志紅さんに尋ねてみたところ、湖南固有の名物ではないそう。
実際、重慶や江西省の略称を店名に含める店もちらほら。これらの地方から広州などへ出稼ぎに行った労働者が多かったことと、各地の辛味の効いた料理が、白飯と好相性だったからなのかもしれませんね。
②こだわりの麺&飯で気分をアゲる!
おひとりで、サッと食べたいけれど、定番メニューも気になる…という方は、グランドメニューから麺or飯をチョイスしてみては。
ランチセットメニューにも麺or飯は載っているのですが、グランドメニューを開くとさらに数種類並び、選択肢が広がります。例えばこんな一皿も。
細かく刻んだ腊肉(ラーロウ:干し肉)・卵・葱が入った、醤油味のパラパラ炒飯。腊肉は、ぱっと見では気づきにくいくらい細かく刻まれていますが、口にするとその存在感が突出!噛むほどにほんのり甘い旨味が溢れます。
③人数が揃えば昼からわいわい!シェアして楽しもう!
数名で、ゆったり時間が取れるときは、迷いなくグランドメニューを開きましょう。特に12時台のピークを越えるとぐっと増えるのがこのスタイル。
『李厨 上野店』では、座席に案内されると、ランチメニューのシートとグランドメニューの冊子を両方渡されるので、昼から、たくさんの本格湖南料理を楽しめるのです。
これらはまだまだほんの一部。店内を見渡すと、2名以上のグループは皆この方法で、いろんな料理を囲みながら賑やかにランチタイムを楽しんでいる様子でした。
料理長は湖南省省都の長沙市瀏陽出身!深圳の名店で経験も
『李厨 上野店』の厨房をまとめる周游シェフは、高田馬場本店の李兄弟シェフと同じ湖南省の省都・長沙市の出身。市内東部にある県級市・瀏陽が故郷だそう。豆豉と花火の里として名高いところです。
20歳から料理の道へ進み、深圳の有名湖南料理店『芙蓉楼』での修業を経て、3年前に来日し『李厨 上野店』を任されています。
座席と厨房が離れているため、なかなか直接会えるタイミングがありませんが「80C読者の皆さんのお越しをお待ちしておりますのでよろしくお願いいたします!」と嬉しいメッセージを預かりました!
ちなみに同店には、ヒョイと降りた駅で気軽に湖南料理を楽しめる場を増やしたいという将来への展望も。
いつの日か、湖南料理がもっと身近になり「今日は中華にする?」から「今日は湖南にする?」へと気軽に言葉を交わすようになる日がやってくるかもしれません。
本格湖南料理 李厨 上野店(今回ランチをご紹介した店) 住所:東京都台東区上野7-3-2 GE上野駅前ビル2階(MAP) アクセス:JR上野駅パンダ橋口・浅草口より徒歩約2分 電話:03-6231-7760 営業時間:11:00〜15:00 17:00〜24:00(L.O.23:00) 本格湖南料理 李厨 高田馬場店 |
text & photo :アイチー(愛吃)
『中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう』主宰。日本の中華のなかでも、中国人シェフが腕を振るい、郷土の味が味わえる“現地系”に精通。『ハーバー・ビジネス・オンライン』等でも執筆中。
★アイチーさんの記事は、毎月10日前後に公開となります。お楽しみに!