中華料理店の掲載は27店舗!

店選びのひとつの指標である『ミシュランガイド』。今年で14年目となる『ミシュランガイド東京 2021』は、2020年12月10日(木)の発売です。

セレクションが発表されたのは12月7日(月)14時~。今年はYouTubeによるリアルタイム配信で、例年より多くの方が目されたのではないでしょうか。

38種類の料理カテゴリーより選ばれたのは、446軒の飲食店・レストラン(宿泊施設34軒を加えると全480軒)。中華料理店の掲載は、2016年版は19店舗、2017年版は21店舗、2018~2020年版は26店舗でしたが、最新の2021年版は27店舗となりました。さっそく掲載店をご紹介していきましょう。

※()内は所在区/最寄り駅です。
※新たに加わった店はNEWマークをつけています。

[三つ星★★★]中華で初の三つ星!世界で130店舗の名誉に輝く

茶禅華(さぜんか)(港区/広尾)

三つ星の定義は「そのために旅行する価値のある卓越した料理」を出しているレストラン。なんと今年、日本初にして日本唯一の中華の三つ星が誕生しました。

「茶禅華」は〈和魂漢才〉が料理のコンセプト。吟味された食材を生かした旬のコース、アルコールや茶を用いたドリンクペアリング、広尾の一軒家という上質な空間およびロケーションと、三拍子揃ったファインダイニングです。

料理はもちろんのこと、最高のタイミングで、今ここで提供できるベストなおいしさを召し上がってほしい。そんな意思をも感じるスタッフのチームワークこそ、この店の強さであり魅力。訪れるたびに比類のないものだと感じます。

「茶禅華」の雲白肉(コースの一品)

ミシュランガイド・インターナショナルディレクターのグウェンダル・プレネック氏は、新三つ星の誕生について「世界のセレクション発表でも毎年起こることではありません。料理技術の高さ、卓越性、美食への情熱を備えており、新三つ星として発表できることを本当に嬉しく思います」とコメントを発表。

2020年はミシュランのみならず、NHK総合『プロフェッショナル 仕事の流儀』や『Asia’s 50 Best Restaurants』へ引き続きエントリーされるなど、より開かれた場でその名を見かけることとなった「茶禅華」。名実ともに、日本が誇る中国料理店のひとつであることは間違いありません。

[二つ星★★]は、存在せず!

二つ星の定義は「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」を出しているレストラン。

今年は「茶禅華」が二つ星から三つ星になり、田町から紀尾井町に移転した「御田町 桃の木」は「赤坂 桃の木」となり一つ星となったため、中華では二つ星が空席となりました。

なお、二つ星に掲載されたレストランは全カテゴリ合わせて42店舗。そのうち新しく加わったのは2店舗です。

[一つ星★]スタイルも料理も異なる11店舗

一つ星の定義は「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」を出している店。選出されたのは以下のレストランです。

慈華(いつか)(港区/外苑前)NEW
ShinoiS(シノワ)(港区/白金高輪)NEW
Series(シリーズ)(港区/六本木)NEW
赤坂 桃の木(千代田区/永田町)
銀座 やまの辺 江戸中華(中央区/銀座)
私厨房 勇(ユン)(港区/白金高輪)
センス(中央区/三越前)
中国飯店 琥珀宮(千代田区/東京)
中国飯店 富麗華(港区/麻布十番)
ミモザ(中央区/三越前)
厲家菜 銀座(中央区/銀座)

2021年の一つ星は11店舗。昨年の8店舗より3店舗増え、にぎやかな顔ぶれとなりました。新しく加わったのは、2019年冬~2020年春に開業した店。80Cでもたびたび紹介してきた実力派・篠原裕幸オーナーシェフの「ShinoiS」、少量多皿スタイルの「Series」、「麻布長江香福筳」が移転および名称を変更してオープンした「慈華」です。

「ShinoiS」の春巻(コースの一品)
「慈華」の鶏料理(コースの一品)

1つ星に選ばれたレストランはスタイルも料理も異なりますが、以下のように分類できそうです。

①ゆったりとした個室があり、接待や会食などの場に適するレストラン
中国清代宮廷料理「厲家菜 銀座」、中国飯店グループの最高峰「富麗華」、円熟味のあるエレガントな料理「赤坂 桃の木」

②落ち着いて楽しめる、ホテルの中華料理店
マンダリンオリエンタル東京 37階「センス」、パレスホテル東京「琥珀宮」

③カウンターを中心とした、センスあふれるオーナーシェフ店
山野辺劇場ライブスタイル「やまの辺」、東京カウンター中華を牽引した「勇」、静謐・精緻で気品ある「ShinoiS」

④フロア席を中心とした、洗練された料理が楽しめるレストラン
イノベーティブで力強い「慈華」、少量多皿スタイル「Series」、上海料理をベースした「ミモザ」

特筆すべきは、11店舗中、コースのみ提供している店が7店舗(「厲家菜 銀座」「赤坂 桃の木」「やまの辺」「勇」「ShinoiS」「慈華」「Series」)で、半分以上を占めているということ。

また、1つ星には中国飯店グループの「富麗華」「琥珀宮」の2店舗が選出されています。いずれの店も日本人が「これぞ中華」と思える料理を出していますね。

ガイド全体では、一つ星に掲載されたレストランは158店舗。そのうち新しく加わったのは18店舗となりました。

[ビブグルマン]老若男女誘いやすい!中華の楽しさにあふれた15店舗

ビブグルマンの定義は「価格以上の満足が得られる料理」を出している店。ミシュランガイド東京2021では「良質な食材で丁寧に仕上げており、6,000円以下で楽しめる店」が選出されています(もちろん利用金額は個人差があります)。掲載されたのは以下の店です。

仙ノ孫(杉並区/西荻窪)NEW
胡同 三㐂(フートンさんき)(世田谷区/祖師ヶ谷大蔵)NEW
O2(江東区/清澄白河)
ENGINE(新宿区/神楽坂)
錦福 香港美食(千代田区/九段下)
くろさわ東京菜(大田区/大森)
jeeten(ジーテン)(渋谷区/代々木上原)
中華香彩 JASMINE(ジャスミン)(渋谷区/広尾・恵比寿)
中華銘菜 圳陽(せんよう)(中野区/東高円寺)
中国菜 膳楽房(新宿区/神楽坂)
中国菜 智林(新宿区/神楽坂)
なかの中華!Sai(中野区/中野)
豊栄(文京区/茗荷谷)
中国四川料理 梅香(新宿区/神楽坂)
遊猿(新宿区/四谷三丁目)

今年新たに加わったのは、東京の若手中華料理人の親分的存在、早田哲也オーナーシェフの店「仙ノ孫」と、三代続く中華料理人の家系である、大城昌宏オーナーシェフの店「胡同 三㐂」。

「仙ノ孫」の麺料理
「胡同三㐂」の獅子頭

全体では、ビブグルマンに掲載されたレストランは234店舗。そのうち新しく加わったのは35店舗となりました。

『ミシュランガイド東京 2021』まとめ

今年は、日本人が「中華を食べたい!」という気分のときに、その期待を裏切らない店がラインナップされていた印象です。

そのなかで、断トツの注目点は「茶禅華」の三つ星。中華のセレクションが決して多くない中で、世界にたった130店舗しかない三つ星に輝いたのは本当に誇らしいことだと思います。

そして例年通り、一つ星がかなりバラエティに富んでいました。掲載をお断りしている店もあるので、なんともいえないものの「なぜあの店が選ばれないのか?」という疑問も。

昨今は中国人オーナー&料理人の店も増えてきており、これから東京の中国料理店に、より専門性と多様性が出てくることが予測されます。今後ミシュランがその分野をどう見ていくか、気になるところですね。


text & photo 佐藤貴子(サトタカ)